第二十六話、ハロク
「裸のつきあいだ」
キバは、女性が入ってこれない男湯にハロクを連れて行った。
ハロクは、金髪の前髪を長くして目を隠している。
意外と長身で体は鍛えられていた。
一分の一フィギュア製作は体力を使うのだ。
「とりあえず話をしようか」
男湯には、キバとハロクそして注射器を取り上げられた監察官の三人がいた。
「…出会いは、“宇宙の美女”シリーズの製作でした」
「原寸大で宇宙の美女を、フィギュア化していくシリーズです」
「うん、有名だよね、サイボーグの女性がそれを元に義体を作るんでしょう」
監察官だ。
「義体に限らず、義手や義足にも使われます」
「そして、ユキメ族から依頼が来ました」
「モデルとしてきたのが“ミユキ”さんだったと」
「はい、僕は、なるべく実物を見ながら制作するタイプなので」
「アトリエで何度も会ったと」
「はい、そうです」
「…そして、会うたびに“ミユキ”さんの着ている服が、どんどん少なくなっていくのです」
「指示してませんよっ」
「最後には水着姿になってもらう予定でしたけど」
「ああ…ちなみに瞳の色は?」
「…桜色でした…」
「詰んでるね」
「今ならそう思います」
「最後は、下着姿で来ました」
ゴクリ
キバが唾を飲み込む。
「無表情のまま、下着を脱ぎ出した時、悲鳴を上げて逃げ出していました」
「バストはともかく、そこまでリアルに作りませんっ」
実物を見たこともありませんっ
「なんとか逃げ出して、アトリエ船でゼロから作り直して、依頼主に送りました」
「で、逃げた先で、夜這いを受けたと」
「そうです」
「夜中目を覚ますと、白い着物を着た彼女が、無表情で見下ろしているのです」
「大声で悲鳴をあげました」
「すると彼女は、“他に好きな人がいても構わない”と言って去って行きました」
「こういうことは、好きあっている人同士がすることですっ」
「んんっ」
「他にも、“フィギュアでセルフハーレムを作っているあなたは、私のハーレムマスターに相応しい”って言ってくれました」
「女性フィギュアまみれのアトリエ船を見て、汚れ物を見るような目で見なかった、初めての女性です」
「お、おう」
「あのような素晴らしい女性が、ハ、ハーレムなんて、破廉恥なっ」
「いや、ユキメ族だし、宇宙一恋愛の苦手な種族だし」
監察官が呆れた声を出す。
ユキメ族の恋愛は、ストーカーからしか始まらないらしい。
Dーテイの看板をデカデカと掲げたハロクを見ながら、一度本人同士会わせるしかないなとキバは思った。
ちなみに行く先々で現れる“ミユキ”から逃げるため、水や食料が補給出来ず、通りがかりの船からお金を払って、分けてもらっていたそうな。
その時、海賊女王ツインリンクスのアンドロイドが、宇宙動画にアップされ有名になったのだ。
海賊、“愚者の人形”に襲われるのは、アニメファン垂涎の的となった。
“愚者の人形”は正式なアトリエ名である。
ハロクの捕獲継続、決定っ。




