第五十七話、お呼びミッション
「待ってくれよ、親友」
ミケが、ガラリア軍の強襲揚陸艇に手を振りながら走りこんだ。
「だれだっ」
パアンッ
ミケがガラリア兵の鼻先で手を叩く。
二股の分かれたシッポを複雑かつしなやかに動かした。
「……なんだ親友、すぐ出発だ、いそいでのれよ」
ガラリア兵がミケを手招きする。
「ありがとうよ、親友」
ミケがニヤリと笑う。
ネコマタ族の”種族特性、ネコダマシ”だ。
二股のネコシッポで、相手に強力な暗示をかける。
「んん、親友、いつのまにネコミミを生やしたんだい?」
「ふふふ」
二本のネコシッポがミケの背後でしなやかに揺れた。
強襲揚陸艇が装甲車が走り込んだ後部ハッチを閉じる。
揚陸艇がエリンステーション宇宙港管制の警告を無視して出港した。
◆
「エリンステーションに目標がいるだと」
「はっ、サナダ少佐」
ピクピク。
ナカムラのネコミミが動いた。
隣の部屋の話声だ。
キャットイヤ~~
キャットイヤーは地獄耳、である。
ガラリア軍の尋問室にナカムラが捕まっていた。
ネコタロウ・ナカムラ。
過去、第三局のウルトラエースであり、ネコ(スキル)を極めた男だ。
彼の祖母は犬系獣人であり、その血からネコでありながら勤勉かつ生真面目。
ネコを修業したネコマスターである。
彼の存在が、”猫獣人強化計画”を発案させたのだ。
豆狸の元初機(←オマメさんのこと)に無事にたどり着いたか。
元初機は、コルトバのハーレム所属。
たとえ、マリアの卵子を元に単性生殖で創られた生体ユニットでも、
コルトバ星人が、子供を見殺しにすることは絶対にありえない。
ナカムラは口角をかすかに上げた。
◆
”おさないコネコを救えっ!!”
”女王様とお呼び”の緊急ミッションである。
ユキノたちは、フェリシアの母親であるマリアが連れ去られたことを、即座にコルトバ本星に連絡。
本星から”お呼びミッション”が発令された。
「ミケ様がマリア様の近くにいてくれるから大丈夫ですニャ」
クロがフェリシアをなぐさめる。
「来たぞ、この子がコネコか」
ドワーフのドワイトだ。
元先代女王シラユキの近衛隊、”セヴンス”の隊員である。
”お呼びミッション”を見て、彼の愛機、宇宙鉱山採掘用人型機、”ミスリルアックス“と共に駆けつけてくれたのだ。
「ドワイトおじさま」
ユキノが頭を下げる。
しばらくした後、ガラリア軍から酒場に通信が入った。
◆
「どこに向かっているんだ、相棒」
ミケが揚陸艇のコックピットで、隊長に聞いた。
「なんだ、わすれたのか、相棒」
「317,小惑星帯だよ」
「ほら、見えてきた」
強襲揚陸艇のコックピットの窓から見える。
ガラリア軍、特殊艦、”穏神刑部”一艦と、巡洋艦、”文福茶釜改”級二艦が、小惑星の影から姿をあらわした。




