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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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31 またまた! 記憶の世界に突撃訪問!

『ひ、ひええ! 社長がやられたッス!! ひええ!!』


 コモドオオトカゲがぎゃあぎゃあと騒ぎます。


 さきほどの魔王の命令は耳に届きませんでしたが、コモドオオトカゲの叫びはバッチリ聞こえたようです。

 

『なんだと!』『社長が!?』『だったら逃げないと!!』『そうだそうだ!!』


 爬虫類たちは我先にと撤退していきます。


『お、おーい お前ら! 逃げるなッス!!』


 残ったのは、コモドオオトカゲだけでした。


 オロオロしていたコモドオオトカゲでしたが、部長の意地をみせることにしたようです。じりじりと後ずさりながらですが、ガルルとうなります。


『こうなったら、オレッチが相手っす! レプチレス・コーポレーション部長の力、見せてや』

「リューリュー!!」


 リンちゃんが首長竜の首を滑り台のように降りてきました。


「助けに来たわよ!!」


 着地場所は、コモドオオトカゲの真上でした。コモドオオトカゲの顔を思いきり踏みつけました。


『ぎゃふ! こ、この……!』

「赤野さん! 魔王はどこですか!?」


 吉人君がおりてきました。


『あぐっ! の、乗るなッス! 降りるッスぅ』

「赤野っち! 加勢に来たよ!」


 みつる君がおりてきました。


「劉生さん!」


 咲音ちゃんもおりてきました。


「魔王さんもそうですが、コモドオオトカゲさんにも気を付けてください! あのトカゲさんはかなり強い毒を持っていますよ!」


 リンちゃんはぶんぶん拳を振って、辺りを見渡します。


「それで! 魔王とトカゲはどこよ!!」


 劉生君はおそるおそる足元を指さします。


「トカゲさんはそこ……」

「……あっ! 本当だ!」


 みんなはビックリしてコモドオオトカゲからおりて、武器を構えます。


 けれど、その心配もありません。


 コモドオオトカゲはぶっ倒れ、伸びていました。


 さらに、魔王も既に討伐済みです。そう伝えると、みんなは驚き、リンちゃんは悔しそうにしています。


「あたしも戦いたかった!! 二回連続で魔王と戦えてないわよ!」

「僕もみんなと戦おうと思ったんだけど、なんかすごく弱くて……」


 レプチレス魔王が非常に弱いとは知っていましたが、まさか一発で倒せるとは思ってもみませんでした。あまりにも予想外過ぎて、本当に倒したのか自信がなくなってきました。


「……そうだ、橙花ちゃんは!? 橙花ちゃんは大丈夫!?」


 橙花ちゃんはブラキオサウルスの頭の上に寝かせていました。李火君がお願いすると、ブラキオサウルスは頭を下げてくれました。


 劉生君は、ブラキオサウルスによじ登り、橙花ちゃんの顔をのぞき込みます。


「橙花ちゃん……」


 まだ目は閉じています。呪いがとけていないのでしょうか。劉生君は起きてほしいと、軽く頬に触れました。


 その途端。


「わあ!?」


 風景がガラリと変わりました。


 目の前にいたはずの橙花ちゃんはいませんし、リンやんや吉人君含め、みんなの姿もありません。そもそも野外ではありませんでした。


 どうやら和室のようです。畳に座っていたのは、青い角が生える前の橙花ちゃんと、小さな黄色いヘビです。


 橙花ちゃんは背筋をぴんと伸ばして、興味深げにキョロキョロしています。


「本当に和室つくったんだんですね」

 

 感嘆する橙花ちゃんに、レプチレスはさも当然とばかりにシューシュー言います。

 

『君が前に紹介したゲーム、ショウギはこのような会場を用いてプレイするのだろ? だから用意しただけだ。では早速はじめようか』

「ふふっ、準備しますね」


 橙花ちゃんは将棋盤を用意して、コマを並べます。レプチレスは手伝う様子もなく、目をこらして橙花ちゃんの手元を注視しています。

 

