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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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21 NEW! 明かされる真実! さっきぶりの侵入者!


 咲音ちゃんが呆然と呟きます。

 

「……どうして、どうして蒼さんがこんなことを…….。な、何かの間違いに決まっていますよ!」


 我に戻った吉人君も加勢します。


「ええ。そうに違いありません。でなければ、映像を編集したに違いありません」

『ほうほう、よっぽど時計塔ノ君を信用していると。だがしかーし。本当に時計塔ノ君は信じられるのかー?』

「……そ、それは……」


 吉人君は口ごもってしまいました。


 時間が三時に止まっている理由を騙していたこと、それから時計を盗んだことを教えてくれなかったことが、みんなの頭によぎりました。


 コモドオオトカゲは喉から笑い声を出します。


『これが真実だ。さあーどうするー。もし時計塔ノ君を渡せば、お前らは特別に無料で出してやるぞー? もし時計塔ノ君を渡さないのなら、お前らも、この映像の男の子も、痛い目にあってもらうこととなるなあ』


 魔王は子供たちを惑わせつつ、甘い蜜をも与えます。


 これには、みんなは黙り込んでしまいます。


 友達だった橙花ちゃんを魔王に売るわけにはなれません。ですが、だからといってすぐに否定はできなくなっていました。


 業を煮やして、魔王は子供たちを脅します。


『さっさと決め……ん?』


 魔王は言葉をとめました。


 続けて、廊下で何やら物音がしました。誰かがドタドタと走っています。


 追いかけっこでもしているのでしょうか? 


