第四十九話、スニーキング
「流石ですね」
イナバ・ミが小さく言った。
彼女は、エクストラコールドの通信およびレーダーを担当している。
レーダーの範囲ぎりぎりをついてくる、”フェンリルウールヴ”には気づいていた。
イナバ五姉妹にも伝えてある。
「見事な、宇宙スニーキング術ですね」
エクストラコールドの2倍近いフェンリル級重戦艦である。
電波封鎖や灯火管制。
ステルスコロイドに、バーニア光を極力見せない等、あらゆる手段を使っている。
手慣れていた。
しばらくした先、この技術が生かされる時が来る。
キバとユキノ、ヤマ以外、全員(R-66も)、”フェンリルウールヴ”に気付いていたのではあるが。
場所は、惑星アタミの軌道ステーション。
フェンリルウールヴが、隣のドッグに入って来た。
「あらっ、あれはミユキお姉さまの船ですわ」
VIPルームの窓から見えた。
「……偶然ね」
ミユキがモニター通信に出る。
背後で気まずそうにハロクが頭を下げていた。
「お姉さまも、新婚えんそくですか?」
コクリ
ミユキが頷く。
「じゃあ、一緒に、アタミを回りましょうっ」
ユキノが元気よく言った。
コクリ
ミユキがもう一度うなずいた。
ミユキのスニーキング行為にユキノは気づかない。
◆
”惑星、アタミ”
今や、太陽系は、赤色巨星化した太陽に飲み込まれて存在していない。
地球人類は、月や衛星を巨大な宇宙船に改造して、太陽系から避難していた。
そのとき、地球の地形や生物のDNA情報などを収集している。
そのデータを使い、別の星に新たな、”地球”を創る。
”ファーストビル(初まりの土地)計画”である。
”惑星アタミ”は、その計画により、惑星開発公社が、惑星改造した星であった。
特に、首都アタミは、地球時代の熱海を忠実に再現されていると言われている。
◆
「さあ、行きますわよ~」
地上に降りる、連絡船に、ユキノハーレム一行とミユキとハロクが乗り込む。
連絡船の後ろには、空き缶が沢山紐に繋がれて吊るされていた。(←ブライダルカーというらしい)
特殊な技術で、宇宙でもガラガラと音が出る。
「空き缶っ?」
キバだ。
「おや、キバ君は知らないのかい」
「古い地球の習慣で、空き缶の音には、魔除けやゲン担ぎの意味があるらしいよ」
新〇さんいらっしゃいの、か〇らさ〇しの女装をした監察官が言った。




