第十三話、ハーレムマスター
「ユキノオオ」
ヤマは、監察官の腕の中で泣き崩れた。
「周りの人も触っちゃだめだ」
監察官が大声で言う。
「ヤマさん」
「ユキノ君はヤマさんと、血の繋がった実の妹だね」
「……そうだよ……」
ヤマが小さく言った。
「えっ?」
キバが驚く。
「取り替えっ子だよ」
「ユキメ族とスノウオーガーは『生物的』にとても近いんだ」
「ごくたまに、スノウオーガーは、ユキメ族を産む」
「そうだよ、ユキノとアタシの母ちゃんは同じだよっ」
「だれか、私の妹を助けてよっ」
ヤマが叫ぶ。
「???」
キバが不思議そうな顔をする。
――自分で冬眠状態を解けるんじゃ?
「取り替えっ子の子のスキルは強力で、暴走しやすいんだ」
普通のユキメ族の冬眠は、0度以下まで下がらない。
ユキノの熱量奪取(強)は、”シェープシフター“ですら凍らせた。
ドライアイスを抱きしめるようなものだ。
「キバ君、よく聞いて」
「ユキノ君の冬眠は、いつ溶けるかわからない」
――普通なら、長くて半年、でもユキノ君は溶けるのに十年、二十年かかるかもしれない
「……愛しい人が抱きしめて溶かすんだ……」
「そうか」
キバは、そっと胸の写真を取り出した。
――琴子さん、春菜、夏美、雪乃、父ちゃんは前に進むぞ
キバが上の服を脱ぐ。
上半身裸になった。
鍛え上げられた筋肉だ。
「つっ」
「キバ君のスキル、”根性”っ」
――あらゆる状態異常を無効っ
ハッと監察官の腕の中にいたヤマがキバを見た。
キバが、ユキノを抱きしめた。
ジュウウウウ
「くうううう」
キバの腕の中で、ユキノの体が水蒸気を上げる。
スキルも完ぺきではない。
凍傷が出来ている。
「目覚めろっっ、ユキノッッ!!」
バッシュウウウ
辺り一面が白い煙に覆われた。
「キバ君っ」
「キバっ」
監察官とヤマが同時に叫ぶ。
「……キバ……さま?」
煙の中から、小さな声が聞こえた。
キバは黙って、ユキノを痛いくらいに抱きしめた。
◆
「はああああん」
キバの二の腕に、ユキノはぴったりと引っ付いている。
あれから二時間が経った。
「かっこいい」
――まるで、伝説のハーレムマスター”シューゾー・マツオカ”みたい……
地球人類出身。
彼は、いるだけで周りのユキメ達の体温を5度上げたという。
警察の事情聴取中だ。
どうやら、”シェープシフター“は、豪華客船の外装に引っ付いていたようだ。
「むっ」
キバだ。
”シェープシフター“が一つの場所に集まる。
ユキノとヤマを足して二で割ったような、幼女の姿を取った。
「キョウシャ、キョウシャ、キョウシャニシタガウ」
「ああ、服従させたね」
監察官だ。
腰の抜けたヤマを、片手で支えている。
「はは、(身体の)八割くらいは沸騰させて吹き飛ばしたみたいだねえ」
「良いじゃないか、キバ君の言うことは何でも聞くよ」
「そうなのか」
「エリクサー(万能薬)も作れるはずだよ」
”シェープシフター“が保護される一番の理由だ。
「じゃあ、私のハーレムに登録しときましょう」
「うーーん、……いいのか、これで」
キバは、腕を組んで低くうなった。
「ハーレム、ハーレム~」
ロり幼女がつぶやく。
「これで、ロり要員も確保よ~~」
ユキノさん、タダではこけなかった。
その後、突発的に、スライムに服が溶かされるイベントが発生するようになる。
「キバ様の前で溶かすのですよっ、いいですねっ」
「マエデ~、トカス~」
ユキノが言い聞かせていたのを、キバは聞かなかったことにした。
「ユキノッ」
キバが、ユキノの手をぎゅっと握る。
キバが、ユキノのハーレムマスターに登録された。




