第六十話、出撃
豆狸五型、改修済み。
フェリシアは、豆狸五型のチャイルドシートに座った。
シートの後ろには、幅20センチのカメラやセンサーのついたリングが出ている。
モーションキャプチャーユニットだ。
重力制御された、その輪の真ん中にミケが立った。
安全用のトーションバーがミケの背中に接続される。
「マスター、豆狸五型起動、思考同期します」
フェリシアの髪がスルリと伸びる。
シュレディンガーを利用した思考同期コントロール。
”NEKOHIGE”システムである。
ミケは、フェリシアのサポートとモーションキャプチャーユニットで、操縦桿を握らずに機体の操作が可能になった。
「ふむ」
ミケが左腕を伸ばし、手のひらを開け握った。
ギュギュン
ラウンドモニター越しに機体の左手が同じ動きをする。
ネコミミとネコシッポも動かした。
機体につけられた、ネコミミとネコシッポも忠実に動きを再現する。
パタパタ
「いい仕事してるじゃねえか」
「マスター、豆狸五型、出撃準備完了しました」
「フェリシア」
「はい」
「もうお前は俺のものだ、豆狸五型じゃねえ」
「”ケットシー、マークツー”を名乗れ」
”ケットシー”
ミケの実家、ナマリブシ侯爵家のナマリブシ忍軍。
”ケットシー”は、ナマリブシ忍軍のカシラが乗る特別な機体にしかつけることが許されない名前だ。
「!! はいっ、機体ネーム変更しますっ」
フェリシアと豆狸五型は、この瞬間にナマリブシ忍軍の、”旗機”となった。
腰には、真横に佩いた、名刀”鰹鉋”
両腕には曲線を帯びた、シールドブースターユニット。
頭は、口元のマスクとカメラをおおう透明シールドで顔のように見える。
ネコミミ。
二股のネコシッポ。
ゴーロゴーロ(マスター、これより、高速猫言語の使用を推奨します)
ゴーロゴーロ(ふふ、了解した、各部再チェック)
ゴーロゴーロ(了解。 各部オールグリーン、異常なし。 ミケさま、私のマスターのなってくれてう
れしいですっ。 これからもよろしくお願いします)
ゴーロゴーロ(……いい子だ。 これからもよろしくな)
ネコ極まれりっ。
「発進位置に移動してください」
管制のイナバ・ヨの声がする。
エレベーターに乗った。
「リフトアップ」
いまさらだが、エクストラコールドは、丸みを帯びたム〇イのような形をしている。
ムサ〇の本体後部、斜め下にエレベーターはケットシーマークツーを押し出した。
船体に沿って、重力で出来た仮想のカタパルトが出来る。
光で出来た矢印が並んだ。
「出撃してください」
「無事を祈ります」
「ミケ・ナマリブシ。 豆狸改め、ケットシーマークツー出撃する」
シグナルが赤から青へ。
ズドオオオン
機体が重力カタパルトを駆けた。
◆
「ワシも出るかの」
ドワーフのドワイトと愛機、”ミスリルアックス”である。
球形の機体に、長い腕。
カメラは機体に埋め込むようについている。
機体内は高出力のバーニアの塊だ。
頑強なドワーフにしか操れない。
さらに、機体の各所に投擲用のハンドアックスが多数つけられている。
「腕が鳴るのう」
前代のコルトバ女王シラユキの親衛隊”セヴンス”。
その近衛隊長を務めた古強者であった。
「出撃してください、師匠」
「ご武運を」
「行ってくるぞい」
ミケからむかって、反対側の船体を機体が駆けた。
◆
「アンッ、豆狸、起動します」
カチリ
キバが起動用のつまみをひねった。
三度オマメさんをイカせ、主電源を起動。
「キバ様、”簡易永久凍土装甲”、付与しましたわ」
副操縦席に座ったユキノが言った。
両腕のシールドブースターユニットの表面が白く凍結する。
「ありがとう」
背中には、二本のバズーカ。
腰にはショットガンとチェーンマイン。
両ひざ横には、シュツルムファウストが二本。
強襲装備である。(けんぷう)
「ユキノ様、キバ様、御武運を」
「おうっ」
「エクストラコールドはまかせたわよっ」
ミケの後に続いて出撃する。
◆
「ふふふ、行きますよ~」
一般のエアロックが静かに開いた。
銀色の長い髪。
175センチくらいの身長。
”R-66”と書かれた白い布が縫い付けられた、”スクール水着”。
床を蹴り、大宇宙へ踏み出した。
今戦場に、”全生命体完全殺戮用戦闘機械群”の端末”R-66”が、鮮やかなクロールで泳ぎ出たのである。
本小説は、激しい戦闘でも死人は出ない仕様です。