 魔王の視線に気づき、橙花ちゃんは顔をあげます。少し困っているようです。


「どうかしましたか」

『部下とできるように、最初の陣を覚えておこうと思ったんだ。だが、どうにも覚えにくい……。老いた頭には厳しいものだ』


 橙花ちゃんは小さく笑います。


「レプチレスさんは王様たちのなかで一番年上でしたっけ。二番目は誰でしたっけ……。ザクロさん?」

『いや、ザクロ族長はもっと若い。トトリ姫の次に若いな。二番目に年をとっているのはマーマル王国のレオン国王だ。それで三番目は、』


 ふすまが一気に開き、一匹の魚が入ってきました。彼は橙花ちゃんを見て、びっくりします。


『あれ、蒼?』

「あっ、ギョエイさん。どうもこんにちは」

『だから敬語なんて使わなくていいっていいって!』

「うっ……。慣れなくて……」

『どんどん慣れてくれればいいよ! うんうん!』


 レプチレスはため息をつきます。


『相変わらずの子供好きだね』

『レプチレスさん、いつも言っているけど、ボクは子供好きじゃないよ。小さい子に優しくするのが大人の責務だか』

『ところで、ギョエイ皇帝は何しに来たんだい? 約束はしてなかったはずだが』

『そこらへんを散歩をしてたら、君の部下に迷子だって勘違いされてね。連れてきてもらったんだ』


 ギョエイは物珍しそうに将棋盤を眺めます。


『これってなに? オセロ?』

『また別の遊戯のようだ』

『へえ……。みてていいかな?』


 橙花ちゃんは笑顔で頷きます。


「わーい! 僕も僕も!」


 劉生君は将棋の知識はあまりありません、ですが、橙花ちゃんもレプチレスの反応を眺めたり、ギョエイと一緒に橙花ちゃんを応援したりしていて、とても楽しい時間を過ごせました。

 

 勝負は橙花ちゃんの敗北で終わりましたが、なかなかのいい勝負でした。ギョエイもルンルンでひれをバタバタさせます、


『すごく面白そう! ボクのとこでもやってみよ! まずはこの部屋を作ることからだね』

「いや、その必要はないと思うよ」


 橙花ちゃんは苦笑しながら、将棋盤を片付けます。


『あ、ちょっと待って』


 ギョエイが橙花ちゃんを制止します。


『ボク、ちょっとやってみたいから、そのまま置いといてくれないかな』

「うん、わかった。それじゃあ、並べなおしておくね」


 手早く元通りにして、橙花ちゃんは立ちあがります、


「私はお暇するね。レプチレスさん、誘ってくれてありがとうございます」

『ん、またな』


 橙花ちゃんはぺこりと頭を下げて、去っていきました。


 過去の世界の橙花ちゃんは、魔王に対して本当に優しく、まるで友達のように接しています。


 やっぱり、昔は仲良しだったのでしょう。劉生君の胸はきゅっと痛みます。不思議と、リンちゃんたちに会いたいなと、思いはじめました。


 早く会いたいと、劉生君は目を閉じます。


 しかし……。


「……あれ?」


 戻る気配はありません。おそるおそる目を開くと、まだ記憶の世界にいました。


 ギョエイとレプチレスはいそいそと将棋を打ちます。最初はぎこちなかったギョエイも、次第に慣れてきて、将棋の駒をせっせと動かします。


 レプチレスはむうっと呻ります。


『さすがギョエイ皇帝。はじめてとは思えないな』

『そんなことないよ。……あと、皇帝って呼ばないでほしいな。普通に呼び捨てでいいよ』

『断る』

『あはは、そうですかー』


 しばらくは将棋の駒を打つ音だけが響き、二人は一言も言葉を発しませんでした。劉生君は一緒に将棋盤を眺めていましたが、歓声も特になく、淡々と打っているせいでしょうか、しだいに飽きてしまいました。


「うーん。橙花ちゃんを追いかけよっかなあ」


 どうしようか悩み始めたタイミングで、レプチレスが口を開きます。


『例の件は、いつ進める気だ?』


 例の件?

 

 例の件って、何でしょうか。


 ギョエイは言いづらそうに話します。


『……そろそろ言わないといけないかなって思ってる』

『前の会議で決めた通り、蒼をはじめとして、年長の子どもだけに例の件を話すんだったか?』

『レプチレスは反対なんだっけ?』

『もちろん。他の子供にも知らせる義務があると考えているが、会議で決まったことには反対する気はない。だが、やるなら早くやった方がいい』


 レプチレスは鋭く言います。


『そうしないと、あの子たちは、』

「劉生君?」


 肩を叩かれ、ハッと目が覚めました。


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