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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
6章 闘技場、アンプヒビアンズ!―ミラクルランドは、奇跡の世界!―
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5 いじわるな伏線を受信しました!

 吉人君の都合も考えて、今回はアンプヒビアンズの説明を聞いて、また後日に攻略をすることにしました。


 橙花ちゃんの家に場所を変え、アンプヒビアンズの話を聞くこととしました。


「えっと、アンプヒビアンズが闘技場なこと、勝ち進んでいったら魔王と戦える話はしたよね。ちなみに、トーナメント方式で戦うことになるよ」


 戦う相手は、アンプヒビアンズにいる子供たちや、魔物たちです。


 橙花ちゃんいわく、アンプヒビアンズの魔物は両生類の動物をモデルにしているとのことです。


 アンプヒビアンズにいる魔物たちは、みんな戦うことが大好きで、常に腕試しをしています。ですので、他の場所にいる魔物よりも戦闘能力が非常に秀でています。


 フィッシュアイランドの魔王くらい強い魔物だって、ざらにいます。


 劉生君はぶるりと震えます。


「そ、そんな強い魔物に勝てるかな」

「今の君たちなら勝てるよ。それに、魔物たちは力こそ強いけど、弱点をつけばすぐに倒せるからね」


 出場する魔物の情報は、あとで橙花ちゃんがまとめてくれるとのことです。


「アンプヒビアンズにいる子供たちにも注意してね。特に、高橋幸路君は強いから、戦うときには慎重にね」


 橙花ちゃんは懐かしそうに目を細めます。


 知り合いかと問うと、橙花ちゃんは強く頷きます。


「うんうん! 小学校四年生の男の子だよ。素直ないい子でね、ボクと李火が言い争いをしていると頑張って止めようとしてくれるんだ」


 ちょうどこのタイミングで、友之助君とみおちゃんがひょっこり部屋に入ってきました。


「蒼おねえちゃん! あのね、李火がかっこいい折り紙の折り方を教えて……あれ? 劉生おにいちゃんたちだ」

「ああ、そういえ李火が話してたな。次はアンプヒビアンズに行くんだろ?」

「なら、幸路おにいちゃんに会いに行くんだ……」


 意外にも、みおちゃんは顔をしかめて、ぷいっとそっぽを向きます。


「幸路おにいちゃんはね、すっごく煩いの。よく分からないことをずっと言うの。だからみお、好きじゃない」


 橙花ちゃんは苦笑します。


「まあまあ。確かに幸路君は声が大きくてお喋りだけど、優しい子だったでしょ」

「全然! みお、ごはん食べたくなかったのに、あれ食べて、これ食べてって煩かったもん。だから好きじゃないもん」


 友之助君は宥めるようにみおちゃんの頭を撫でます。


「俺はいまいち知らないが、悪い評判は聞かないから、いいやつなんだと思うぞ」

「ああ、そういえば友之助君は幸路君がムラからいなくなった後にミラクルランドへ来たんだっけ」

「いや、顔はぎり見たことがある。すぐにいなくなっちまったが。えっと、なんでいなくなったんだっけ? 魔王とは関係なかったよな」


 みつる君がキョトンとします。


「そうなの? 関係ないの? ……そういえば、フィッシュアイランドとマーマル王国、トリドリツリー以外の魔王は、あまり子供を捕まえないんだっけ?」


 みつる君が思いしてくれた通りです。レプチレス・コーポレーションとアンプヒビアンズの魔王は、子供を誘拐し閉じ込める主義の魔王ではありません。


 松本李火君もレプチレス・コーポレーションの魔王によってムラから離れたわけではありません。橙花ちゃんと喧嘩をして、自分の意志であそこへ赴いたのです。


 それならばと、リンちゃんが質問をします。


「その幸路って子はどうしてアンプヒビアンズに行っちゃったの?」

「……うーん。そうだね。置き手紙には、『強くなって戻ってくる。探さないでください』って書いてあったから、多分そういうことなんだと思う」

「……は、はあ」

 

