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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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17 思いの力を、捻じ曲げて?

李火君は非常に言いにくそうに、みんなに説明してくれました。


「ミラクルランドは、思いの力が重要だってことは知っているよね」


 思いの力が強ければ、空も飛べますし海で泳ぐこともできます。何もないところから美味しいご飯を出すこともできますし、橙花ちゃん曰く、かなり強い思いを持っていれば時を超えることすらできるのです。


「蒼おねえちゃんは、ムラにいる子たちの誰よりも思いの力が強いんだ。……けどね、どんなに強くても、子供一人だけの力だけでは、魔王に匹敵するくらいの魔力を得ることはできない」


 しかし、橙花ちゃんは劉生君が来る前から、魔王と戦い、子供たちを救っていました。


「どうして蒼おねえちゃんがこんな強い力があるのか疑問に思ったんだろうね。ここの魔王が蒼おねえちゃんのことを調査したらしいんだ」


 その結果が、先ほど李火君が言っていた衝撃的な言葉、『蒼おねえちゃんはムラの子供たちの心を操っている』でした。


 リンちゃんは眉をひそめ、首を左右に傾けます。


「……なんでそうなるの?」


 劉生君もいまいち分からずに、ぽけーとしています。


「んー……。ムラの子たちの心を操ったら、魔王を倒せるの? むうー?」


 ここで吉人君がフォローをいれてくれました。


「僕と道ノ崎さん、それから赤野君が初めて時計塔のムラに来た時、子供たちみんなで歌を歌って僕らの歓迎会をしてくれましたよね」


 リンちゃんは「あー、あったわねえ」と頷きます。ちなみにそのときの劉生君は、子供に遊ばれて体力を使いつくし、気絶していましたので、「そんなことあったっけ?」と首を傾げます。


 疑問に思う劉生君はひとまず置いておき、吉人君は説明を再開します。


「複数の子供の願いを一つにして魔法を使うと、一人で魔法を使うよりも強い力を出すことができます。ですので、ムラの子供たちは歌を歌うことで思いを一つにしていた、みたいな話をムラの子供たちがしていましたよね」


 劉生君はうんうん唸りながら、尋ねます。


「つまり、『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』で例えると、一人のヒーローの力だけじゃ勝てない敵でも、五人のヒーローが力を合わせれば勝てるってこと?」

「さすが赤野君。どんな話でも『勇気ヒーロー ドラゴンファイブ』につなげてきますね。大体あってるから突っ込みにくいです」


 吉人君は苦笑します。


「赤野君の例えのとおり、思いが一つにまとまれば、かなり強い力を得ることが出来ます。それなら、思いを一つにさせるように人の心を操作すれば、強い魔力を自在に操ることができますよね?」


 報告書を一瞥します

 

「その本には、蒼さんがムラの子の心を操作して、自分に魔力を貸すよう仕向けている、と書いてあるんです」

「えー、橙花ちゃんはそんなことしないよ。橙花ちゃんは優しいもん。ねえ、みんな!」


 劉生君はみんなに同意を求めました。リンちゃんは「そうよそうよ」と頷いてくれます。しかし、みつる君と李火君の表情はどうにも硬いままです。


 咲音ちゃんは不安そうに二人を見ます。


「……みつるさん、李火さん、どうしましたか」

「……あのね、咲音っち。俺たちさ、このヘビからあの時計塔についての話を聞いたんだけど……」


 みつる君は、ムラの時計は元々レプチレス・コーポレーションの時計であること、彼女が時計を盗んだこと、ミラクルランドの時間が三時で止まってしまっているのは、橙花ちゃんの願いであったことを伝えました。


「魔神が時間を止めたって聞いてたからさ、……俺びっくりしちゃって……」


 みつる君があえて言葉を濁していた部分を、吉人君がはっきりと言ってのけます。


「つまり、蒼さんは僕たちに嘘をついてたってことですね」

「……まあ、……うん」


 複雑そうにしながらも、みつる君は頷きます。どんよりとした雰囲気に、咲音ちゃんは戸惑ってしまいます。


 空気を変えないといけないと思ったのでしょう。咲音ちゃんはある提案をしました。


「え、えーっと……、そうだわ! みなさん、お疲れでしょうし、わたくしが飲み物を用意しますよ。わたくし特性のスペシャルドリンクを振る舞いましょう」


 そんなことされたら、何が起こるか分かりません。


「いや、俺が用意するよ」


 みつる君は慌てて咲音ちゃんを止めにいきます。リンちゃんもこくこくと頷きます。


「そ、そうね。そのほうがいいわね! ……そうだ、忘れてたけど、ヨッシーとサッちゃんにお土産もってきてたのよ! サッちゃんはそっち見ててくれる? 飲み物ならあたしが用意するから!」

「あら、お土産ですか! ありがとうございます!」


 咲音ちゃんの想像とは違いますが、結果的に空気が柔らかくなってくれました。それでも劉生君はなんとなくさっきの空気を引きずってしまっていました。


「……僕、ちょっと橙花ちゃんの様子をみてくるね」


 みんなが各々動きまわりはじめる中で、劉生君は逃げるように橙花ちゃんが眠る寝室へと向かいました。


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