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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
4章 音楽の大樹、トリドリツリー!―どんな思い出も、大切だから―
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26 魔神、来たる!? 圧倒的な力! 

 ソレは駆けだすと、橙花ちゃんに切りかかります。


「……っ!」


 杖で受け止めますが、あまりに重い攻撃にたじろぎます。


「このっ! 時よ、<モドレ>!」


 咲音ちゃんの犬を召喚して、ソレに噛みつきます。しかし、魔神によって一刀両断されてしまいます。


 魔神はニマニマと笑います。


「なんだ、その程度か? 思ったよりも弱いな。残念だが、お前のお遊戯はここまでだ」


 魔神は、無表情になります。


「バイバイ、蒼。永遠に」


 剣を振り、橙花ちゃんに切りかかりました。


 しかし、橙花ちゃんはその刃に触れませんでした。


『<暴風>!』


 立っているのもやっとな風が魔神を襲います。魔神は一歩も足を踏み出すことはできません。


「……これは……」


 橙花ちゃんの前には、大きな鳥、魔王トトリが立っていました。彼女は魔神を睨みつけます。魔神は忌々しげに舌打ちをします。


「お前、俺の味方だろ? 邪魔するな」

『黙れ、諸刃ノ君』


 トトリは低く呻り、羽を逆立てます。


『お前はウチたちが封印したはず。どうしてその子供の中にいたんだ』

「……封印?」橙花ちゃんは眉間にしわを寄せます。


 魔神から目をそらさず、トトリは説明してくれました。


『あいつは力こそ強いが、この世界の破壊しか考えていない。だから、ウチたちが封印したんだ。一部はウチたち王の体に、一部はミラクルランドの最奥部にね』

「そうだったんだ……」


 魔神がある一時しか出てこなかったのは、そういうことだったのかと、橙花ちゃんが納得している間にも、トトリは鋭く魔神を追求します。


『ウチたちは二度と出てこない様に細工をしていたはずだが、どうしてその子の身体を乗っ取っている?』


 魔神は鼻で笑います


「この赤野劉生ってガキが王様たちを倒してくれたからと、お前が赤野劉生の記憶を消してくれたからな。おかげでこいつの奥底に眠ってた俺が目を覚ませた。感謝してるぞ」

『……そうじゃない。聞きたいのはそっちじゃない』


 魔王トトリは険しい表用になります。


『どうしてその子供の中に潜り込んだ』

「あー、そっち? そうだなあ。特に説明するほどのこともないが、強いて言うなら、馬鹿だからだな。間抜けな奴ほど隙が多い」


 魔神は冷めた目でトトリを見ます。


「それで満足か? だったら黙っててもらう」


 魔神は剣に力を込めます。すると、どす黒いオーラが剣をまといはじめました。触れただけで呪いの傷をうけてしまうような、恐ろしさがあります。


『……』


 魔王をにらみつつ、トトリは橙花ちゃんに声をかけます。


『蒼。……あとは、君次第だ』

「……え?」


 橙花ちゃんが尋ねる前に、トトリは羽を羽ばたかせて、切り裂くように叫びます。


『<波浪>、解除!』

「っ!」


 魔神の体が、劉生君の体がぴたりと固まりました。彼の顔に、初めて愉悦と無表情以外の感情が浮かびます。困惑です。


「……これは……。まさかっ!」


 怒り狂った目で、トトリを睨みます。


「貴様……!!」


 魔神は剣を一振りします。衝撃波がトトリを襲い、バッサリと翼が避けます。苦しげなうめき声を飲み込み、トトリは叫びます。


『蒼っ! 赤野劉生から奪っていた記憶を戻したっ! だが、完全に戻るまでに時間がかかる。それまでどうにか』


 次の瞬間、

 

 トトリの胸から血が吹き出しました。彼女の胸には、赤い剣が深々と突き刺さっていました。


『黙ってろ、鳥』


 魔神はトトリを蹴り飛ばしました。


 力なく倒れるトトリ。彼女の体は、段々と赤い光の粒になっていきます。


 橙花ちゃんはトトリに駆け寄り、信じられないとばかりに見下ろします。

 

「……トトリ……。どうして」

『勘違いしないで欲しい。ウチは蒼の敵だよ。でも、こいつの味方になるくらいなら、これくらいの助力はしただけ』


 トトリは、微笑みます。


『次会うときは、覚悟してね』


 それだけ言うと、彼女はチリとなり消えてしまいました。


「……トトリ……」


 感慨にふける時間はありませんでした。


 魔神の攻撃は、橙花ちゃんに向かっていたのです。


 寸前のところで躱すと、魔神は舌打ちをします。

 

『ちっ、面倒なことを。……仕方ない。本当はもっと遊んでバラシてやりたかったが、すぐに終わらせてやろう』


 彼の眼が赤く光ります。


「……劉生君。……頼む。早く思い出してくれ」


 橙花ちゃんは一筋の願いを胸に、杖を構えました。


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