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第九話、エクストラコールド

 結局、キバは、一週間の休暇を取らされた。


「監察官であるボクがいる前で、労基違反なんてありえないよ~」

 腕組してうんうんうなづいている。


「では、“ジェーン”と“エリン”の観光に行きましょう」

 ユキノが、キバの腕を取る。


「そろそろ、“ジェーン”が大気圏突入すると思うぞ」

 酒場のおやじだ。

 宇宙クジラが惑星に降りるとき、どこに降りるかしばらく軌道上で探す習性がある。


わたくしの船で行きましょう」


「いいのか?」


「あら、我がハーレムの主になられましたら、キバ様の船になりますわよ」

 ユキノは、人差し指を振って得意顔である。


「んん?」

 逃げたほうがいいんじゃ

 キバが出口を探して周りを見た。


「まあ、まあ、まあ、取り合えず後学のために乗ってみようよ」

「現代の船のこと、知りたいでしょ」

 黒縁眼鏡、お堅い女教師の女装をした監察官が言った。


「ん~、船のクルーも紹介したいかな」

 ヤマだ。


「……何もしないな?」

 キバが警戒する。


「すっ、するはずがないですわっ」

 アラアラ

 ツレコンデしまえば、あ~んなことやこ~んなこともっ


「…………」

 分かりやすいなっ

「ふうっ、わかったよ」

 ま、大丈夫だろう

 キバは、はしゃぐユキノを生温かい目で見た。



 ステーションの港に移動した。


「おおっ、これは」


「我が“ハーレムパレス、エクストラコールド”へようこそ」


 曲線を多用した美しい船体。

 後部は急に細くなり、急な坂を描きながら上がっている。

 上がった上に曲線を帯びた艦橋がある。

 その下からは太いアームが左右に斜めに降り、エンジンブロックが二つ、ついていた。


「永久凍土装甲っ」

 監察官が大声を出した。


 白い船体の表面が少し透けて、奥が青い色を帯びている。

 まるで、巨大な氷山のようだ。


「きれいな船だな」


「これはすごいんだよっ」


 ユキメ族の種族特性(スキル)熱量奪取(ヒートテック)

 周りの熱を奪い、自身のエネルギーに変える。

 『永久凍土装甲』は、このスキルを付与されたものだ。


「あらゆる、熱量兵器が無効化されるよ」


「なにっ」


「しかも、補給いらずさ」

「ふふふ、()()に落ちても10分くらいはもつらしいよ」


「すごいなあ」

 キバが、船を見上げた。


 フッフ~~~~ン

 ユキノが、勝ち誇った顔で胸を逸らした。

 揺れない。


「それだけではありませんわっっ」


 ユキメ族が誇る、伝統と格式高いハーレム宮殿パレス内蔵。

 ジャングル風呂も含めた、十二種類の浴槽。

 サウナ風呂はもちろん、塩サウナ、更には岩盤浴まで設置。

 メイドチョーである、ヤマ自ら行うマッサージ。

「たまに力の加減、まちがうんだよね~」

 地球人類由来の、全自動マッサージチェア。(10分100円)

 入浴後は、牛乳、コーヒー牛乳、さらには、フルーツ牛乳まで選びたい放題。

 安っぽいオリジナルグッズが心をえぐる。

 タオルは浴槽に入れたらだめだぞ~


「……この世に“パライソ”を再現したと自負しております……」


 ユキノが、完璧なカーテシーを見せた。


「姫様っ、かっこいい~」

 ヤマが、後ろで万歳している。


『……健康ランド……か?』

 キバがぼそりと日本語でつぶやいた。


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