第二十八話、ミユキ
エクストラコールドのVI Pルームにミユキを呼んだ。
肩下の黒髪、黒い目のスレンダーな美女だ。
「ミユキお姉様はこっち」
ユキノが、ミユキを炬燵に座らせる。
「ハロクお義兄様はこっちよ〜」
ミユキの向かいに座らせた。
「ほいよっ」
ヤマが二人の前に、きりたんぽ鍋の入ったお椀を置く。
「おかわりはいっぱいあるぜっ」
「……」
「……」
ハロクとミユキはお互いをチラチラ見ながら、黙って食べた。
食べ終わった後も、お互い見あっている。
「あ〜、じっくり話しあってはどうかな」
この中で唯一の元既婚者で、三児の父だったキバが言った。
「あの…」
(どうして私を娶ってくれないのですか?)
「こういうのは…」
(しっかり、交際してお互いを知ってからでは?)
「ハーレムが…」
(いけないのですか)
「生涯で…」
(一人の女性と添い遂げたいのです)
「そんな…」
(私ではダメなのですか?)
「それは…」
(貴方は素晴らしい女性だっ)
ポッ
ミユキが頬を染めて俯いた。
「えーと、???」
()内は心の声だ。
「」以外聞こえていない。
「二人が出会って、はや五年か〜」
ヤマだ。
「以心伝心ですわっ、羨ましいですわあ」
キバをじっと見る。
ストーカー歴五年、とも言う。
「しかし、ハーレムかあ」
自分がユキノ以外を、娶れと言われたらどう思うだろうか
キバが、複雑な表情でハロクを見た。
「ああ、そういうことかっ」
キバとハロクを見比べながら、監察官が声を上げた。
「キバ君とハロク君は、ユキメ族のハーレムのことを知らないんだね」
「一人の男性が、たくさんの女性をはべらすんじゃあ?」
「ん〜それもあるけどユキメ族の、特に王族は少し違うなあ」
「ハーレムは“一人の女性"なんだよね」
ユキノを見る。
「そうですわ」
「簡単に言うと、王族のハーレム要員は女王になった時に、そのまま国の中枢になるんだよ」
「……側近候補ってこと?」
「そう」
だから優秀な人材を集める。
ユキノハーレムは、超脳筋戦闘集団である。
「これは、資材や装備も含まれるよ」
最近、ハーレムに仮登録されたRー66を見る。
「ん〜〜」
幸せそうに鍋をつついていた。
Rー66は、全生命体殺戮用機械群のセクサロイドである。
「んっ、なんですか〜」
「アンドロイド?」
ハロクが、聞いた。
「そうですよ〜」
Rー66が答える。
「君は言われたんじゃない?」
「すでに人形で、ハーレムを作っているって」
ミユキがコクリと頷く。
「しかも、宇宙的な軍需企業と繋がりがあるでしょう」
義体やアンドロイドのデザインで契約がある。
「ミユキ君は、そういうところも見てるんじゃない?」
監察官の説明が終わった。
ハロクがミユキの目をじっと見つめた。
打算と計算なの?
ミユキは、悲しそうに首を横に振った。
…最初の方だけ…
「じゃあ、他に女性をはべらさなくてもいいの?」
ミユキが、こっくりと頷いた。
ユキメ族の感覚では、はべらさないほうがおかしい。
「!!」
ハロクが、ミユキの手をギュと握った。
ミユキの黒い瞳が、鮮やかな桜色に染まる。
ハロクが、ミユキのハーレムマスターに塔録された。
後方支援的なハーレム。




