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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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22 対決! あんど、策略合戦! VSレプチレス社長!

「んー、ドロップおいしいなあ」

 

 色とりどりのドロップは見た目も可愛いですし、甘くておいしいです。李火君にもおすそ分けして、美味しさを分かち合いたいなあと思いました。


「李火君、まだ奥の部屋にいるのかなあ」


 咲音ちゃんがめちゃくちゃにした本を片付けるため、李火君は書斎とリビングを往復していました。


 劉生君も手伝うと言いましたが、「みんなが帰ってきたときにお出迎えしてほしいから」といって断られました。ですので大人しく座っていましたが、ドロップを少し分けるくらいなら大丈夫でしょう。


「りーひくん! りーひくん! どこかな、どこかな 探しましょ、探しましょ、らんるんるーん!」


 即興の歌を口ずさみながら、李火君を探します。


 部屋をいくつか潜り抜けていると、橙花ちゃんが眠る寝室につきました。橙花ちゃんの様子も見ておこうと思い、そっと部屋に入ります。


 すると、橙花ちゃんのそばに李火君がいました。本をリビングに取りに行く道すがらでしょうか。李火君は手に何も持っていません。


 李火君は片手を耳にあて、何か呟いていました。


「そうか。交戦中か。わかった。こちらも動く。お前も作戦通り動け」


 誰かと電話中みたいです。ミラクルランドにも携帯があるとは意外です。電話中は話しかけてはいけないと思い、声をかけず、いつ終わってもいいようにそっと待機します。


 しかし、李火君は「じゃあね」とも「ばいばい」とも言わずに電話を切りましたので、タイミングをのがしてしまいました。


 李火君は橙花ちゃんをじっと眺めると、耳にあてていた手を橙花ちゃんの頬にあてました。頬を優しくなで、李火君は目を細めます。


「……もうすぐで、君のお遊びも終わりだね。あとはこっちで処理してあげるよ」

「……?」


 何を言っているかは分かりませんが、李火君の空気感ががらりと変わったような気がしました。気になって、劉生君は声をかけました。


「ねえ、李火君」

「……っ!」


 李火君はハッと顔をあげました。びっくりして大きく目を開きますが、すぐに取り繕い、「どうかしたの?」と問いかけます。


「……えっと、電話してたの? それに、処理ってなんのこと?」


 李火君はニコッと微笑みます。


「気にしないでも大丈夫だよ。ところで、劉生君はどうかしたの? もうみんな帰ってきたの?」

「ううん。あのね、ドロップ一緒に食べようって思ったの」

「ありがとう! なら、俺も飲み物いれてくるよ」


 李火君はいつもの通りで、怖い雰囲気もなくなっていました。なら、さっきのは勘違いだったに違いありません。


 ホッとして、劉生君も「僕もお手伝いする!」と嬉しそうに笑います。


 二人はキッチンにいって、飲み物の用意をします。


 ホットミルクを作ってくれるようです。李火君は片手鍋にたっぷりの牛乳をいれて温めてくれました。


「劉生君はコップ用意してくれる?」

「うん! わかった!」


 食器棚を眺めて、どのコップがいいかなあ、と悩む劉生君。


 そんな劉生君をちらりと確認してから、李火君は小瓶を手にしました。


 中に入っているのは、砂糖のようなサラサラとした白い粉です。けれど、その粉は甘くはありません。むしろ、ほんのり苦みがあります。


 瓶に入っている粉は、ずばり、眠り薬です。


 スプーン一杯入れたら、大の大人でも三日は眠り続け、子供なら一つまみだけでも半日は眠ってしまうのです。


 李火君は自分用のホットミルクを別の鍋にわけてから、ミルクにそっと粉を入れます。そのまま瓶をポケットに隠そうとしますが、劉生君に声をかけられ、咄嗟に調味料入れに隠します。


「李火君、李火君! このコップにしたよ!」

「うん、ありがとう。それじゃあ入れるね」


 李火君はコップにミルクを注いでから、苦み隠しのために蜂蜜をほんのりたらします。


「はい、こっちが劉生君のだよ」

「わーい! ありがと! 蜂蜜入りだ!」

「蜂蜜好きなの? なら、もう少しいれる?」

「うん! 僕が入れるよ!」


 蜂蜜をもう少しだけたらします。


 ぐるぐるとかき回しているうちに、チョコソースのボトルも見つかりました。


「これもいれていい?」

「いいけど……。甘くなりすぎない?」

「うーん。そうかなあ。それじゃあお塩入れる!」


 劉生君は調味料入れにあった小瓶を手に撮ります。


「……え? 待って、それ塩じゃな」

「えーい!」


 迷いなくコップの中にぶち込みました。


「よーし、それじゃあ味見を」

「駄目だよ駄目!」


 李火君は慌てて止めます。


「絶対美味しくないから。死んじゃうくらい美味しくないから」

「あはは、李火君ったら言いすぎだって」

「……」


 ちなみに、李火君は冗談をついているつもりなどありません。スプーン一杯で大人が三日寝てしまうような薬だというのに、スプーン十杯分ぐらい入れてしまっているのです。


 もはや寝るどころの騒ぎではなくなってしまいます。白雪姫もドン引きの眠り姫にならざるを得ません。さすがの李火君もコップを取り上げました。


「これは飲まないでおこう! 別のものを用意するからさ」


 問答無用で排水溝に流して、冷たいミルクを代わりにいれます。


「はい、どうぞ」

「うん! じゃあ蜂蜜いれるね!」


 劉生君は自分の分と李火君の分に蜂蜜をひとすくい入れます。


「あとこれー!」


 劉生君は眠り薬を二つのコップに入れました。がっつり入れました。

 

「……なんで入れたの?」

「えへへ、すいかに塩かけると美味しいから、牛乳に塩も美味しいかなって」

「だからこれ塩じゃないよ」

「あれ、そうだっけ」

「……ねえ劉生君。もしかして分かってやってたりする?」

「なにが?」

「……いや、なんでもない」


 李火君は疲れたように頭を抱えます。


「……牛乳はやめて、紙パックのジュースにしようか!」

「えー、うーん。分かった」


 先に行く劉生君の背中を見ながら、李火君はぽつりとつぶやきます。


「……それなら、作戦変更かな」


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