第三十話、エインヘリアル
”フェンリルウールヴ”に、百一体のメイド(アンドロイド)が来た。
ユキノのハーレム船、”エクストラコールド”の二倍の大きさを誇る、重ハーレム艦だ。
維持するのに、丁度いいくらいである。
「んん? 一人の時はどうしてたんだ」
キバがふと思いついた。
「エインヘリアルを…、出していました…」
ミユキが無表情に言った。
「エインヘリアルッ、ユキメの王族の超レア、種族特性だね」
ヴァルキリーの女装をした、監察官が言った。
◆
“エインヘリアル”
ユキメの王族にのみ現れる、レア、種族特性。
自分とそっくりの分身体を作り出す。
意識は同調しており、実体である。
ミユキは、七体、分身を作ることが可能だ。
通常は、三体くらいなのでさらにレア。
◆
「行く先々にミユキさんがいて、簡単に拉致されたのは、ミユキさんが一人じゃなかったからなんですね」
ハロクが納得した顔で言った。
ミユキがコクリとうなずく。
「流石っ、お姉さまですわああ、意識同調ですわあ」
「一人、酒池肉林、いえ一人、乱交パーティーで……」
もがもが
ユキノは、キバに口を塞がれた。
「……ハロクが望むなら……」
ミユキが俯く。
ハロクは顔を真っ赤にして俯いた。
「エインヘリアルかあ」
監察官だ。
ミユキが、割烹着にほっかむりをした分体を、七体出した。
廊下や部屋を掃除し始める。
R-66が、そっと掃除しているエインヘリアルに混じった。
神話レベルのレア、種族特性なんだけどなあ
掃除とストーキングかあ
ついでに拉致も
掃除するエインヘリアルを見ながら、監察官はしみじみと思った。
◆
「よろしければ、どうぞ」
ミユキが無表情に言う。
特に急ぐ旅でもないのだ。
ユキノたちは、重ハーレム艦、”フェンリルウールヴ”内にある”温泉街”に来ていた。
各地の名湯、秘湯が再現されている。
地獄巡りで温泉卵を食べたり、温泉をはしごして楽しんだ。
流石、ユキノの姉である。
混浴風呂が用意されていた。
大人な、ヤマと監察官が入りに行く。
廊下でカオナシとすれ違う。
「浴衣で卓球っ」
ユキノが感動していた。
パートナーとするのが、夢だったらしい。
キバとユキノが卓球をした。
ハロクとミユキ(の一体)も楽しむ。
風呂上がりで、少し上気した浴衣の胸もとが色っぽかった。
卓球を終えた。
キバとユキノは、”道後温泉”本館二階でのんびりしている。
二階に上がるのは、有料だ。
雪ウサギになったイナバ五姉妹が、周りでころころしていた。
「”道後温泉”本館もいいが、”奥道後温泉”の”ジャングル風呂”も好きだぞ」
キバがユキノの手を握る。
「まっっ」
ユキノがポッと頬を染めた。
ユキノの船、”エクストラコールド”には、こちらにない”ジャングル風呂”がある。
キバは、いまいちよくわからない”口説き文句”を口にした。




