表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
6章 闘技場、アンプヒビアンズ!―ミラクルランドは、奇跡の世界!―
154/297

1 校庭での始業式ってしんどいよね!

 

 冬のテスト週間も終え、冬休みになり、正月を楽しくすごし、あっという間に登校日です。


 友達と会うこと自体は嬉しいことですが、非常に面倒な時間も訪れます。


 勉強でしょうか?


 いいえ、違います。それよりもつらく、苦しい時間です。


 その名は、始業式。


 またの名を、校長先生による苦痛の長話大会です。


「えー、新年がはじまりましたが、休むだけでなく、勉強もしっかりやっていましたか?勉強は大事ですよ。えー、先生の若い頃の話になりますが、」

 

 心身が凍る寒さの中、校庭で礼儀正しく起立をするのは、並大抵のことではありません。


 寒いのが苦手な道ノ崎リンちゃんは軽く足踏みをして少しでも寒さを和らげようとしています。


 いつもは真剣に好調先生の話を聞く鳥谷咲音ちゃんも、時折手を擦り、ふうと温かい息を吹き掛けています。


 赤野劉生君も例外ではありません。


 冷たい風が小さな彼の体を撫でるたびに、早く暖房の効いた教室に戻りたいと、恨めしげに校長先生を見上げます。


 生徒にそんな目で見られてるとは露知らず、つらつらと演説をしています。


「えー、あと一週間後に持久走大会がありますね。えー、走るのが苦手な生徒もいるかもしれませんが、行事ごとは一期一会ですので、えー、全力で、取り組んでください」


 劉生君は、お?と顔をあげます。何やら話を締める流れです。


 希望はいまそこにあるかもしれません。


 早く終わってほしい、早く終わって!


 果たして、校長先生は劉生君の願いを叶えるのでしょうか。


 劉生君は、期待を込めて、好調先生の「これで話を終わります」の言葉を待ちました。


 校長先生はこほんと一つ咳をつき、マイクに顔を寄せます。


「ところで、みなさんは夕方のニュースを見ていますか」


 残念!


 違う話題に移ってしまいました。


 まだまだ話は続くようです。


 がっくりしてるのは劉生君だけではありません。みつる君はため息をついていますし、他の生徒も明らかに落胆しています。


 もしかしたら、校長先生はみんなが退屈しているのを察しているのに、敢えて長話しているのではないでしょうか。


 そんな邪心をしてしまうほど、劉生君はショックでした。


 落ち込む劉生君や生徒に構わず、校長先生は思いの丈を語ります。


「えー。みなさんも耳にしたことがあると思いますが、子供たちの間に眠り病という病気が流行っています」


 ……眠り病?


 劉生君は顔をあげます。


「えー、知らない人もいるかも知れませんので軽く説明をしましょうか」


 上は中学校三年生から、下は幼稚園までの子供達がかかっている、といった話や、原因や治療法などは不明だが感染症ではない、といった話をします。


「えー、不安に感じる生徒も多いでしょうが、えー、まだ眠り病にかかる子供の数はごく少数ですね。しかし、油断をしてはいけません。えー、規則正しい生活を心がけてください」


 そこまで長くはならず、話は終わりました。


 劉生君はほっとするよりも先に、眠り病について考え込みました。


 眠り病とは、二年前から報告されている病気のことです。


 患者は一人の例外なく、全員が子供です。


 死亡例こそありませんが、死んだように眠り続け、起きることはありません。


 まだ劉生君の地域には、眠り病の患者さんはいません。


 ですので、ミラクルランドに行く前までは劉生君も「なんだか変な病気があるんだなあ」くらいの認識でした。


 しかし、ミラクルランドと眠り病の関係を知ってからは、劉生君も興味を持ち始めました。


 テレビで眠り病の話が出るたびに、ミラクルランドの魔王を早急に倒さねばと燃えていました。


 集会が終わったら、ミラクルランドにいつ行けるか、リンちゃんたちに聞いてみよう。


 劉生君は、早く終われと念をこめながら、業務連絡を行う先生たちの話を聞き流すこととしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