第二十二話、隠された機能
「ふんふん、ふんふん」
「ゼンコロ〜」
「全ての生命に捧げるの〜」
「ふんふん、ふんふん」
「タンコロ〜」
「私の殺意はあなただけ〜」
R−66は、浴場の床にモップがけをしている。
カコ〜ン
無駄に綺麗な歌声だった。
「あ、あ〜る66さんっ!?」
ユキノが風呂に入りにきていた。
ぜ、全宇宙的な歌姫が、ふ、風呂掃除を〜
ユキノは、彼女の大ファンだ。
「な、なぜっ」
想像して欲しい。
モニター越しでしか見たことがない大スターが、スク水で自分の家の風呂掃除をしているところを。
「いや〜、私みたいな一端末を、船内に入れてくれてありがたいですよ〜」
基本的に彼女は真面目で義理堅い。
船内の様々な仕事を手伝っていた。
「あははは」
「まあ、船内のバッドライフを殲滅したら、のんびりさせてもらいますよ〜」(←ユキノも含む)
R−66は、ジャングル風呂の掃除に取り掛かった。
「Rー66さん、台所にG出現、急行されたし」
船内放送が聞こえてきた。
「はいはい〜、虐殺ですよ〜」
「ああああ〜」
ユキノが頭を抱えた。
◆
「出現区域より人員退去」
「対象出現区域、閉鎖完了」
「動体反応チェック」
「隔壁、エアダクト閉鎖」
「駄目ですっ」
ドンドンッ
ユキノは、閉鎖された隔壁にしがみつく。
ガラス越しにRー66が見える。
「いやっ、いやああ」
「ユキノッ」
キバが、ユキノを隔壁から引き離す。
「見るなっ」
ガラスの向こうのRー66がかすかに微笑んだ。
脇の下の排気スリットが開く。
シュコオオオオ
黄色いガスが漂い出る。
宇宙船の隔壁に、ガムテープなどの目張りは必要ない。
Rー66は、無慈悲な“バルサン”と化した。
バルサンにやられたGは、すぐには死なない。
バサバサバサ〜
Rー66の周りを複数のGが舞った。
おマメさんが気を利かせてGにモザイクをかけてくれる。
「いやああああ」
キバが、ユキノに目隠しした。
◆
「全生命体完全殺戮機械群は体内で、あらゆる毒ガスを作ることができるからねえ」
防御服の女装をした監察官が言った。
バーサーカーの使い方としては、一般的らしい。
「たまに大量殺戮させてガス抜きしないとね」
「見たかっ、バッドライフめっ」
Rー66が勝ち誇る。
ちなみに、ヤマはGが大の苦手だ。
可愛らしい悲鳴をあげて、自室に逃げ帰っていた。
エクストラコールドの航海日誌には、順調に航行中と記録されている。




