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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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11 お金稼げるかな? ゲームセンター! 

 眠っている橙花ちゃんを守るため、吉人君と咲音ちゃんを残し、(二人曰く、「できるなら、もっと恐竜をみていたい」とのことです)劉生君たちは恐竜の公園を抜け、作業用のエレベーターでおり、くねくねとした細い道を通ります。


「……それにしても……」


 リンちゃんは李火君が持つ瓶を睨みます。


「そのヘビ持っていくのね。あっちに置いていっちゃ駄目だったの?」


 瓶の中で、黄色のヘビが不貞寝をしていました。李火君は苦笑します。


「まあ、一応ね。俺がもし気絶したら、あのシールもはがれちゃうからね」

「へえ、そうなの! 万能じゃないってことね」

「そうそう。だから念のために持っておいた方がいいかなって思ってね。けど、さすがに隠さないといけないか」


 丁寧にアイロンづけされたハンカチで、瓶を包みます。


「これでよしっと。あともう少しでつくよ」


 それから暫く歩くと、行き止まりにつきました。道を間違えたのかと思う劉生君たちでしたが、李火君は迷わず突き当りの壁に歩きます。


「どうもどうも。合言葉をいうよ。『蛇の道は蛇。藪をつついて蛇を出す。シャーシャーシャー』!」


 がらごろと、石が動きました。


 その瞬間、音の洪水が一気に押し寄せてきました。


「わわっ! なに!? 爆弾!?」

「リューリュー、違うわよ! ほらみて!」


 リンちゃんは目を輝かせます。


「ゲームセンターよ!!」


 ポップな音楽や、どこかで聞いたことがあるアニソンが流れていますし、レースゲームからはブレーキ音やドリフト音がど派手に響いています。


 リズムゲームでは子供たちが軽快なリズムをきざんでおりますし、じゃらじゃらとメダルが吐き出される音もします。


 怖がっていた劉生君も、ほっと息をつきました。


「本当だ。普通にゲームセンターだ!」


 百貨店にあるようなゲームセンターです。


どうやらレプチレス・コーポレーション内では今日は休日のようで、『休日限定!コインプレゼント!』というのぼりが立っています。


これには、みんな、おおはしゃぎです。


「わーいわーい! 僕、メダルゲームやってくる!」「仕方ないわね、あたしはボクシングゲーム行ってくる」「へえ、あそこのクレーンゲームの商品はケーキなんだ! 見に行ってこよ」


前触れもなく、四方八方に散りかける子供達を、李火君はあわてて呼び止めます。


「え? ちょ、待って待って!!ここは何が起こるか分からない場所だから、個人行動は駄目だよ!!」


 李火君は必死でしたが、リンちゃんはころころと笑います。


「あはは、今のリッヒー、すごく蒼ちゃんっぽかったよ!」

「……は、はは……」


 空笑いをすることしかできません。


 李火君が持つ瓶の中から、黄色のヘビの声がしました。


『なんつーか……。とんでもねえ連中ッスねえ……』


 布の隙間から見えたのか、それとも声だけ聞いて判断したのか。そこらへんはよく分かりませんが、李火君も同意せざるをえません。


 三人相手でこれですので、五人そろっていたらとんでもなく大変に違いありません。


 橙花ちゃんのリーダーシップをもってしても、彼らの引率はかなり頭を悩ませたことでしょう。


 李火君はついつい同情しました。


「……ひとまず、一人で出歩かないようにね。いいかい?」

「「「……はーい」」」


 渋々ながら、三人は頷いてくれました。李火君は肩をおろします。


「それじゃあ、まずはこの場所の説明からしようか」


 レプチレス・コーポレーションでは、お金ですべてを解決できる場所です。けれど、お金を手に入れるためには、信頼が重要なものとなります。


 ですので、信頼のない子供や爬虫類は、お金を手に入れることさえも難しいです。


 しかし、お金がないと欲しいものも買えませんし、レプチレス・コーポレーションから出ることもできません。


 ならば、どうするか。


「そう考えて作られたのが、この場所だよ。簡単に説明すると、普通に仕事して稼げないなら、かけ事をして稼いでしまおうってこと」


 みつる君は顔をしかめます。


「……なんだか、危なそう」

「その通り。一攫千金もできなくはないけど、基本は借金を作ってしまう場所なんだよね。だから、本来は遊び感覚で入るほうがいいんだけど、まあ、四の五の言ってられないからね」


 不安そうなみつる君に、李火君はぱちりとウインクします。


「そんなに心配しなくて大丈夫。当たりやすいゲーム知ってるからさ。あ、その前にお金をコインに変えてこなくちゃいけないか。……この人数でいくと、トラブルにまきこまるな……」


 不信に満ち溢れた目で劉生君たちを見ます。


「……今からちょっと離れるから、絶対にそこから動かないでね。絶対だよ!」


 何度も念押しをして、李火君はかけていきます。


「もう、李火君ったら、もう少し僕たちを信頼していいのにね」


 李火君の当然の心配に、劉生君はのほほんと憤ります。リンちゃんもそうだそうだと言っています。


「あたしたちだって、待つくらいできるよ。ねー、リューリュー!」

「うんうん!」


 フラグめいたことを言っていますが、さすがの劉生君リンちゃんも、あそこまで念押しされたので、うろうろせずに留まっていました。


 唯一の心配は、みつる君がソワソワしていることでしょうか。


「ね、ねえ、二人とも.。ちょっとだけ、見にいってもいいかな。見るだけだから。見るだけだから!」


 みつる君が気になっているのは、ケーキのクレーンゲームのようです。


 あの崩れやすいケーキをクレーンゲームの景品に落とし込むなんて、どういう工夫をしているのだろうかと、みつる君は知りたがっていました。


「うーん、どうしよ、リンちゃん」


 動くなって言われましたし、劉生君は我慢したいなあと思っていました。けれど、クレーンゲームの場所はすぐそこです。それくらいならいいかな……? とも思っていました。


 悩む劉生君とは裏腹に、リンちゃんは明るく答えます。


「あそこくらいならいいんじゃない? すぐそこだし」

「わーい、それじゃあ見てくるよ」


 言うが否や、みつる君は小走りでクレーンゲームの方にいきました。


「あたしもちょっとだけ見にいこーっと。ケーキのクレーンゲームって、なんかこう、どうやるのかしらね? 落としたら終わりな気がするけど……。リューリューも見に行く?」

「うん! 見に行く!」


 二人が行くのならと、劉生君は意気揚々とクレーンに近づきます。


 あんまりクレーンゲームに気をとられていたからでしょうか。


『あぐっ!』


 劉生君は紐のようなものを踏んでしまいました。


「あれれ。なんだろう……?」


 紐がつづく先を追い、劉生君は血相を変えます。


 そこには、首をもたげ、シューシューと呻るヘビさんがいたのです。


「あ、あはは……」

『……オレの尻尾を踏むとは。命知らずなやつだ』

「……」


 劉生君は思いました。


 やっぱり動かないほうがよかったな、と。

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