第四十七話、バネイナットウ
ユキノは、キバが大好きである。
最近、キバの世界、地球人類の勉強をしていた。
「さて」
『え・ん・そ・く』
「ですわよ~」
『』はニホンゴ―である。
つたない発音だ。
”えぃんそく”は、旅行のことですわっ
お八つは三百万円まで、バネイナットウはお八つに入りませんわっ
お八つとは、八つ時(グリニッジ宇宙天文台の宇宙標準時刻、午後三時ころ)に食べる間食のことですわよ~~
フッフ~~ン
でも、”バネイナットウ”てなんでしょう?
「あ、キバ様っ」
ニコニコ
「”バネイナットウ”ってなんですかっ」
「ばねいなっとう??」
キバが怪訝な表情を浮かべる。
ねばい納豆?
パネイ(すごい)納豆?
「細長くて黄色いらしいですわっ」
「???、すまん、見当もつかない」
「そうですか……、もう少し調べてみます」
「新婚『え・ん・そ・く』は楽しみですわね」
ユキノは、えんそくの準備をしている。
えんそく用のリュックサックの中には、
『べんとう』
『れじゃーしっと』
『三百万円分のお八つ』
それから、
『黄色いタクアン』(←”バネイナットウ”ユキノビジョン)
が入っていた。
切られていない、一本丸ごとの黄色い沢庵……。
キバは、ユキノのリュックサックからのぞくそれを見て、何とも言えない顔をした。
ユキノハーレム、新婚旅行のため、惑星アタミへ出発。
◆
「エクストラコールド、各部ハッチ閉鎖」
「予備発電機から、主発電機へエネルギー繋げ」
イナバ・ヒだ。
ウサギミミ、侍女服。
白髪、肩まで。
伝声管に向かって言う。
ブリッジ中央、躁舵輪の前に立っていた。
「接続確認」
「主発電機起動」
「主発電機をダークマター推進機関へ接続」
「ダークマター推進機関、起動」
ゴゴゴゴ
「起動しました」
レバーやツマミを素早く押す。
機関士席のイナバ・フである。
ウサギミミ、侍女服。
白髪、ショート。
「各部、気密チェック」
「チェック終了、オールグリーン」
イナバ・フが、目の前のモニターをチェック。
「永久凍土装甲の励起をお願いします」
「わかったわ」
船長席に座ったユキノだ。
船長席の装置を通して、永久凍土装甲を励起。
真っ白い船全体が、少し青みがかる。
氷山の青だ。
「エクストラコールド、出港準備完了」
「もやい(ロープ)を外せ」
「こちら、コルトバ船籍、ハーレム船、”エクストラコールド”、出港許可願います」
通信席のイナバ・ミが無線に聞いた。
「こちら、エリンステーション管制、港内の空気を抜きます」
「十分ほどお待ちを」
シュウウウウウ
空気が抜かれていくにしたがって、港内のライトが、青から黄色、赤に変わった。
「港のゲートを開きます」
音も無く(真空中)、巨大なゲートが開いていく。
星空が見えた。
下には、青い惑星”エリン”。
「ゲート全開、出港どうぞ」
「ありがとう。 エクストラコールド、微速前進」
ゆっくりと港を出る。
「良い旅を」
エクストラコールドは、一路、惑星アタミへ出発した。
イナバ・ヒ:操舵士
イナバ・フ:機関士
イナバ・ミ:通信士 白髪、ロングポニー。
イナバ・ヨ:管制士 白髪、ショート、ソバージュ。
イナバ・イツ:整備士 白髪、ツインテール。
である。
「あらっ」
オマメさんだ。
エダ(発信機+盗聴器)がついてる
誰かに盗聴されているわ
素早く逆探知した。
あらあらあら
「ふふふ」
オマメは、逆探知した先を確認して、悪戯っ子のように微笑んだ。




