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ほうかごヒーロー!~五時までの、異世界英雄伝~  作者: カメメ
4章 音楽の大樹、トリドリツリー!―どんな思い出も、大切だから―
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20 三羽烏ウグイスの攻略方法……? 裏技使っちゃう?

 一旦、劉生君たちは三羽烏ウグイスのそばから離れ、三層ラシドをぶらついていました。


 不気味なまでに透き通った泉や、造り物のような木の葉を横目に、咲音ちゃんは何か考え込むようにとぼとぼ歩いています。


 咲音ちゃんの後ろを、劉生君たちは続いています。


 リンちゃんは心配そうに咲音ちゃんの背中を見つめます。


「……やっぱりさ、あのウグイスをあたしたちで倒しちゃおうよ。サッちゃん辛そうだし」


 橙花ちゃんの過激思考にリンちゃんが傾いてしまうほどに、咲音ちゃんは悩んでいました。


 吉人君や、先ほどは咲音ちゃんに頑張ってほしいとお願いしていたみつる君でさえも、その意見に反対はしません。


 けれど、聖菜ちゃんがふるふると首をふりました。


「……やめた方がいい、よ。あの三羽烏、他の鳥さんよりもすごく強い。……ウグイスさんよりも強い鳥は、お姫様だけ」


 橙花ちゃんもそれは分かってました。あのウグイスは小鳥ながらも、トリドリパークの参謀役を担っています。


 やる気のないお姫様、魔王トトリに代わって、国の防衛に勤しむこともあります。実際問題、橙花ちゃんは魔王トトリよりもこのウグイスと戦った回数の方が多いくらいです。


 あの鳥は魔法に長けていました。一つ一つの魔法は強くありませんが、多数の魔法を使い、テクニカルに戦う厄介な鳥でした。


 あんなに自信満々に『トリドリパークから追い出す』と言っているということは、それ相応の魔法を仕掛けていることでしょう。


 自分たちが攻撃を仕掛けた瞬間に魔法を発動させ、文字通り追い出される羽目になるかもしれません。


 しかし、だからといって、咲音ちゃんに無理させるわけにはいきません。


 やはり戦った方がいいか。橙花ちゃんが徹底抗戦に傾きはじめていましたが、それを跨げるように、聖菜ちゃんは声をあげます。


「……あのね、私、考えがあるよ。……多分、咲音ちゃんは、二層ファソの失敗のせいで、あんなに自信がないんだと思う」


 あの失敗を引きずって、今も勇気がわいてこないのです。


「……だから、ね」


 聖菜ちゃんは、答えます。


「……記憶を、少しだけなくしたらいい、って。……そう思ったんだ」


 吉人君は戸惑ったように目を瞬かせます。


「そんなこと、できるんですか。記憶の改竄は魔王の力によるものですよね」

「……うん。だけど、あそこならできる。記録の幹なら、できる」


 記憶の幹とは、二層ファソで劉生君たちが通りがかった、記憶の光が漂っていた場所です。


「……あの幹は、全部の層に通じてる。だから、ここにもあるはず」


 聖菜ちゃんは橙花ちゃんと劉生君に視線を移します。


「……本当は、子供には見つけにくい場所にある。だから、どこにあるかは分からない。……けど、蒼ちゃんと劉生君の力があれば、……すぐに見つかる」


 橙花ちゃんと劉生君は互いに顔を合わせます。突然の聖菜ちゃんの提案に驚いたのでしょう。二人とも戸惑いを隠しきれていません。


 他の子だってそうです。みつる君なんかは反対の色を全面に押し出しています。


「記憶をいじるなんて、よくないよ! 咲音っちの他の思い出もなくなっちゃうかもしれないし、俺は反対だよ」

「あたしも反対」


 リンちゃんも断固拒否します。


「そもそも、そういうのって、あたしたちが勝手に決めちゃダメでしょ。サッちゃんが決めるならともかく、」

「わたくしのことが、どうしましたか?」


 いつの間にか、咲音ちゃんがこちらに近づいていました。リンちゃんは慌てます。


「あー、いや、なんでもないの! なんでも! 記憶をちょっとなくしちゃえば、咲音ちゃんも元気になれるって話してただけ!」

「記憶ですか? そんなことができるんですか……?」

「できるみたいだけど、しなくていいわよ。他の方法探しましょ」


 話を反らそうとするリンちゃんですが、咲音ちゃんは思いのほか引き下がりません。


「記憶をここでなくしても、ずっと戻らないわけではないんですよね?」

「え? えーっと、蒼ちゃん、そうなの?」


 橙花ちゃんは首を傾げます。


「ずっと戻らないことはないと思うけど、方法によりけりかな。聖菜ちゃん、どうやってするのか教えてくれる?」

「……うん」


 聖菜ちゃんは身振り手振りを添えて橙花ちゃんに伝えます。ところどころ子供たちには理解できないこともありましたし、なんなら吉人君でさえ全部が全部分かったわけではありません。


 リンちゃんなんて話の途中でウトウトしていましたし、劉生君は飽きてしまったのか、ポケットに入っていたオレンジ色の花を眺め始めました。


 ですが、さすが橙花ちゃんといったところでしょうか。相槌をうち、いくらか質問したら完全に習得できたようです。


「その方法だったら、実質的には魔王トトリの力を借りてることになるから、トトリさえ倒せば記憶を取り戻せるね」


 けれど、橙花ちゃんは乗り気ではありません。渋い表情を崩しません。


「失敗して、咲音ちゃんが何もかも記憶がなくなるってことはないよ。でも、ボクはあまり賛成できない」

「……ですけど、わたくし、少しだけ試してみたいんです」


 咲音ちゃんは決意と覚悟を込めて、みんなを見渡します。


 反対したい気持ちはやまやまですが、そこまで懸命に訴えかけてくるのです。橙花ちゃんは悩みながらも、「ひとまず向かってみよっか」といいました。


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