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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
5章 商売の国、レプチレス・コーポレーション!―君を信じたいから―
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8 李火君のお家にレッツゴー! ―お土産は、黄色のヘビさん―

少し歩いた先に、入り口が小石に埋もれた小さな洞窟がありました。


「あそこが俺の家だよ」李火君が教えてくれました。「一人用の家だから狭いけど、我慢してね」


 もしや一人しか入れないくらい狭いのかと覚悟していましたが、入口こそ狭かったものの、中は案外広々としていました。


 岩の壁にはランタンがつるされていて、床は落ち着いた茶色の絨毯が敷かれています。小さな椅子とテーブルがちょこんと置いてあり、大きなハンモックがつるされています。


 ハンモックで寝るのかときくと、李火君は笑って否定します。


「奥の方に、寝る場所があるんだ。めんどくさい時はハンモックで寝ることもあるけど、うっかり落ちちゃうときもあるから、気を付けてね。……そうだ」


 李火君はポンっと手を叩きます。


「みんなの座る椅子と飲み物を持ってくる流れで、蒼おねえちゃんを俺のベッドで寝かせようか」

「!! 僕もその方がいいと思う!!」


 劉生君の背中よりも、李火君のベッドの方が寝心地もいいことでしょう。劉生君は李火君に連れてもらい、奥へ奥へと向かいます。


 普通のお家でしたら部屋と部屋の間には扉や廊下がありますが、李火君のお家は細長いつくりになっていました。


 キッチンや洗面所を越えると、一人用のベッドがちょこんと置いてある場所にたどり着きました。ベッドの上に橙花ちゃんを下ろして、掛け布団をかけます。


「橙花ちゃん、李火君がお布団貸してくれたよ。よかったね」


 話しかけてみますが、橙花ちゃんは規則的な寝息をつくばかりです。


「……橙花ちゃん……」


 劉生君は肩をおろします。


「ねえ、李火君。橙花ちゃんを起こす方法ってないのかな?」


 李火君は黙って首を横に振ります。


「かなり複雑な魔法がかけられているから、難しいと思う。誰にかけられたの?」

「あの黄色いヘビだけど、魔法は魔王しか解けないって言ってた」

「……あのヘビの言う通り、魔王じゃないと解けないかな」

「やっぱりそうなんだ……」


 劉生君は心配そうに橙花ちゃんの顔をのぞきこみます。呪いにかけられたとは思えない、穏やかな表情を浮かべています。


 試しにぷにぷにと頬をつまんでみると、少し顔を歪めて、寝返りを打ちます。


「……本当に寝てるみたい」


 思わず呟くと、李火君は微笑みます。


「うん。けど、こんな気持ちよさそうに寝てる姿は、俺も初めてだけどね」

「そうなの?」

「いつもうなされてたよ。あまりいい夢を見てないんだろうね。……おっと。このことは蒼おねえちゃんには内緒だよ」


 李火君はウインクをします。


「蒼おねえちゃんは負けず嫌いだから、そういう弱い部分を見せたくないだろうからね」

「うん! 分かった! 内緒にするね」


 劉生君は頷きます。


 李火君はどこからか人数分の椅子を持ってくると、劉生君に手伝ってもらいつつ、みんなのところに戻ります。


「はい、どうぞ。それと、飲み物飲み物っと」


 温かいココアをいれてくれました。ミルクの優しさとココアの甘さが心にしみわたります。劉生君はほっとため息をつきます。


「んー! おいしい」


 リンちゃんもニコニコ笑顔です。


「ねー。リッヒーってココア作るの上手なんだねえ」

「……もしかして、俺のこと?」

「そうそう!」

「……はあ……」


 李火君は何とも言えない、複雑そうな表情になります。ニックネームが気にいらなかったのでしょうが、大人な彼は特に反論せず、「まあ、ココアは好きだからね……」とあいまいな返事をします。


 李火君も席に着き、ココアをすすります。


「それじゃあ、一息ついたばっかりで悪いんだけど、君たちに色々と聞きたいことがあるんだ。いいかな」

「うんわかった!」


 劉生君は元気よく答え、空になったコップを掲げます。


「おかわり!」

「……へ?」


 李火君は目が点になります。


 リンちゃんは「ちょっと、リューリュー」といって、肘でつつきます。けれど、吉人君とみつる君が目を爛々と輝かせて立ち上がりました。


「僕ももう一杯お願いします!」「俺は作り方教えてほしい! いいかな!」


 遠慮というものがどこにもありません。なんなら、咲音ちゃんすら「わたくしもお願いしますー」といって、コップを掲げました。


「……あはは。うん。分かった。用意するよ。林くんにも教えてあげるね」


 リンちゃんもおそるおそる手をあげます。


「そのー。……あたしも教えてくれないかな?」

「うん。一人教えるのも二人教えるのも同じだから、いいよ。……その前に、」


 李火君は脇に置いた瓶を持ち上げます。中にいた黄色のヘビは、ぎくりと体をこわばらせます。よくよくみると、瓶の重い蓋をそうっと外して、脱走しようとしたところでした。


「悪い子ですね、ヘビさん。動いてはいけませんよ」


 いそいそとポケットから一枚のシールを取り出すと、瓶にぺたりと貼り付けます。


「レプチレス・コーポレーションで売ってる魔法道具だよ。その名も、『これは僕のもの』シール! これをつけると、シールを貼った人以外は瓶を開けられなくなるんだ。試してみて」


 劉生君が頑張ってふたを廻してみても、リンちゃんが渾身の力を込めてまわしてみても、黄色のヘビがじたばた動き回っても、瓶はびくりともしません。


『ぐぬぬっ! 何するんッスか!! 離すッス!』

「無理ッスよ。ひとまず、ヘビはこれで大丈夫だね。よしっと、」


 李火君はパンパン、と手を叩き、にこりと笑います。


「それじゃあ、ココアをもう一度入れにいこっか。その後で、色々と教えてほしいな」

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