 なんだその理由はと、リンちゃんは呆れます。同じ小学校四年生とは思えません。けれど、劉生君はそうは思わなかったようです。


「わあ! すごい! かっこいい!!! 大人の男って感じする!!」

「え、どこが?」


 リンちゃんのビックリした突っ込みに構わず、劉生君はうっとりとします。


「会ってみたいなあ。どんな子なんだろう! 友達になれるかな? 吉人君吉人君! なれると思う?」

「あー、なれますなれます」


 調子が戻った吉人君、劉生君を適当にあしらいます。


 橙花ちゃんは「仲良くなれるといいね」と朗らかに応援してくれます。


「ひとまず、アンプヒビアンズの説明はこのくらいかな。次くるときまでに、アンプヒビアンズのコロシアムに出場する魔物と子供たちのリストを用意しておくね」

「ん、なんだ、劉生たちはもう帰るのか?」「えー、みおと遊んでよー」


 友之助君は寂しそうに、みおちゃんは残念そうにしています。


「……すみません、みなさん」


 吉人君の表情が暗くなります。友之助君が不思議そうに吉人君を見ますが、橙花ちゃんが先に口を開きます。


「みんな忙しいからね。でも、すぐに戻ってくるから。安心してね」


 みおちゃんは頬をぷくりと膨らませます。


「むう、みおは大人だから我慢する」

「うん、いい子いい子。そうだ、李火と遊んでおいで。彼もきっと喜ぶから」

「そうする! 遊ぶ!!」


 コロッと表情を変えて、李火君を探し行きました。


「ったく、みおは単純だなあ」


 友之助君はやれやれといわんばかりに肩をすくめます。


「じゃあ、俺も李火んとこに戻るな」

「あたしたちも戻ろっか」

「うん!」


劉生君たちは挨拶を軽くしてから、もとの世界に戻りました。


 吉人君は公園の時計を見上げ、ほっと肩を下ろします。


「よかった、五分しか経っていません」

「あら、そうなんですか」


 咲音ちゃんは驚き、吉人君と同じく時計を見上げます。吉人君の言う通り、公園の針はわずかしか動いていません。


 これなら、勉強の合間をぬってミラクルランドに行けそうです。


 吉人君は頭を下げます。


「ありがとうございます。勉強も、魔王討伐も、頑張りますね」


 咲音ちゃんはくすりと笑います。


「文武両道! って感じですね。吉人さんかっこいいです!」


 みつる君は「文武両道ではない気がするけどなあ」と呟きます。それでも、吉人君とともに戦えることが嬉しいのでしょう。笑顔を浮かべています。


 リンちゃんもニコニコしながら、大げさな仕草で吉人君の肩をポンポンと叩きます。


「ヨッシーさん、勉強も魔王退治も頑張りくれたまえー」

「はいはい。頑張らせていただきますー」


 ようやく制服のことを一旦忘れた劉生君も、うんうんと頷きました。


「みんなで一緒に、最後の魔王討伐がんばろうね!!」

「「「「おー!!」」」」


 五人の歓声は意気揚々と拳を突き上げます。


 まだまだ昼間でしたので、通りがかった小さな子供は目を真ん丸にさせてびっくりしていますし、散歩をしていたご高齢の夫婦は「最近の子は元気ねえ」と楽しげに囁きあっています。


 まさか、こんな小さな子供たちが、世間を賑わせている奇病『眠り病』の問題を解決しようとしている最中だとは誰も思わないことでしょう。


 それがなんとも嬉しくて、誇らしい気持ちに劉生君はなります。


 最後の魔王を倒して、みんなで遊ぼう。遊園地に行くのもいいな。


 劉生君は『ドラゴンソード』をぎゅっと握ります。


 そんなことをしていたからでしょう。いつの間にかみんなが先の先の方にいました。


「あ、あれ!? みんな、待ってー!」


 劉生君は慌てて駆けだそうとしますが、冷たい風が一気に吹き付けてきました。


「うわっ」


 あまりの強風に、反射的に目をぎゅっと閉じます。


 風が収まるころ、劉生君は頑張って薄目を開けます。


「……え?」


 劉生君は息をのみました。


 真っ白な空間に、


 真っ白なベッド。


 そしてそこに眠るのは……。


「リューリュー、リューリュー!」

 

 瞬きをすると、違和感の一つもない、冬の公園の風景に戻っていました。


 遠くの方に、リンちゃんや吉人君みつる君に咲音ちゃんがいます。四人は立ち止まり、劉生君を怪訝そうに見ていました。


「どうしたの、リューリュー?」


 リンちゃんの問いかけに、劉生君はぶんぶんと首を横に振ります。


「ううん、なんでもない」


 それから何度瞬きをしても、さっきのベッドの部屋は視界に映りません。


「……んー?」


 そういえば、お母さんに聞いたことあります。


 夢の中には、昼に見てしまう夢、白昼夢というものもあると。


 きっと、さっきの光景はそれなのでしょう。そうとしか考えられません。


「今日は早く寝よっかな……」


 それから劉生君は、とある時が来るまで、この『夢』のことをすっかり忘れることとなったのでした。

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