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第四話、オマメ

”日本沈没”と、”日本以外、全部沈没”というSF作品がある。

「ボクの船から運んでくれた?」

 アンドロギュヌス監察官が、酒場のおやじに言った。


「おお、運んどいたぜ」

 酒場の裏は、巨大生物の素材や、武器などを入れる格納庫になっている。

 有料で使用が可能だ。 


 宇宙には、”バッドライフ“と言って、生命体全てを破壊しようとする機械群もいる。

 また、全”人型宇宙人類“は文化的で最低限度な生活をしなければならないと、”全文代“の憲法にもあった。

 

 長期コールドスリープから覚めたキバには、最低限の生活費と”アンドロギュヌス“のような監察官が、ついた。


「700年位前の、地球人類はほんとに混沌としていて、生き証人であるキバ君は貴重だよ~」

 無秩序に宇宙に拡散して、ほとんどがキバのように行方不明になっているのだ。

 

「ニホンゴ―の意味すら分からないからね」

「二ホンとかいう国以外、海の底に沈没して、国が二ホンに統一されたとか何とか」

「ふふふ、当時の人に聞くよっ」


「キバ君、ちょっといいかい?」


「? なんだ?」


「見てもらいたいものがあるんだ」


 キバが、酒場のおやじを見る。


「良いぜ、俺も行くから」

 しばらく店は、他の店員に任すようだ。


「あら、どちらへ?」


「姫様~」

 当然のように二人がついてくる。


 酒場の裏にある格納庫に移動した。



 格納庫には、一機の”宙間活動機“が置いてあった。

 全体的にずんぐりとしたフォルム。

 人型だが、腕と足が腰ごと後ろに回され、腰の装甲が前に倒されている。

 ”高速移動形態“だ。

 両二の腕にはフレキシブルアームを介して、巨大なシールド。

 シールドには、丸い推進器がついている。

 頭は、真ん中に大きなカメラ、それをとり囲むように小さなカメラが4つ。

 首の根元から、後ろに大きくせり合がっている。

 その下に複座型の操縦席が見える。


「零五式宙間活動機?」

 キバは、昔これの操縦者パイロットだった。

「いや、少しでかいな」 


 記録用のドローンが三機、倉庫内を舞っている。

 少し離れた所に机が置かれ、モニターが三個乗せられていた。

 酒場のおやじも含めた、四人がモニターの前に並ぶ。


「600年位前の機体だよ。 記録させてもらうからね」

 失われた文化の調査も、”監察官“の仕事だ。


「ふむ」

 キバが、操縦席に上った。

 操縦席のふちに


”重宇宙軍艦、”文福茶釜”所属、九五式宙間活動機、”豆狸マメダヌキ”、S・ヒイラギ、T・メグミ“


 と書いてある。


「九十五年式だから、五年式から90年後の機体か」


 前の操縦席に座る。

 ごちゃごちゃと機械式のメーターや、ボタンやレバーやツマミが、所せましと並んでいる。

 フットペダルは、片足に二個、計四個あった。

 前と斜めにモニターが三枚。

 膝と膝の間に小さいモニターが一枚。


「この辺は変わらないな」

「起動していいか?」

 キバが大声で、監察官に聞く。


「ニホンゴ―は大丈夫か?」


「???」

 ニホンゴ―??


 カキン


 太ももの横にある大き目のつまみを、三本の指で回した。

 メインスイッチオン。


『デーデン、さて質問です。 富士山の標高は何メートル?』

 機内のスピーカーから聞こえてくる。

 しばらく『』内は日本語です。


「え?」

 確か、ソレントの、”祖国解放砲“で丸く削られたから

『1225メートル』


『ピンポーン』


『第二門、”戦車道”を扱った国威高揚作品で、”雪の進軍”を歌ったのは?』


『え~と』


『チックタック』

 太もものモニターの数字が5から減っていく。


『ユカリさんとミホさん?』


『ブッブ~』


『第三問、改造獣人兵、”野良九郎”の階級は?』


『三等兵』


『ピンポーン』


『第四問、人型決戦兵器の内部電源の活動限界は?」


『ん~と、5分?』


『ピンポーン』


 第十問まで続いた。


「なんだこりゃ?」


 ヴブン


 操縦席のメーターの上にある、20センチくらいのステージの様なものに、着物を着て、三つ指をついた日本女性が現れた。

 立体ホログラフである。

 泣きホクロが色っぽい。


『おかえりなさいませ、旦那様』



『大和撫子か?』

 キバが思わずつぶやいた。


「ヤマトナデシコッ、地球人類の理想的な女性の代名詞ですわねっ」

「過半数が、リョ―サイケンボーというスキルを持つとか」

 ユキノが、ドローンで女性を写しているモニターにがぶり寄る。


『先の質問により、9割以上の確率で、貴方様は日本軍人であることが判明しました』

『貴官の階級とお名前を教えてください』


『木場 太一郎、軍曹だ』


『操縦者として登録しました』

『私は、九五式宙間活動機、”豆狸マメダヌキ”の支援用人工知能(AI)です』


『おマメとお呼びください』


『んんん?』


『お()()とお呼びください』


『お、おう』

 嫌な予感がする。


『おマメを、起動させますか?』


『……ああ』


『ではここを、つまんでください』

 ツマミの前に矢印のホログラフが浮かぶ。


 つまんだ。


『アンッ』


『…………』

 お前もか?

 幸い?操作はあまり変わっていないようだ。

 流れるように操作する。


 カチ、   カチ、      カチ、        

『そこですっ』『押してくださいっ』『つねってくださいい』

 カチ

『ああアアあ~』

 ホログラフの矢印が目まぐるしく移動した。


 フットペダルを軽く踏み込む。

『最後は優しく踏んで~~~~』

 

『〇ッチャウ~~~~』

 

 ドウウン


『はあっはあっ、予備発電機、励起状態に()()()()()()。』


「監察官んんんん」

 キバは操縦席から飛び出した。


「……キバ、お前……」

 酒場のおやじが、とんでもないものを見るような目で見ている。


「これが、……ヤマトナデシコ……!?」

 ユキノは、頬に手を当てて顔を赤く染めている。


「やるじゃないかっっ」

 ヤマが肩を叩いて来た。


「機械〇? 機〇姦??」

 十二単じゅうにひとえの女装をしている監察官は、いまにも注射器をぶっ刺しそうだ。


「くっっ」


「ボクじゃないよ、大体ニホンゴ―でしょ、()()()しかわかんないよ」


 女っ気のない軍艦生活だ。

 歴代のパイロットが、はい、いいえ、しか答えられないAIをここまで育てたのだ。


「消しちゃだめだよ、貴重な歴史的資料なんだから」


「ぐうう、……あと三回程、イカさないと主発電機が目覚めんっっ」


 その後キバは、三回、”おマメさん“をイカセタ。


『〇ッチャウウウウウウウ』


「私の母船(ハーレム宮殿含む)に登録するわっ」


 電子の妖精ヤマトナデシコ)がハーレムに登録された。


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