第二十四話、ロストテクノロジー
「ダイヴアウト」
エクストラコールドは、通常空間(海上)に出た。
船の周りに白い波が光る。
補給ステーションに寄る為だ。
あと二回、ダイヴワープすると惑星コルドバに着く。
「しかし安全になったものだなあ」
キバだ。
キバの乗っていた宇宙軍艦のワープは、空間歪曲型だ。
三回に一回、失敗して爆発していた。
「運が良かったんだよな」
乗っていた艦が爆発した時、偶々コールドスリープ付きの脱出ポットの近くにいたのだ。
「何の話です?」
ユキノが聞いた。
「いや、安全なワープだなあと思って」
ワープのたびに遺書を新しくするのがいたなあ
キバがしみじみと言った
「ワープですか、そういえば…」
「キバ様、確かキバ様の時代のワープは、女性の服が透けて下着姿になるのでしょう?」
ユキノが小首を傾げる。
「えっ」
「古い記録で見たぞお」
ヤマが答える。
「うん、確か、完全な“ロストテクノロジー”で再現は難しいんだよね」
「空間歪曲中に、服だけに作用させて透明にするなんてすごいよね」
肌にぴったりの宇宙服の女装をした、監察官が言った。
最近、惑星コルトバの宇宙船開発局が、死に物狂いで復活させた技術だ。
これを搭載するために、新たに空間歪曲型のワープエンジンを作った。
S級の国家機密で、ユキメの女王が所有するハーレム船に唯一搭載されている。
下着だけを残すのに、大変苦労したそうだ。
「地球人類の技術は“ガラパゴス”ですよ〜」
Rー66だ。
曲がるレーザー。
割れるバリアー。
真空中で音が出るミサイル。
禁断の技術、“乗組員製造工場”
熱線を吐く巨大生物兵器。
携帯用ヘリコプター(一枚の羽で反対方向のモーメントをどうやって消すのだろう)
挙げていくと、枚挙がない。
ふふふ、我ら、バーサーカーが伝説の超破壊兵器“パンジャンドーラム”を復活させたのですよ
見るものの知性を吹き飛ばし、失笑を浮かべさせるという。
「…眠っていた700年の間にそんな技術が…」
キバが、愕然とした表情を浮かべた。
はて、私のメモリーにそのような兵器は記録されておりませんが
稼働時間六百年弱の、地球産AI“オマメさん“が考えこんだ。
かろうじて“乗組員製造工場”の開発案は見ましたわねえ
「…記憶洗浄…」
キバを見ながら、監察官がボソリとつぶやいた。




