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第七話、イワシカマス

 エリンステーション内である。


 ウ~、ウウ~~、ウ~、ウウ~~


“非常事態宣言発令”


 街頭にある表示板やテレビが一斉に変わった。


 スピーカーからは大音量で、

「ジェーンに伴って、イワシカマスの大群が急速接近中。 一般市民の方は、建物内及び避難所に避難してください」

 と繰り返される。


 ジェーンは、宇宙クジラ、イワシカマスは、肉食の宙間魚類(SAKANA)である。 

 人を襲う。


 建物の窓に、分厚いシャッターが下りた。

 ぽつぽつと黒い点が見え始める。

 漁船と辺境パトロールの巡航艦の攻撃から逃れたイワシカマスが、短距離ダイブジャンプでステーション内に入りつつあった。



 酒場だ。

「野郎どもっっ」

「緊急ミッションだっっ」

「一般人の保護っ、イワシカマスの排除っ」

「しっかりかせぎなっっ」

 酒場のおやじが大声を上げる。


「おうさっ」

「いくぞ~」

 酒場のゴロツキが、自分たちの武器を手に街へ飛び出していく。


「ヤマっ」


「ハイハイ~」

“お色直しよ~~”

 解説しよう。

 ヤマは、ユキノの母船から、0,05秒で装備を転送、“お色直し”するのである。


 腕を大きく回した、変身ポーズ。←0,05秒

 白いシルエット姿の裸身が見えるかもっっ!?


 侍女服の上に、白い胴鎧。

 胴鎧から、蛇腹状の前垂れが膝近くまで下り。エプロンのように見える。

 白い長手袋を思わせる手甲。

 膝上まで覆う、ピンヒールの脚甲

 頭には、鋼鉄製のホワイトプリムを乗せた。


「とおっ」

 キメッッ


「ヤマさん、かっこいいっっ!!」

「ボクも」


 ドブシュッ

 シュコウウウウウ~ 

 

「ハウッ、ハウンッ、ハフウウ、ハアアン」

 

 『大漁』と書かれたハッピに、サラシ、ふんどし姿のいなせな男衆姿の監察官が、()()に変態する。

 辛うじてキョヌ~を隠している、サラシ。

 下乳の攻撃力でスカウターが爆発した。

 ふんどしっっ(……越中がいい?……)


 色っぽい声と肢体に、周りのゴロツキの視線は釘づけだ~~~~

 あ、一人、イワシカマスに吹き飛ばされた。


 メタリッカ星系人の種族特性(スキル)は、“変態”と“空間収納”である。


 ズルリ

 ズウン


 ムーンチタニウム製の巨大なツーハンドアックスを、引きずり出した。

 見るからに、切れ味が良さそうだ。


「ヤマさん、使って下さい」

 もじもじしながら渡す。


「ははっ、いいのか~い」


「どうぞ」

 恥ずかしそうに、片手で差し出した。


「ごっきげんだぜ~~~~」

 ヤマは、巨大な斧を片手にイワシカマスの群れに飛び込んで行った。



 イワシカマスを、キバは掌底、ユキノは凍らせて、並んで倒している。


「キバ、東地区が手薄らしい、“オマメさん”を出せるか?」

 酒場のおやじが、ショットガンを撃った。


「いいのかっ」

 掌底を放つ。


「武装はされてないぞ、東には保育園があるんだっ」


わたくしも参りましょう」

 三匹一遍に凍らせる。


「分かった」

 二人が、格納庫に急いだ。


『お帰りなさいませ。 旦那様』

『地図と、付近のイワシカマスの位置は把握しております』

 膝の間のモニターに表示される。


 カチ、カチ、カチ、カチ

『ふっ、ウン、あんっ、そこは』

『起動しました』

 キバがスイッチを目まぐるしく操作した


 フウウウウウウ


 ユキノがゆっくりと息を吐いた。

 近づいてきていたイワシカマスを、白い吹雪が覆う。


「キバ様っ」

 後ろの席にユキノが乗り込んだ。


“二足歩行形態だ”

 両手を地面について機体を持ち上げながら、“豆狸”が二本足で立った。


『格納庫開けます』

『御開帳~』


 シュパアアア


 背中と脚に着いた熱核ホバーが赤く光った。


「ホバーで行く」

「ユキノ、頼むっ」 

 操縦席を開けたまま、ホバーで移動する。    

 それ用の小さな風防がついていた。


「!! 分かりましたわっ」

イワシカマスを、凍らせながら移動するのだ。


『東地区に行く最短ルートを表示、地図上に人を追加表示します』


「分かった、助かる」

 “オマメさん”は、稼働時間約600年の経験豊かな人工知能なのだ。


 逃げ遅れた人を助けながら、東地区に向かった。

 

 保育園の近くまで来た。

「あれっ」

 ユキノが指をさす。

 

 保育園の運動場に、逃げ遅れた児童と先生がいる。

 今にもイワシカマスに食べられそうだ。


「間に合えっっ」

 一瞬、高速移動形態に変形。

 

 ドオンッ


 間に割り込んだ。

 イワシカマスを、腕につけられた盾で吹き飛ばす。


「早く、建物の中へっ」

 

 先生が児童を抱えて、建物に飛び込んだ。


「凍れっっ」

 ユキノの目が紅く輝く。


 イワシカマスの群れも含めて、運動場が氷の白に染まった。


『付近に動体反応、ありません』


「ふううう」

 

 キバが、息を吐いた。

 

 付近を移動しながら、イワシカマスを退治していった。


 しばらくした後、騒動は収まった。



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