11 意外と苦戦!? 三羽烏戦!
「リューリュー!! 大丈夫!?」
「う……」
懐かしい声色に、劉生君の瞳からぼろぼろと涙があふれてきました。
「リンちゃん!! リンちゃん!! わあん、さみしかったよ! どこ行ってたの!?」
「それはこっちのセリフよ……」
リンちゃんは頭をかかえます。
「見つけたかと思ったら、鳥に襲われてるし、落とされそうになってるし、どうしてそうなったのよ」
軽々と着地して、劉生君を優しく下ろします。怪我がないか確かめてから、ほっと息をつきます。
「よかった、無事っぽい」
「ならよかったです」
吉人君がのんびりと頷き、大量の鳥たちを一瞥し、高いところで鳥たちを指揮するオオワシを見ます。
「あの鳥が三羽烏の一羽ですか。それなら、戦いましょうか。<マッチャ=ラテオーレ>!」
緑の玉が鳥の集団に突っ込み、しびれ薬を辺りにまき散らします。粉を吸った鳥たちはふらふらと墜落していきます。
一部の鳥は翼で風を起こして吹き飛ばしますが、そんな鳥たちにはリンちゃんの電気玉を投げ、本当の意味でしびれさせます。
リンちゃんはパチリとウインクします。
「えっへん! どうよ! これが、あたしたちの力よ! どんなもんじゃい!」
劉生君と咲音ちゃんはキャッキャとはしゃぎます。
「リンちゃんかっこいい!」「かっこいいですわ!」
「でしょでしょ?」
そうやって胸を張って天狗になっていると、油断が生まれるのが世の常です。
こんこんっと木簡の音が耳に届いた途端、リンちゃんの後ろに三羽の鳥が忍び寄っていたのです。
人の腕ほどある嘴で、リンちゃんを貫こうと高速で突撃してきます。
しかし、
「時よ、<トマレ>!」
それは阻まれました。
三羽の鳥はぴたりと動きを止めてしまいます。どうもがいても動きません。
「わあ、ありがと蒼ちゃん!」
「大丈夫だよ。……けど、このままの戦い方だと難しいかもしれないね」
橙花ちゃんはちらりと上空を見上げます。
吉人君やみつる君の攻撃で幾匹かの鳥は倒せましたが、吉人君がもう一度<マッチャ=ラテオーレ>を使っても、二度も同じ手には引っかからんとばかりに、逃げていきます。
みつる君も、戦局の不利を理解したのでしょう。<クッキング=アンセーフ>で攻撃し、<レッツ=クッキング>で補助をしつつ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべます。
「マーマル王国でも、赤野っちたちの攻撃の仕方を読まれてて、うまく戦えなかったときあったよね。でも、今回は読まれてるというより、学習されてる気がするよ」
吉人君も顔をしかめて頷きます。
「ええ。これではジリ貧です」
「それにしてもっ!」リンちゃんは雷をまとった脚で鳥を散らしながら、額に汗を流します。「あんな遠い距離からどうやって指示出してるのかしら! 超音波? 鳥って超音波出せるの?」
吉人君が答える前に、咲音ちゃんがぶんぶんと首を横に振ります。
「コウモリさんならともかく、鳥さんは基本的に超音波で会話しませんよ」
「あら、そうなの?」
言われてみれば、鳥は超音波を使うイメージがありません。
けれど、それなら疑念が残ります。
「なら、どうやって命令出してるの?」
「……それは、どうでしょう。わたくしにもよく分かりません。鳴き声で伝えているのかもしれませんが、こんな大群相手ですと、ただの鳥の鳴き声ではかき消されてしまいそうですよね……」
ならば、何か特殊な伝え方をしているに違いありません。ですが、その方法がわかりませんし、鳥たちに襲われている今、みんなで頭をひねらせて悩んでいる暇もありません。
鳥たちの猛攻に耐え続けているうちに、魔力も徐々になくなっていきます。
咲音ちゃんとみつる君なんて、魔力を使いすぎて立っているのもやっとですし、リンちゃんだって肩で息をしています。
吉人君・橙花ちゃんはさすがにセーブしながら戦っていますが、それも限界が近づいてきています。
橙花ちゃんは辺りに視線を走らせます。
一時的に逃げる場所があるかと探していましたが、鳥たちは的確に逃げ場と成りえる場所を封じられています。
「……随分、あの鳥も頭がいいね……。腹が立つよ」
橙花ちゃんは吐き捨てるように言いますが、うまい案はやはり思いつかないようで眉間にしわを寄せています。
すると、くい、と橙花ちゃんの袖を誰かが引きました。劉生君たちを案内していた、金髪の女の子です。
「……私、分かったよ。それと、……考え着いた。いい作戦」
彼女はニコッと笑って、橙花ちゃんにささやきかけます。暫くは怪訝そうに聞いていたあ橙花ちゃんでしたが、段々と納得したような表情に変わります。
「……なるほどね。それなら、いけるかもしれない。分かった、やってみるよ」
橙花ちゃんはすぐに承諾すると、劉生君たちにある作戦を伝えました。
吉人君とみつる君は「そんな作戦で大丈夫なのか」と不安がりますが、リンちゃんと咲音ちゃんは好意的に受け入れます。
「いいじゃない! すごく面白そう!」
「わたくしも、良い方法だとおもいますよ!」
「僕も僕も!」
全肯定主義、赤野劉生君も頷きます。
「それじゃあ、やってみよっか。劉生君。お願いできる?」
「うん! いくよー!」
劉生君は力いっぱい『ドラゴンソード』を振ります。