第七十二話、救出
キバが大広間から出た。
アルラウネの魅了の力が薄れたのか、ボー然と立ち尽くすハーレム要員たち。
「キバさまあああ」
呼ぶ声が聞こえた。
「こっちか」
キバが声の方に走り出す。
「ユキノオオ」
「キバ様っ」
廊下を走り、いくつかの角を曲がり、ついに見つけた。
周りを真っ白に染めたユキノが立っていた。
「ユキノッ」
「キバさまっ」
キバは、ユキノを痛いくらいに抱き締める。
「ずっと、呼んでくれたね」
「はいっ」
キバがユキノの顎を指で上にあげる。
顔を寄せた。
「んっ……」
「……っ」
「……ん」
プハア
「キ、キ、キバさまっ」
キバが、腰が抜けてて立てないユキノを横抱きにする。
「帰ろうか」
「はいっ」
エクストラコールドに向かって走り出した。
◆
「かはあ」
ミケが口から血を吐いた。
ネコヒゲ無しの量子化で、何度も自分の体が無くなる感覚を受けた。
体にかかる負担が大きい。
「「シールドビット、限界が近いですニャ」」
ケットシー・マークツー本体もボロボロになりつつある。
R-66は、首だけしか残っていない。
「待たせたっ」
キバだ。
エクストラコールドが、逆噴射。
大木から離れた。
「離脱しようっ」
しかし、まだ黒々とした蜂の群れが沢山いる。
「どうするっ」
その時、蜂の大群の向こう側に、ポツリと宇宙の海面が波立った。
コルトバ女王、ユキナミ座上、”ガルム級ハーレム要塞、ハティ”がダイブアウトしてきたのである。
「来たぞっ、コルトバ宇宙艦隊全艦だっ」
女王ユキナミが叫ぶ。
次の瞬間、数千の宇宙軍艦が一斉にダイブアウト。
宇宙の海面が津波のように見えた。
「コルトバ星人から、オトコを奪うということがどういうことか教えてやろう」
艦砲の一斉射で、宇宙あしながバチを殲滅。
キバたちを救出の後、まさかりを担いだスノウオーガーの一団を強襲揚陸艇で、アルラウネに乗り込ませる。
宇宙樹アルラウネは、まさかりで直接切り倒された。
アルラウネがバラバラにされる中、小さな若木を持った禿頭のマッチョダンディ―二人が、ひそかに飛び去ったのである。
◆
遥か遠くの辺境惑星。
二人のマッチョダンディーが若木を大地に植えている。
「これでよし」
「しかし、兄上。 これでまたアルラウネ様を小さなころから育てられるのだな」
「……そうだな、サム〇ン」
二人のマッチョダンディーが穏やかに若木を見つめる。
若木には、小さな白い花が咲いていた。




