第十七話、イナバたち
「お、やはりここにいたか、キバ殿」
ドワーフの男性が酒場を訪ねてきた。
普通免許の試験官だった”ドワイト“だ。
週末の土曜日、午前十時くらいだ。
「わしに模擬戦で勝った相手には、一杯奢ることにしとるんじゃ」
「いい試合じゃったのお」
同じテーブルに座る。
「んんっ」
「あらっ」
「おやっ」
”ドワイト“と、
膝の上に、監察官を乗せた”ヤマ“と、
キバの膝の上に座った”ユキノ“が、同時に声を出した。
「ユキノ様?、ヤマ?」
「ドワイトおじさま?」
「ドワイトジイ?」
やはり三人が、同時に声を出した。
”ドワイト“が、改めてまじまじと、キバを見た。
キバの膝の上に座ったユキノが、勝ち誇った様に胸をそらした。
フッフ~~~~ン
キバは気まずそうな顔をして、ユキノを膝からおろそうとしたが踏ん張っておろせない。
「ふっ、ユキノ様の思い人と出会うか」
ドワイトが、片頬を歪めた。
「え~と、こちらの方は?」
キバが小さな声で聞いた。
「先代のユキメ族の女王”シラユキ“様の、近衛部隊“セブンズ”の元隊長だよ、キバ君」
毒入りのリンゴ売りの女装をした、監察官がヤマの膝の上から言った。
「ユキノ様も、遂にハーレムマスターを見つけられたのですなあ」
目を細めながら、静かに笑う。
「で、イナバたちは元気ですかな?」
「イナバたちと言えば、うさ耳メイド五姉妹だっけ」
キバが確かめる。
「そうだぞお、キバ様あ」
ヤマだ。
「彼女らは、近衛部隊所属じゃからなあ」
「わしが直々に鍛えたんじゃ」
ドワイトだ。
「そういえば、キバ殿は、“スペース・カラッテ―”のTATUJIN(達人)と聞く」
「イナバたちの様子見がてら、手合わせしてくれんかのお」
「え~と」
「ドワイトジイは、“極十字星拳”の使い手だぜ」
ヤマが監察官の手から、ウサギに切ったリンゴを食べながら言った。
「分かった」
キバが答える。
明日の日曜日に、ユキノの宇宙船、“エクストラコールド”に集合ということとなった。
◆
「……師匠……」
キバたちは、エクストラコールド内にある道場に集合していた。
「皆、元気にしていたか?」
「……はい……」
うさ耳メイド五姉妹が、並んで正座をしている。
「ふふ、キバ殿、一人一人使う流派が違いますぞい」
「流派っ」
「え~と、宙軍中野学校式、近接格闘術と空手を少々」
キバが、自分の流派?を答える。
ちなみに五姉妹の名前は上から、“ヒ”、“フ”、“ミ”、“ヨ”、“イツ”である。(本名ではない)
「長女“イナバ・ヒ”、“孤鷲拳”参ります」
「次女“イナバ・フ”、“水鳥券”……」
「三女“イナバ・ミ”、“紅鶴拳”ですわ」
「四女“イナバ・ヨ”、“白鷺拳”いきますよお」
「五女“イナバ・イツ”、“鳳凰拳”ですよっ」
キバは、準繰りに手合わせした。
――なんと六聖……(ユ〇ア(正統血統)は、ヤマになるのか?)
外部からの破壊を得意とする流派らしい。
ちなみに腕や足を延ばして攻撃したり、テレポートや炎を吹いた監察官が最強だった。(ヨガ~~)
夜には、ヤマに「ファイナル・アトミック・バスター」を決められるのだが。
◆
道場で汗をかいた後、エクストラコールド内の入浴施設(健康ランド)に入りに来ていた。
な、なんと、混浴ではないっ(ばば~~ん)
”ドワイト“は、高齢者とは思えない筋肉だ。
キバは、低重心のガチムキである。
キバは、
「サービ〇、サービ〇ゥ」
と言いながら、注射を打とうとする全裸の監察官を、死に物狂いで止めた。
一方、女湯では、
ポポポポポン
白くて丸い雪ウサギが五匹、湯船に浮かんでいたそうな。




