第三十一話、鰹節
ヴィイイ、ヴィイイ
「海面固定弾、探知、ダイブワープが封じられた」
バリトンが聞いた、男性マシンボイスが言った。
ミユキの艦のAI、”NAMAHAGE”の声である。
「海面固定弾。 警察や、賞金稼ぎ(バウンティーハンター)が使う装備だね」
監察官が、コタツの中から言った。
キバとユキノ以外、”フェンリルウールヴ”内のVIPルームでくつろいでいる。
温泉あがりだ。
VIPルームの前にある、メインモニターにネコミミの女性が大きく映る。
「見つけたぞ、宇宙海賊、”愚者と踊る人形”っ」
170センチくらいの身長。
ミケ柄のネコミミがピコピコと動く。
「どちらさま?」
浴衣の半纏を羽織ったミユキが聞いた。
コタツから半身だけ、身を伸ばした体勢である。
「賞金稼ぎ(バウンティーハンター)、ミケ・ナマリブシだっ」
二本の尻尾が、背中で揺れた。
賞金稼ぎの身分証明書のカードを見せる。
「ネコマタ星人だね、優秀なシノビやクノイチが多いんだよ」
監察官が、お茶をすすった。
「そちらの宇宙海賊、ハロクを引き渡せ」
「大人しく、渡さないと攻撃するっ」
「周囲に金属反応なし、宇宙船が探知できません」
優秀なAIのオマメさんが報せる。
「あ~、”隠密粒子”だねえ」
「R-66はいる?」
「ここにいますよ~」
「生体用レーダーで、有機物の探知できたよねえ」
「大丈夫で~す」
R-66が、オマメさん経由で、”エクストラコールド”からレーダーを作動させる。
「ありました、分析結果が、鰹節と出てますけど???」
「そりゃあ、食料装甲、”カツオブシ”を使った船だからね」
カツオの女装をした監察官が言った。
◆
“食料装甲搭載型宇宙艦、ソウダマル”
鰹節は、宇宙一堅い食べものである。
その性質を利用した装甲が“食料装甲”だ。
ネコマタ星系に生息する、宙間魚類、”宗田鰹、タイタン種”がよく用いられる。
なだらかな曲線を描いた艦で、薄い茶色の装甲が木製のように見えるのが美しい。
ちなみに、食料装甲は、”クルミ”や、”硬パン”がある。
いざとなったら非常食にもなる。
ニンジャをたくさん有する、”ネコマタ星人”向けの装甲だ。
◆
「居場所がばれた」
「仕方ない、”ケットシー”で直接乗り込むよっ」
”長靴族”の部下に命令した。
「了解だニャ~」
130センチくらいの長靴を履いたネコが答える。
二足歩行の猫だ。
ミケは、隠密に特化したクノイチ機、”ケットシー”に乗り込む。
全高、7メートル。
猫耳、猫尻尾のついた、クノイチの姿が模されていた。
ソウダマルの下部カタパルトから発進する。
「キバ君? 宙間活動機がそちらに向かってるんだ」
「オマメさんを出せる?」
監察官が、腕の通信機に言う。
キバとユキノは、無性にジャングル風呂に入りたくなって、エクストラコールドにいた。
「出せるぞ」
キバが答える。
「私も行きますわ」
ユキノだ。
オマメさんは、キバの機体、九五式宙間活動機、”豆狸”のサポートAIである。
最近、両腕のシールドに試作の”永久凍土装甲発生機”がつけられた。
ユキメ族が直接付与する必要がある。
ユキノがついていく理由だ。
「いくぞ」
キバが”豆狸”の前席に座った。
「はいっ」
後席はユキノである。
ちなみに、ラケーテン・バズとヒートサーベル、拡散ビーム砲の”09”装備だ。(どむう)
エクストラコールドの格納庫から、飛行形態で飛び出した。




