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第二話、ユキノ

 ユキメの女たちは”低体温“である。

 大体、平均20度くらいだ。

 故郷である、“惑星コルドバ”の極寒の環境に適応した結果である。

 感情が激昂したり、性的に興奮すると30度近くまで上がる。


 砂漠の民が水を渇望するように、彼女たちは“熱さ”を渇望した。

 

 さらに、男女の比率は女性が多く3:1である。

 彼女たちは、少ない男性を暖めるように“ハーレム”を作る。

 他の種族の男性を迎え入れても、女児は全て“ユキメ”になった。

 “ユキメ”という種族を守るため、全力で“ハーレム”を作るのだ。



「お分かりいただけましたか?」

 ユキノが、キバの上に馬なりになっている。

 キバの部屋のベットの上だ。


「……夜這いか……?」


「うふふ、夜這いですわ」

 瞳だけではなく、全身ほんのり桜色になっている。

 ユキメ族が、夜這いの時に身に纏う白い着物を着ていた。

 はだけて白い胸元が見えている。

 サイズは控えめだ。

「下は履いてませんわよ」


「ぬ~、ふんっ」

 バキッ、バキッ


 両手足をベットに拘束していた氷の輪を粉砕する。


「…………」

 ユキノの襟首を持ち部屋の外へポイした。


「キバ様のいけず~」

 部屋の戸をカリカリとひっかく音がした。


「ハイハイ、姫様、帰りますよ~」

 ヤマに回収されていった。



「昨夜は騒がせたな」

 キバがコールドスリープから解凍されて、一カ月が過ぎていた。

 酒場の居候兼店員として酒場のおやじから、現代社会のことを勉強しているのだ。

 職業の斡旋の一環でもある。


「しかしお前は強いな」

 ユキメ族の王族、しかも瞳だけでなく全身桜色の『恋愛色』に染めさせて、なお貞操を守るとは。

 体温が上がった彼女は、まさに全身で生命(いのち)を感じてただろうに。

「手段を選んでないだろう?」


「ああ」

 氷で拘束された。


「嫌いなのか?」


「いや、戸惑ってるだけだ」


「どっちにしても真剣に答えを出してやれよ」


「そのつもりだ」


 出会って()()()の話である。



 スノウオーガーは、”高体温“である。

 大体平均38度くらいだ。

 ”惑星コルドバ”の極寒の環境に適応した結果だ。

 それゆえに、殿方や自分たちを暖めるため、ユキメ族の“ハーレム”のパートナーによく選ばれるのだ。


 朝だ。

「キバ様、昨夜は(ワタクシ)のヒンヌ~故の行動でございますね」

 部屋の外にポイされた。 

「心配ご無用でございますっ」

 

「ヤマっ」


「ハイハイ~」

 ヤマが、大きな胸を強調するように、ふんぞり返った。

 揺れる。

 背は高いがスレンダーな体形のヤマは、キョヌ~なのだ。


「“ハーレム”はそれ一つで、一人の“女性”なのですっ」

「キバ様を必ず満足させて見せますともっ」


 フフ~ン

 ユキノが勝ち誇る。


 ピキッ

 キバの額に青筋が走った。


 ユキノとヤマは首筋を掴まれ、酒場の外にポイされた。


「何故ですか~」


「Dーていは難しいですね、姫様」

 

 700年越しのD-ていか?

 天地創造くらいできそうだ。



 昼過ぎ、エリンステーション酒場、まだまだ周りは明るい。


「コルドバ星人のピーーは冷凍ピーー♪」 

 

 頬を少し桜色に染めて、はかなげに歌うユキノ。

 透き通るような歌声だ。


 ブッフーーーー

 

 周りのゴロツキが一斉に酒を噴いた。


「お前によしっ♪」


「なっああああ」

 キバが後ろからユキノの口をふさぐ。


「もがもが」


「お前によしっ~♪」

「俺によしっ~♪」

「味よしっ~♪」

「全てよっしっ~~~~♪」

 ヤマだ。

 いい笑顔だ。


「歌い切るなあああ」

 甘い香りがした。

 キバは、椅子に座ったユキノを後から抱きしめている形だ。


「ふわっ、キバ様あ~、ふにゃあ~~」

 ユキノは桜色を通り越して、真っ赤になっている。 

 

「あっ、おい、大丈夫か?」


 ユキノはそのまま意識を失い、ヤマの手によって部屋に寝かしつかされた。


「……可憐だ……」

 店の奥の物陰から、熱い視線を送るものが一人。



 しばらくして、ユキノが復活してきた。

 場は凍ったままだ。


「どうでしたか? キバ様」

「うふふ、(たぎ)ってきましたでしょう?」

「我が故郷に伝わる、契る前に行う準備運動のための歌ですわよ」


 女性側からの、強烈なオッケーサイン。

 コルドバの殿方なら、これからの展開に“ステンバ~イ”な状態になるはずだ。

 ユキメ族を相手にする場合、準備運動で体温を上げないと、部屋の中で“凍死”する恐れがある。

 しばらく、歌に合わせてザッザ、ザッザと走りますな。


 もうすでにほんのり桜色のユキノだ。

 無言でゆっくりと腕を広げるユキノに


「無茶っ言うなあ」


 デコピンするキバである。

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