第四十四話、本拠地
「ここでいいのか?」
酒場の親父が聞いた。
「ここがいいんだ」
キバが答えた。
宇宙冒険者は、普通活動の本拠地を決める。
キバは本拠地は、ここ(エリンステーション)がいいと言った。
「大きいステーションに行ったら、もっといい仕事が受けられるぞ」
「いや……」
キバがコールドスリープから目覚めてすぐ、宇宙共通語もしゃべれない時、
「旧日本軍の軍人か」
と言って、オヤジ自らおにぎりを握ってくれた。
キバはその味を一生忘れないだろう。
「それに」
キバは、仕事の紙が張り出されている掲示板を見た。
「ぼうけんしゃのおじちゃん、おねえさん、ありがとう」
子供がクレヨンで描いた絵が張られていた。
ロボットと、白い女の人である。
イワシカマスの時に助けた、保育園からの手紙だ。
視線に気づいたオヤジが、
「そうか」
とひとこと言った。
ゴッゴッゴッゴッゴッ
プッハ~~~~
「くううう」
ヤマだ。
特大ジョッキのビールを一気に飲み干した。
「あはははは」
「あいかわらずいい飲みっぷりだねえ」
「ご祝儀だ、一杯奢るぜえ」
ごろつきたちだ。
「ありがとお」
テーブルには、大きめのソーセージと、フライドポテトである。
パリッ
風呂上がりの浴衣の女装をした、監察官がソーセージを音を立てて食べる。
肉汁が口の中に溢れた。
R-66もそっとイスに座る。
隣で、ミケが刺身の小皿で、酒を飲んでいた。
長靴族夫婦は、おかかご飯である。
「キバ様も食べましょう」
隣にユキノもいた。
「ああ、わかった」
ユキノの隣に座り、ビールを注文した。
ビール(ラガー)は、オヤジが醸造した地ビールだ。
ソーセージもポテトもオヤジ自家製である。
他全て、オヤジの手料理である。
キバたちは酒場に併設された天然温泉に入って、風呂上がりだった。
この酒場は、”宇宙ミシュランの五つ星”がつけられている。
(壁)ドオオオオン
「婿さんっ」
ヤマだ。
「はいっ、嫁さんっ」
監察官である。
「部屋に行くぞお、続けえ」
「And my rifle my god oh my god」
ザッザ、ザッザ
「And my rifle my god oh my god」
ザッザ、ザッザ
(吹き替え:ハー〇マン軍曹)
二人は居室へ行った。
酒場では見慣れた風景になりつつある。
本拠地を決めるのに、朝のラジオ体操があるからということを、キバは誰にも言っていない。




