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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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12 対戦?! VSアオダイショウ!

 今の劉生君は、まさに『蛇に睨まれたカエル』でした。

 

 劉生君たち三人はクレーンゲームのエリアから離れ、コインゲームエリアにきていました。スロットや、同時に複数人が遊べる巨大なコインゲームが並ぶ中、劉生君は子供用のコインゲームの席に座っていました。


 対戦型のゲームのようで、劉生君の向かいにはヘビ――咲音ちゃん曰く、アオダイショウが悠々と座っています。


 それぞれの画面には、二匹の恐竜が映っています。右側のティラノサウルスが劉生君、左側のアロサウルスがアオダイショウの恐竜です。


『さあ、これが最終バトルだ。先手はそちらに譲ろう。どうする?』

「……」


 赤いボタンを押せば、攻撃することができます。しかし赤ばっかり押していると、敵に反撃されてやられてしまいます。一回目はそれで負けてしまいました。


 青ボタンをタイミングよく押せば、向こうの攻撃を避けることもできます。しかし、ずっと避けているとペナルティーが発生してしまいます。二回目はそれで負けてしまいました。


 本来ならここで負けでしたが、調子に乗ったアオダイショウは『最後の戦いで勝てたら、お前らの勝ちでいい』と宣言しました。


 それでも、ペナルティーをつけることは忘れませんでした。


『ひひひ、いいか? 前に話した通り、このゲームにお前が負けたら五百万円払ってもらうからな』

「うっ……。そんなお金ないよ……」

『なら、借金でもして返してもらうしかねえな』


 アオダイショウは喉の奥で笑います。


「うう……」


 劉生君はそこら辺の普通の子供の様にゲームに慣れ親しんでいました。けれど、やり手のゲーマーでもありませんので、初見のゲームでどうやって勝つのか見当もつかないのです。


 劉生君よりもゲーム慣れしていないリンちゃん・みつる君はより一層わかりません。みつる君は懸命に糸口を探そうとゲーム画面を睨みつけ、リンちゃんは歯ぎしりをしてアオダイショウを睨むばかりです。


 当然、そんなところに動揺するアオダイショウではありません。むしろ得意げにシューシューを鳴きます。


『さあ、はじめようか』

「う、……うう……」


 はじまったなら仕方ありません。


 劉生君は必死に赤いボタンと青いボタンを連打します。


「お、おりゃー!!!」

『ふっ、甘い』


 ヘビは素早いボタン裁きで劉生君を追い詰めます。尻尾一本でボタンを押しているとは思えない、少なくとももう一人影ながら押しているかのような連打術です。


「う、この……!」


 劉生君も負けじと頑張りますが、いとも簡単に形勢逆転されてしまいます。


 そして……。


「あっ……」


 劉生君の画面には、『YOUR LOST』と書いてありました。


 アオダイショウは至極嬉しそうに目を細めます。


『勝ったな。約束通り、金を出してもらおうか』

「き、汚いわよあんた!」


 リンちゃんが握りこぶしを振り回します。


「そもそも、あんたが吹っ掛けてきたんじゃないの! リューリュー、あんな奴のこと無視しちゃいましょう!」


 リンちゃんは放心している劉生君を引っ張っていこうとしました。しかし、見学していた他の爬虫類が彼らの行く手を阻みます。


「な、なによ」


 爬虫類たちはニマニマと笑います。


『残念だが、約束は約束だ』

『この場所は無法者たちの居場所だぜ。だからこそ、ルールは守らないといけない』

『約束をしたからには、しっかりと払ってもらわねえとな』

 

 次々と強そうな爬虫類たちが集まってきました。


「……おーしっ」


 リンちゃんはやる気満々で腕まくりをします。


 しかし、みつる君が慌てて止めました。


「待って、道ノ崎っち! ここで暴れちゃったら、お金を集められないよ!」

「うっ……。そうはいっても、どうするのよ」

「どうするって言われても……」

 

 二人が困り、劉生君は怯えて涙目になってしまっていました。


「ううっ……。どうしよう……」


 劉生君がぎゅっとリンちゃんの袖を掴んでいると、


「それなら、提案がある」


 小さな子供が無理に大声を出しているかのような、裏返った声が響きます。ふわふわな茶色の髪に、茶の瞳の男の子、李火君です。


「俺と勝負をしようか」


 ゲームセンターの客たちがざわざわ騒ぎます。


『おい、あの子供って、山崎李火じゃないか?』

「ああ、たまにゲーセンに来て小金稼いで帰るやつか。ゲームはうまいっちゃうまいが、あのアオダイショウに勝てるのか?」


 ちなみに、アオダイショウは李火君のことを知らなかったようです。煩わしそうに李火君を一瞥します。


『なんだ、お前』

「その子たちの連れだよ」

『ふん、大人のゲームに口出すな』

「そうだね、賭け金は一千万でどう?」

『……ほう……』


 金額を聞いて、アオダイショウの目の色がガラリと変わりました。


 とはいっても、良い意味ではありません。


 そこら辺の石ころを見るような眼から、香しい匂いを放つネズミを見るような眼に変わります。


『お前は話がわかるようだな、坊主』


 アオダイショウは舌なめずりします。


「ゲームは俺が指定してもいいかな」

『いいだろう。案内しろ』


 ヘビの案内をしようとする李火君に、劉生君はピスピス泣きながら抱きついてきました。


「うわあ! 李火君!! 勝手に動いてごめん! ごめん!!」

「分かった分かった、分かったから落ちついて」


 李火君は慌てふためいて、劉生君の頭を撫でてあげました。……あまり撫でるのに慣れていないのか、撫でる力が妙に強く、どちらかというと頭をもぎ取ろうとしているかのようでしたが。


 劉生君はなんだか怖くなってきて、泣き止みました。李火君はよかったと言わんばかりにホッとします。


「大丈夫。君たちを責めはしないよ。しかし、妙なのに絡まれたね」


 李火君は眉間にしわを寄せ、小声で言います。


「あのヘビは評判が悪いんだ」


 そこらへんにいる新入りに絡んで金を巻き上げる、性格の悪いヘビなのです。それだけではありません。あまりに勝ち進めていますので、イカサマをしている疑惑も上がっているのです。


「このゲームセンターは信頼のない動物たちの集まり。とはいえ、ある程度のルールはあるんだ。一番の禁止事項はイカサマだね。それがバレたら、とんでもないことになる」


 みつる君もヘビを気にしながら、小声で尋ねます。


「ならさ、あのアオダイショウのイカサマを見つけたら、赤野っちがお金払わなくてすむってこと?」

「……いや、それは厳しいと思う」


 小さく首を横に振ります。


「アオダイショウはイカサマ疑惑を何度も囁かれている。けど、誰も証拠をつかんでないんだ。だから正々堂々と戦って、どうにか勝たないと……」


 しかし、李火君の声は震えていましたし、自信なさげでした。


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