第十八話、帰郷、第一部完。
「そろそろ年季があけるねえ、キバ」
酒場の親父に話しかけられる。
「そうか、もう一年になるのか」
コールドスリープから、とけてである。
「そろそろ“文明人”デビューだね、キバ君」
白無垢で角隠しの女装をした、監察官が言った。
ヤマは、今仕事中である。
目の前にいるのだが。
宇宙には、色々な生物がいる。
キバのように長期コールドスリープからとけたもの。
意思を持つ海なんてのもいた。
新たに発見された生物は、大体一年間、観察され、“文明人”であるか判断される。
その一年が過ぎようとしていた。
「これで、星系間の移動が解禁になりますね、キバ様」
ユキノが笑いかけた。
「そうだな」
キバが考え込む。
「ふふふ、一緒に銀河を旅行しましょうっ」
「どこか、行きたいところはないですかっ」
「…………」
キバが頬をかきながら、そっぽを向く。
「……惑星コルトバに……」
「えっ」
ユキノが振り向く。
「ユキノのご両親に挨拶しに行きたいのだが」
そっと、ユキノの手を握った。
「キ、キキキバさまっ」
キバが、ギュッと握る手に力を入れた。
プシュ~~~~
ユキノが頭から煙を出して、意識を失った。
「やるじゃないかっキバっ」
「妹を頼むよっ」
ヤマが、ユキノを部屋に運んだ。
◆
「寂しくなるなあ」
酒場の親父だ。
キバの年季が空けた。
「ああ、だが、また帰って来るよ」
キバが答える。
「まあ、気にせず色々回って来いよ」
「ここの席は、いつでも空いてるぜ」
「早かったな、一年は」
「ユキノちゃんも、ヤマちゃんも達者でな」
「別に寂しくなんかないんだからねっ」
ごろつき達だ。
「皆さまも、今までお世話になりました」
ユキノだ。
「しばらくしたら、帰ってくるぜっ」
ヤマが答える。
「まあ、僕もハーレムのメンバーだからねえ、ついていくよ」
アンドロギュヌス監察官が横に並ぶ。
惑星エリンのエリンステーションを、ユキノのハーレムパレス、“エクストラコールド”が出港した。
目的地は、ユキノの故郷“惑星、コルトバ”である。
「惑星コルトバに向けて、ダイブジャンプ」
「行きましょう、キバ様」
ユキノが、キバの笑いかける。
「おう、行こう」
キバが、優しく笑い返した。
ユキノの歴史が今1ページ。




