第四十話、インドラ橋
(元ネタを)おわかりいただけただろうか?
「どれ、ユキノの婿殿の、武威を見せてもらおうかな」
シュラがにやりと笑う。
近くのテーブルに、丼を置いた。
食べ終えたのだ。
「これからですか?」
キバも丼を置く。
「そうだよ」
「表に出なあ」
「あっ、食べてからでいいよお」
シュラが、丼を指差す。
スノーオーガーは、略奪婚である。
「私から、ユキノを奪ってみな」
二人が、結婚式場の外に出た。
地下の大洞窟だ。
「ヤマの次は、ユキノかあ」
「めでたいことが重なるのう」
「ユキノの相手は、誰だあ」
出席者たちが、やんややんやとついてくる。
カイセンドンと酒が進む。
「キバ様っ、頑張ってくださいましっ」
ユキノが両手をぎゅっと握った。
キバは、無言でグッと親指をあげた。
「ほう」
スペースカラッテ―の使い手と聞いていたが
シュラが両手を前に構えた。
彼女は、ヤマと同じように、投げ技主体のインファイターだ。
キバは半身で拳を前に出している。
自然体だ。
「いくようっ」
シュラが強引に前に出る。
頭二つ分くらいの身長差だ。
おおい被さるようだった。
パパン
キバの正拳づきだ。
左右の拳が、同時に出ているように見える。
「まだまだあ」
シュラが前に出る。
なっ、顎に二発入れたはずなのにっ
キバが驚愕の表情を浮かべる。
「インドラ~橋っ」
キバを強引につかんだ後、後ろにブリッジ。
腰の強烈な突きで、上空に打ち上げた。
「からの~、ダランキャッチッ」
ドオオン
落ちてくるキバを空中でキャッチ。
地面にたたきつけた。
ガハアッ
キバがよろよろと起き上がる。
中野式、”超絶受け身”が発動していなければ、意識がなかった。
「立ったっ」
シュラが驚きの表情を浮かべる。
「このっ」
シュラのガンジスDDT。
フラフラしながらも、キバがかわす。
「これでっ、どうだあ~~~」
投げ間合いで、レバー一回転、パンチボタン三つ。
ピッカー―――ン
「シュラの大技だああ」
「ブラフマーーーーーボムッ」
キバを掴んだまま、縦に高速回転、上空に飛び上がった。
もう少しで、天井にとどきそうだ。
やばいやばいやばいっ
キバが必死にシュラの脇腹に拳を当てる。
「ふうう、ふっ」
バキイッ
接触状態からの打撃
ワンインチパンチ、”寸勁”である。
地面に叩きつけられる寸前に、投げから逃れる。
グウウ
キバは、地面をゴロゴロと転がっていった。
ハアッ、ハアッ
ふらふらと立ち上がる。
「……立った……」
静まり返った会場で、誰かが言った。
「ふっ」
「私の負けだっ」
超必殺技を耐えられた挙句、
イタタタタ
こりゃあ、あばらが二三本折れてるなあ
わき腹を抑えながら、シュラがその場で座り込んだ。
「勝者、キバッッ」
オオオオオオオ
「キバ様っ」
ユキノが、キバの胸に飛び込んだ。
「……私を、奪ってくださいました……」
ユキノがキバの耳元で小さくつぶやく。
「おう」
キバが答えた。
ユキノはユキメの王族。
一年くらいの婚約期間が必要だ。
キバとユキノが正式に婚約した。
◆
「ふふふふ、お~ほほほほほ」
「これでっ、年頃の王女のハーレムが揃いましたわっ」
黒髪の縦巻きロールが、周りに無遠慮に広がる。
「”女王位継承権争奪戦”の開幕ですっ」
窓の外は温泉湖。
カカアッ
ドオンッ
何故か、KAMAKURAドーム内に雷が鳴り響いた。
地下の大洞窟はまだまだ広い。




