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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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27 応援がきたよ! ……来たんだよね……? 

「いったー。おしり打ったわ」

「けれど、地底まで行く道じゃなくてよかったですね」

「咲音っちが足を滑らせて穴に落ちたときには、もう終わったなって思ったよ」

「うう……。ごめんなさい……」


 劉生君は歓声をあげます。


「リンちゃん! 吉人君! みつる君! 咲音ちゃん!!」


 リンちゃんは劉生君を見て、びっくりして目をぱちくりします。


「あ、あれ? リューリュー? どうしてここに……って、あ、あんた!!」


 リンちゃんは瞬時に立ち上がると、武器を構え、ものすごい形相で李火君を睨みます。


「ちょっとあんた! リューリューから離れなさいよ!!」

「……」


 李火君は怖いくらいの無表情でリンちゃんを見つめます。


 一方、劉生君はオロオロと慌てふためきます。


「ど、どうしたのリンちゃん!? 喧嘩しちゃだめだよ! そもそもどうしてここに……」

「いいから、リューリューはこっちに!」


 気が付くと、吉人君も、みつる君も、咲音ちゃんも、みんなが李火君を睨み、武器を手に取っていました。


 控えめにみても、友達に向けるような目ではありませんでした。


 吉人君はゆっくりとした口調で応えてくれます。


「赤野君。僕たちはレプチレスコーポレーションの本部の中に潜入したんです」

「ええ!? そんな! 僕たちに内緒で!? 一緒に行こうっていったのに!」


 みつる君が劉生君をなだめます。


「別に赤野っちを仲間外れにしたわけじゃないよ。ちょっとしたトラブルで捕まって、本部に連れていかれたんだ」

「ええ!? そうなの!?」

 

 驚く劉生君に、吉人君は言葉を続けます。


「そこで事の真相を聞いたんです。まず一つ。僕たちが魔王だと思っていたコモドオオトカゲは魔王ではなかったんです」

「あれ? けど、李火君は……」

「そのニ。真の魔王は僕たちをレプチレスコーポレーションに案内いていた黄色いヘビであること」

「あの蛇が!?」

「そして三つ目。……李火君は魔王に乗っ取られています」

「……ふぇ?」


 魔王に乗っ取られている……。魔王に乗っ取られている?


 劉生君は困惑して李火君を見ます。冗談だと笑い飛ばしてほしいと期待していたのです。しかし、李火君は相変わらず口をつぐんでいます。


「……そ、そんな、李火君、嘘だよね?」

「……」


 李火君は肩を軽くあげ、眉をひそめます。


「全く、さっさと時計塔ノ君を置いていけば、こんな面倒なことはしなくてすんだのに」


 その口調は今までの李火君らしくはない、冷たい声色でした。劉生君は息をのみ、じりじりと後ずさります。


「……も、もしかして、本当にそうなの? 本当に、魔王に乗っ取られてるの?」


 李火君はふんわりと微笑みます。


「改めて挨拶でもしよっか。ワタシの名はレプチレス。レプチレスコーポレーションの社長だよ」


 その瞳の奥には、ほの暗い赤い光がちらちらとのぞかせていました。咲音ちゃんはぷくっと頬を膨らませて、彼女の武器である図鑑を握りしめます。


「早く本物の李火さんに体を戻してください! でないと、わたくしたちが倒してしまいますよ!」


 リンちゃんも威勢よく吠えます。


「こちとら、あんたの本体はわかってんだからね! 本物をとっつかまえて、さっさと倒しちゃうわよー! リューリュー! あの黄色いヘビはどこにいるの?」

「李火君が持ってるよ!」

「リッヒー、あの瓶をこっちに渡しなさい!」

「はい、どうぞ」


 ころころと瓶を転がして、リンちゃんに渡しました。


「ふふん、素直じゃない。って、中に何も入ってないじゃない!」


 瓶の中でぶうたれていた黄色のヘビはおらず、中は空っぽでした。


 李火君は嫌らしい笑みを漏らします。


「ワタシの本体は先に逃がしておいたんだ。けど、安心するといい。すぐにこの体は解放してあげる」


 魔王、レプチレスは懐を探ると、小さなリモコンを取り出しました。


 軽く手でもてあそぶと、まるでテレビのチャンネルを変えるような気軽さで、ボタンを押しました。

 

 すると、グラグラと地面が揺れ、激しい水音が聞こえてきました。同時に、足元に水が流れてきたのです。


「え? ……へ? ……ええ!? ちょ、水! 水が」


 魔王はのんびりと応えます。


「心配しなくてもいいよ。これは普通の水じゃないから、溺れはしないよ。肌に触れると魔力を削り、口にすると意識を奪うだけだから」


 みつる君は慌てて料理を呼び出そうとしますが、いくら念じても何も出てきません。


「本当だ、料理が出ない……!」


 魔力が削られているのです。


「そ、それなら水を外に流せば! えいえい!」


 劉生君はさっき開けたように、ドアが開く地面を踏んでみました。けれど、壁は微動だにしません。


「なら、水が流れてくるところをぶっ壊すわよ!」「そうしましょう!」


 リンちゃん吉人君は水の流れる場所に行こうとします。しかし、彼らの努力を魔王は鼻で笑います。


「魔法が使えない今、どうやって水をせき止める気なの? 厳しいと思うんだよね。そもそも子供の力でどうにかできる仕掛けじゃないから」

「……」


 吉人君は魔王を睨みます。


「僕たちをここにおびき出して、閉じ込めるつもりだったんですね……!」

「まあ、そうだね」


 魔王は笑みを浮かべます。


「本当は君たち四人と蒼ノ君、それから赤ノ君の力を秘めた赤野劉生は別々に捕まえるつもりだったんだけど、君たち四人も、赤野劉生もうまく動いてくれなかったからね。それなら一網打尽にしてしまおうってこと」


 ちらりと劉生君に視線を送ります。


「この水の力なら、赤ノ君も出てこれないだろうしね」

「……赤ノ君……? なにそれ?」

「そういえば詳しくは知らなかったんだっけ? まあ、いいよ。気にしなくて。悪いようにはしないから」


 そう言いながらも、李火君は非常に悪い顔をしています。赤ノ君やら何やらは理解できませんが、劉生君たちにとって良いことは起きないことでしょう。


 リンちゃんはぐぬぬと唸り声をあげます。


「なら、魔法なんて使わないで、あんたをとっちめればいいだけの話よ! ていや!」


 李火君の腕をとって後ろに回すと、そのまま壁に抑えつけました。


「さっさとこの水抜きなさい! それか出しなさい!」

「君ってもしかして記憶能力がない方?」

「はあ? なんですって!」

「もう一度言うね。ワタシは、この体から抜け出すつもりなんだ。そろそろ元の体が恋しくなったものだからね」


 ぱちりとウインクをすると、手を軽く振りました。


「それじゃあおやすみ。いい夢を」


 魔王は目を閉じると、力が抜け、ずるずると下に落ちていきます。リンちゃんが慌てて抱え込んで体を揺らしますが、眼を閉じたまま身動きしません。


「……」


 リンちゃんは顔面が真っ青になります。


「……どうするのよ、これ!」

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