第三十六話、カッパドキア
スノーオーガーは、余り群れないので、”カッパドキア”はスノーオーガーたちの首都ではない。
「あれが、”カッパドキア”だね」
監察官が、自分の宇宙船、”ピグマリオン”の操縦席から言った。
ブリザードで視界が悪い中、補正されたモニターに、巨大な山が見えてきた。
「そうだよ、あの岩山の地下をくりぬいて、都市が出来ているのさ」
ヤマが答えた、
ブリザードが吹き荒れている中を、船は飛ぶ。
宇宙船の港は、山頂にあった。
港から、誘導ビーコンの光の線が出る。
円形の着船場に入港した。
吹雪を避けるために、屋内の格納庫に収納される。
「観光地化してるんだよね」
周りには、大型の観光船が沢山泊まっていた。
◆
”地下階層都市、カッパドキア”
スノウオーガーが、一つの岩山を掘って作った、地中都市。
都市は、三層に分かれており、
上層は、宇宙港
中層は、ドーナツ状の近代的な、階層都市
下層は、複雑な迷路のようになっている。
麓から掘っているので、下層に行くほど、昔に作られたものだ。
所々に、岩でできた隔壁がある。
”インドラの矢”伝説があるように、大昔の核戦争のシェルターだったという説がある。
が、”全文代”はコメントを控えている。
◆
船から降りた。
地熱のせいか、意外と暖かい。
「よく来たなあ」
ヤマを、もう少し大人の美人にしたような女性と、
「おかえりい」
似ているが、落ち着きのある年配の女性が立っていた。
シュラとカーリーだ。
「お母さまっ、お婆さまっ、ただいま帰りましたっ」
「元気だったかい」
ユキノが、カーリーに抱き上げられる。
「かーちゃん、ばあちゃん、ただいま」
ヤマは、シュラに抱きついた。
「はじめまして」
キバが声を掛ける。
「……ほほう」
カーリーがこちらを見た。
ゴオウ
カーリーの種族特性、”(元)オーガークイーンの威圧”が発動。
対象を威圧する。
「むっ」
キバが少し、こゆるぎした。
「ふむ」
監察官は、興味深そうに威圧を受けた。
「うっ」
ハロクは、一瞬ビクッとした。
彼の心臓は、ミユキの五年間のストーカー行為で、鍛え上げられている。
「にゃ、にゃ、にゃあ」
賞金稼ぎ(バウンティーハンター)のミケだ。
二股の尻尾が、たわしのように膨らんでいる。
へなへなと腰を抜かして、その場にしゃがみ込んだ。
「ミイイイ」
長靴族の夫婦は、お互いに抱き合って小さくなっていた。
「おっと、ごめんよお」
「濡れてきたかい」
ガハハハハハッ
カーリーが豪快に笑う。
、
「ふふっ」
シュラだ。
クイーンの威圧の洗礼を受けましたか
娘婿たちの様子に、満足そうな笑みを浮かべた。
腰を抜かした、猫系獣人の回復を待って移動する。
◆
「立派な都市だなあ」
一行は、ガラス張りのエレベーターに乗り込んだ。
都市の全容が良く見える。
都市の中層は、ドーナツ状の階層都市だ。
真ん中は、大きな”空気穴”である。
その周りを、商業施設や、ホテルが円形に取り囲む。
ちなみに下層には温泉があるが、中層は岩をくりぬいた部屋で、サウナや、岩盤浴が有名である。
「下層まで行くよ」
中層の底より、さらに深く下りる。
チンッ
エレベーターがついた。
地下101階と書かれていた。
降りた所は、広い空間になっている。
天井が高い。
ピチョン
水音がした。
端の方で、地底湖に繋がっているのだ。
「ここが、”大広間”だっ」
カーリーが言う。
はっ
監察官が、息を飲む。
スノウオーガー族の、重要なことは、ほぼすべて、この大広間で決められてきたはずだ。
ここで、”婚姻の試練”の儀式が行われることになる。




