第二十九話、百一匹、メイドちゃん
フェンリルウールヴは、戦闘力の高い重ハーレム艦。
「登録…」
ミユキだ。
「わかった」
ハロクである。
ハロクとミユキ、ユキノたちは、ミユキの船、”フェンリルウールヴ”に移動した。
ミユキのハーレムマスターになったハロクを、”フェンリルウールヴ”の船主に登録するためである。
船と船を繋ぐ、ドッキングポートをくぐると温泉街が現れた。
砂漠の王宮は入ったらすぐに、大量の水を張った池や噴水を作る。
砂漠で貴重な水を用意し、国の威光を見せつけるためだ。
同じように、極寒のコルトバでは、温泉を作る。
「すぐに体を暖められるというのは、最大級のおもてなしよ~」
到着してすぐに体を暖めないと凍死するから、という意味もあった。
「ふ~ん」
キバの前には、廊下が真っすぐ伸びている。
左右に入口があった。
”道後温泉”
右の入口の看板に書いてある。
「こっちは有馬温泉だよ」
監察官が、左の入口を指差した。
「ふふ、ミユキお姉さまは、名湯、秘湯を船内に再現しているのよ」
他にも、”湯布院”、”熱海温泉”、”草津温泉”、“サンリバー大歩危“
「凄いよ、キバ君、次元の彼方にあると言われる”油屋”だよっ」(←釜爺完備)
”別府温泉”の”地獄めぐり”が、ジャングル風呂枠か
「後で…、入りますか…」
ミユキが、無表情に言う。
ユキノたちが、こくこくとうなずいた。
ブリッジまで来た。
広いが、エクストラコールドと似た造りをしている。
後ろにVIPルームがあった。
「CALE Folikiore Demon of Oga Peninsuia, NAMAHAGE」
ミユキが、暗唱コードを口にした。
『Is thuere a bad child?』
『Is thuere a crying child?』
バリトンが聞いた、男性のマシンボイスが響く。
正面のモニターに、民族色の強いオーガーの顔が現れる。
角とキバが生えていた。
コルトバ軍が採用する、戦闘用総合人工知能体”NAMAHAGE"が起動した。
名前の由来はコルトバに伝わる、”怠惰や不和などの悪事を諫め、災いを払いにやってくる来訪神である”(ウイキペディア参照)
”鬼”ではないそうだ。
「船主登録」
ミユキの声と共に、ハロクの体を光の線が、上から下へとサーチする。
『登録完了』
マシンボイスが答えた。
「ん、そういやあ」
誰もいないブリッジを見渡して、キバが気付いた。
「他の乗組員は?」
ここまで来る途中、誰にも会わなかった。
エクストラコールドのクルーは、うさ耳メイドのイナバ姉妹だ。
「一人…、ハロクが(他の女性を侍らせるのを)嫌うから…」
ミユキが答えた。
男性は論外だ。
船の運航は”NAMAHAGE”システムに、任せきりである。
「そうだったね」
何度も拉致されて、連れてこられたハロクが言った。
ミユキが、エプロンとほっかむりで、居室や温泉を、一人で掃除しているのを知っている。
「これをあげる」
ハロクが、ミユキに言った。
「?」
ミユキが小首をかしげる。
「百一匹メイドちゃんシリーズ、起動」
ハロクが、ブレスレットコマンダーに命令した。
◆
”アニメ、百一匹メイドちゃん”
宇宙的カートゥーン製作者、”ウオルダ―、ダズニー”が作ったアニメーションの名前。
善良な夫婦が、古い館の地下から、百一人のメイドの封印を解いて、宇宙皇帝になる物語。
”全てのメイドフェチに捧ぐ”のテーマのもと、あらゆるタイプのメイドが登場する。
命道(メイド―)という新たな表現のジャンルを作った偉大な作品。
ダズニースタジオMOEMOE部制作。
◆
”百一匹メイドちゃんシリーズ”は、ハロクが上記のアニメを元に作った、一分の一スケールのフィギュア(アンドロイド)群だ。
丸眼鏡でマシンガンをぶっぱなすメイドや、時間をとめる瀟洒なメイド。
メイド〇ゴン。
更には、ロケットパンチに、おっ〇いミサイル。
合体して、巨大メイドロボに。
アニメの設定を、全て、忠実に、再現していた。
「中規模の宇宙ステーションくらい、余裕で制圧できるよな」
ヤマが、監察官に確認する。
「……」
監察官が黙ってうなずいた。
ハロクの船、”オールフリー”の格納庫。
真っ暗だ。
円筒形のガラスが、百一個並んでいる。
キュウウウ
チカチカ、チカ
ガラスの中、静かな作動音と共に、一体のフィギュア(アンドロイド)の目に、緑色の光が明滅する。
後ろのフィギュア(アンドロイド)が、横のフィギュア(アンドロイド)が
ドンドン光が増え、格納庫を埋め尽くした。
今、封印が解かれた。
ミユキが、主人に登録される。
打撃力が爆上がり。




