第五十八話、出港
「マリア・マクレガーを無事に返してほしくば、”317、小惑星帯”に来い」
「サンダー01と、豆狸、五式をエクストラコールドに乗せ、一隻だけでだ」
ガラリア軍から酒場に届いた通信である。
映像はなく横線のノイズだけだった。
「フェンリルウールヴをステルス状態で出します」
ミユキとハロクが言った。
長年培われたミユキの、”スニーキングスキル”は伊達ではないのである。
「監察官さんとヤマさんは、フェンリルウールヴに乗って下さい」
ミユキもヤマも妊婦だ。
防御力の高い重軍用艦、”フェンリルウールヴ”に乗った。
「いざとなったら、僕の、”ピグマリオン”を出すよ」
監察官の攻撃型戦闘艇、”ピグマリオン”。
動力源は、圧縮されたブラックホールだ。
単艦で惑星を圧壊させることが可能だが、攻撃力が高すぎる。
監察官という立場からも出しにくい。
「ソウダマルで、出ますニャ」
ミケは、捕まっているマリアの近くに潜伏しているらしい。
「マリア様を、ミケ様とソウダマルで救出しますニャ」
ミケはクノイチ、ソウダマルは、隠密粒子を装備したニンジャ艦である。
エクストラコールドには、キバとユキノ、フェリシアとドワイト、R-66とイナバ五姉妹が乗った。
当然エリンステーションには、ガラリア軍のスカウトが残っている。
先にフェンリルウールヴとソウダマルが、ガラリア軍の監視とついでに、エリンステーション宇宙港の管制からも気づかれずに出港する。
「心配するな、お前の母ちゃんは必ず助けてやる」
キバがフェリシアの頭を撫でる。
「ええ、大丈夫ですわ」
ユキノがフェリシアの手をつないだ。
「コルトバ本星も動き出したぞい」
ドワイトだ。
「うんっ」
……マリア母様……
泣きながらもフェリシアが答えた。
エクストラコールドが出港する。
◆
ガラリア軍、軍艦、文福茶釜改、艦内。
「ここだぜ、親友、面会は手早くな」
プシュン
マリアが監禁されている部屋が、音を立てて開いた。
「あ、あなたは、ミケさん」
マリアが声を出した。
「しー」
ミケが口の前に指を立てる。
「今、俺の部下が救出しにこちらにむかっている」
「脱出用のハッチまで行こう」
艦内に到着してから調べた。
「おいおい相棒、その女をどこに連れて行くんだい」
「いやあ、隊長に連れて来いって言われてさ」
マリアの手錠を持ち引っ張る。
「そうか、ご苦労なこったな」
「まあな」
「行こう」
マリアに小さな声で言う。
兵士の前を通り抜けた。
脱出用のハッチに向かった。
◆
その頃、エリンステーションの近くに、一隻のハーレム船がダイブアウトしていた。
歓迎用迎賓館併設型外交用ハーレム艦、”ヴァルハラ”である。
「おーほっほっほ、来ましたわ」
ブワリ
黒い立て巻きロールが無遠慮に広がる。
コルトバ星第二王女、コユキである。
彼女は、ユキメ族らしからぬ華やかな外見と、社交的な性格を生かし外交官をしているのだ。
かなり優秀。
「可愛いよ、マイハニー」
コユキハーレムのマスター、アルフレッドだ。
コユキの腰に手を回し引き寄せる。
彼は隣の大国の第二王子。
外交官としてきたコユキにひとめぼれし、口説き落とした過去がある。
溺愛中だ。
ちなみに、取り巻きの美女五人は他国の優秀な殿方を、”ヴァルハラ”(←コルトバ星)にかっさらうための、バルキリー(←ハニトラ要員)である。キリッ。
「脳筋のガラリア帝国など恐るるに足りないわっ」
コユキは胸を張った。
豊かな胸が揺れる。




