10 アンプヒビアンズ、第一回戦! 乱闘々!
そろそろ試合時間でしたので、スタンバイするよう指示された場所へと向かいます。
劉生君がのんびりといいます。
「みんなで一緒に戦えたらいいね!」
協力して戦えば、お互い守りながら戦えますので、第一回戦をみんなで突破できるに違いありません。
しかし、劉生君が願う通りにはいかないようです。
入場口近くで、カエルの魔物に呼び止められました。
『ゲココ。そこの子供たち、もしや第211回親善試合の参加者ゲコ? 腕章の番号をみせるゲコ』
カエルはまじまじと腕章を見ると、手元の書類を確認します。
『ふむふむ。ならば、あなたはこっち、君はこっち、そこの青角の人はあっちゲコ』
なんと、三つのグループに分けられてしまいました。
「ええ! 一緒に戦えないの?」
『入場口が違うだけゲコ。場所は一緒ゲコ。そこの青角は例外ゲコ。君は第二回戦から参加ゲコ』
「ボクは戦ってもいいんだけど」
『我らが族長様の命令ゲコ。族長様の命令には絶対服従ゲコ。規則1にそう書いてあるゲコ』
カエルはきっぱりと言い切ります。譲ってはくれなさそうです。橙花ちゃんは片眉をあげて、不満そうにします。
またもや橙花ちゃんの気持ちが読めましたので、今度はみつる君が橙花ちゃんに先んじます。
「それなら仕方ないね。俺と咲音っちと鐘沢っちはこっちだよね? 行ってくるよ!」
三人はささっとカエルの案内で別の入口へと進みます。橙花ちゃんは心配そうに「もし危ないと思ったら、すぐにリタイアするんだよ」と一言言って、後ろ髪を引かれながら歩いていきました。
「あたしたちは同じ入場口みたいね。いこっか」
劉生君とリンちゃん二人はすぐ近くの入場口へと向かいます。
入場口は薄暗く、たくさんの両生類と少数の子どもたちがひしめき合っていました。それぞれ鎧を身に着け、斧や剣など、いかにも強そうな武器を持っています。目には闘志が宿り、石の門を睨んでいます。
空気に気おされ、劉生君がぎゅっとリンちゃんの服の袖をつかみます。
「大丈夫よ」
リンちゃんは笑ってぽんぽんと頭を撫でてくれます。
「リューリューは強いんだから。いつも通り戦えば大丈夫よ!」
「う、うん……。リンちゃんも頑張ってね」
「当然よ」
自信満々に笑います。
やっぱりリンちゃんはかっこいいです。劉生君もほっと一安心して、気持ちを落ち着かせることができました。
それでもやっぱり怖かったので、こっそりとリンちゃんの手を握ります。リンちゃんも苦笑しながらも、何も言わずに握り返してくれました。
リンちゃんの手の暖かさに自信を取り戻し、頑張るぞと気合を入れていると、地響きのような音が聞こえてきました。
どうやら、石で出来た門がゆっくりと持ちあがっているようです。外の光がさしこみ、暗い待機所を照らします。
魔物たちは雄たけびを上げ、武器をがちゃがちゃと鳴らし始めました。
「ようし、いくわよ、リューリュー!」
軽く背中を叩きます。劉生君も緊張しながらもハニカみます。
「リンちゃんも、頑張ろうね。一緒に二回戦いこうね!」
「もちろん!」
門が完全に開くと、両生類や子どもたちは我先にと駆けだします。劉生君たちも動物たちの波に押されて、バトルフィールドに出ました。
石の門が勢いよく閉まると共に、歓声がわっとふってきました。続けてアナウンサーが興奮気味に大声を張り上げます。
『さあさあ始まりました! 第……。えー、第何回か親善試合! 我らが族長様への挑戦権を手にするのは誰でしょーか!』
劉生君は目をこらしてフィールドをみます。吉人君たちがいないかと探していましたが、残念ながら見つけられません。
吉人君たち探しは諦めて、今度は観客席を見上げました。青い角を目印にすると、すぐに見つかりました。橙花ちゃんは手を振ってくれました。劉生君も振りかえします。
「リンちゃんリンちゃん! あそこに橙花ちゃんがいるよ!」
「どこどこ?」
リンちゃんが観客席の方を見ようとしましたが、その前に実況の動物が楽しそうに叫びます。
『それでは、第一回戦! はじめ!』
ドラの音と共に、両生類や子供たちが武器を振るい、戦闘をはじめました。
リンちゃんや劉生君にも、両生類の動物たちが襲って来ました。リンちゃんはニヤリと不敵に笑います。
「よーし、いくわよ!」
雷をまとった健脚で、次から次へと魔物たちを蹴っ飛ばします。
「ん、やっぱり、そこんじょそこらの魔物よりも強そうね。けど、あたしたちの足元にも及ばないわよ?」
電気の球を放ち、雷をまとって体当たりし、飛び膝蹴りを繰り出します。
一撃で倒れる雑魚はいませんが、それでもリンちゃんの攻撃に耐えられず、反撃しようにも俊足にはついていけず、無残に散っていきます。
「さすがリンちゃん! かっこい! よーし、僕だって!」
炎の剣『ドラゴンソード』をぎゅっと握ります。
ちょうど目の前に、サンショウウオの魔物がいました。サンショウウオは地面を軽く蹴り、劉生君に突進してきました。
「くらえ! <ファイアーバーニング>!!」
炎の一斬でサンショウウオがよろめきます。
「もう一発! いくぞー!」
ぴょんと飛び、サンショウウオの真上に来ます。
剣を下に向け、劉生君は叫びます。
「<ファイアーバーニング>!!」
攻撃は見事命中しました。
サンショウウオは悲鳴をあげ、赤い霧となり消えました。
まずは、一匹です。