 いや、そんなわけありません。ここはレプチレス・コーポレーションの本拠地です。子供や爬虫類たちが楽しく元気に遊ぶ場所ではありません。


 表情のない兵士たちも、わずかに眉をひそめて、入り口の方へと向かいました。


 そのときです。


 扉が唐突に開きました。ドア近くにいた兵士は吹き飛ばされ、他の兵士も巻き込まれて倒れてしまいました。


 起き上がろうとする兵士たちですが、侵入者たちに踏みつぶされました。


『どけどけ!』『んー、どいてくれると助かるかなあ』


 そのうちの一匹は、リンちゃんみつる君をみて、『わあ!』とびっくりして丸まりました。


『な、なんでここにいる!』『ひえ、なんたる偶然』


 丸まったヘビの頭の上には、小さな片手サイズのトカゲがいました。アオダイショウカメレオンのコンビです。


 吉人君と咲音ちゃんはきょとんとしていましたが、リンちゃんみつる君は違います。


「あれ? あんたらって、リューリューにイカサマしたヘビじゃない!」

「どうして社長室にいるの?」

『ん? 社長室? え? ここ社長室か?』


 ボールパイソンはビックリした顔でコモドオオトカゲを見ます。


『なら、どうしてコモドオオトカゲさんが社長室にいるんだ?』

「……へ?」みつる君は戸惑います。「だって、このコモドオオトカゲって社長なんでしょ?」

『何言ってんだ? そんなわけないだろう』


 カメレオンは、顔が真っ青になってしまったコモドオオトカゲを舌でさします。


『コモドオオトカゲさんはねえ、レプチレス・コーポレーションの部長さんだよお。レプチレス社長じゃないよ』


 みんなのびっくりした視線が、コモドオオトカゲに集中します。


 コモドオオトカゲは、威厳もなく、先ほどまでの強気な態度も消え失せ、ただただおろおろとしていました。


『いや、オレッチは、ワシはま、ままま、魔神であるッス! あ、魔王だぞ!』


「……オレッチ?」吉人君が呟きました。「……ッス?」リンちゃんが呟きました。


 咲音ちゃんが、不思議そうに首を傾げます。


「なんだか、黄色いヘビさんみたいですねえ」


 すると、アオダイショウは何でもないとでも言いたげに答えました。


『ああ、多分、そっちが社長だな』『だねえ』

「……へ?」


 みつる君はビックリして大声をします。


「待って。あの黄色いヘビが魔王ってこと!?」

『? 何をいまさら驚いている?』『テレビでいつも流れてるよお。レプチレス・コーポレーションにいる子供なら、みんな知ってるよお』

「けど、昨日のテレビでは、コモドオオトカゲが映ってたよ!?」

『昨日は国営放送の放送日じゃないぞ』『休日だからねえ。臨時の国営放送がない限り、流れないはずだよ。だから、ビデオだったんじゃない?』


 ヘビとカメレオンが嘘をついている様子はありません。むしろ、コモドオオトカゲの方が嘘をついてそうです。


 彼らの言葉が真実であったとするならば、ある恐ろしい真相が見えてきました。


 そもそも、魔王がコモドオオトカゲだと思い込んでいたのはどうしてでしょうか。


 橙花ちゃんが教えてくれたわけではありません。橙花ちゃんからは「レプチレス・コーポレーションの魔王は力こそ弱いものの狡猾」という情報しかもらっていません。


 教えてもらったのは、他でもない、李火君です。彼がコモドオオトカゲを指して、「あれがレプチレスの魔王」と話していたのです。


 例のテレビだって、つけてくれたのは李火君です。


 吉人君は、鋭い視線をコモドオオトカゲに向けました。


「あなた方と、山崎李火君はどういうご関係ですか? 説明してください」

『……ふっ、』


 魔王は、大笑いします。


『ふははは! ばれてしまってはしょうがないッスね! その通り、オレッチは魔王ではないッスよ。オレッチはただの部長ッスからね!!』


 魔王、あらためコモドオオトカゲ部長はちろちろとしたを出します。


『だがしかーし! お前らがここにきてる段階でオレッチたちの作戦通りッス! 時計塔ノ君と、赤ノ君の力を持つ坊主さえこっちの手に入ればいいんッスからね』


 唐突な豹変に、咲音ちゃんは困惑します。


「そ、それなら、李火さんの方が敵さんなんですか!」

『正確にいうと、あの小僧は我らがレプチレス社長が操っているッス。レプチレス社長は人の子を操り、意のままに従わせる力があるッスからね!!』


 吉人君は驚き狼狽えます。


「あ、操ってた!? 確かに、魔王にはそういう力があると聞いた気がしますが……。まさか山崎君が操られていたとは……」


 リンちゃんは悔しそうに唇を噛みます。


「ぐぬぬ、蒼ちゃんがいたら、すぐに分かってたのに……」

「……まさか」吉人君は息をのみます。


「山崎君が魔王に乗っ取られているとばれないように、蒼さんの意識を奪ったんですか!」

『そうッスそうッス。あとは、オレッチとレプチレス社長の入れ替わりがバレないようにするためッス。当然ながら、時計塔ノ君はレプチレス社長もオレッチも知ってるッスからね』

 

 コモドオオトカゲ部長はのしのしと後ろに下がります。尻尾は嬉しそうにフリフリ振っています。


『いやー、成功してよかったッス! 社長に褒めてもらえるッスねえ!』


 上機嫌の部長に、リンちゃんは腕組みをして鼻で笑います。


「なーにが褒めてもらうよ! あたしたちにバレてんじゃないの!」


 しかし、コモドオオトカゲは笑みを崩しません。むしろ、さらに高笑いします。


『はっはっは! お前らなど社長の眼中にもないんッスよ。レプチレス社長がこんな難しく細かい作戦を実行した理由は、たった一つ』


 赤い目を細めて、コモドオオトカゲはニンマリと笑います。


『赤野劉生を無力化し、捕らえることッス』

「っ!」


 そのとき、四人は気づきました。


 劉生君と一緒にいるのは、真の魔王レプチレスと、社長に操られた李火君であることを。


 リンちゃんは慌てて引き返そうとします。が、しかし、兵士がリンちゃんの行く先を阻みます。


『もうあの子供と時計塔ノ君はオレッチたちの手中ッス。そしてお前らは、』


 兵士たちは武器を手にしてリンちゃんたちに向けます。コモドオオトカゲ部長はにやりと笑いました。


『ここで終わらせてやろう。ゆけ、皆の者!』


 兵士は一斉にリンちゃんたちに襲い掛かりました。


「わわっ!」


 みつる君が慌ててしゃがみ込み、敵の攻撃をさけます。態勢をととのえ、もう一度攻撃をしかえようとする兵士ですが、


「ていや!」

 

 リンちゃんは蹴り飛ばしてくれました。


「道ノ碕っち、ありがとう」

「どういたしまして!」


 吉人君や咲音ちゃんも武器を構えます。


 戦闘となるとキャッキャとはしゃぐリンちゃんでしたが、今回ばかりは険しい表情を浮かべています。


「さっさとこいつら倒して、リューリューを助けにいくよ!」


 リンちゃんたち四人は劉生君を思い、懸命に戦闘を続けます。できることなら劉生君が李火君と魔王のもとから離れてほしいと願いました。


 しかし、そんな察しの良い展開は訪れません。


 李火君の部屋にいる劉生君は、リンちゃんたちの心配や激闘もつゆ知らず、一人でのんびりとお菓子を摘まんでいました。

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