第十話、ゲット族
ドッキングポートまで来た。
「お帰りなさいませ、姫様」
ウサギの耳を頭に生やした侍女服の女性が、5人並んで頭を下げていた。
奥に行くに従って段々背が低くなる。
5姉妹か?
「ただいま~」
「今帰ったぞ~」
「……ゲット族だ」
バニー姿の女装をした監察官がつぶやいた。
ゲット族はコルトバ星人の中で、スノウオーガーに次ぐ戦闘力の高い種族である。
得意なことは、隠密で後ろから静かに近づき、首をはねることだ。
さらに、獣形態であるまん丸い白兎に変身すると、スピードが上がり鋭い牙を生かしたインファイターになる。
ポポポポポンッ
5姉妹が中型犬と同じくらいの大きさの、まん丸い白ウサギに変わった。
先導するように艦内を進む。
「うふふ、獣姦も可能ですわよ」
ユキノがキバの耳元で囁く。
「はああ!?」
白ウサギがちらりと振り向く。
無表情な赤い目とあった瞬間、
ポトリ
クリティカルヒットッ
キバの首をはねたっ。
「うわあああ」
キバは、必死に自分の首を抑えた。
「お、落ちてない」
錯覚っ??
「気を付けた方がいいよ」
「ゲット族は、ユキメの王族を陰から支える闇の一族だからね」
監察官が小さな声で言った。
キバ様も好きね~
というユキノの視線に、流石に怒りを覚えるキバである。
◆
丸みを帯びたブリッジで五人のゲット族のメイドが、艦を操縦している。
真ん中の一段高い所に椅子があり、ユキノが座っている。
斜め後ろにヤマが立った。
「永久凍土装甲、励起」
「DM推進機関、起動」
「もやいを外しなさい」
「エクストラコールド、出港」
”エクストラコールド“は、“エリンステーション”から出港した。
ブリッジのすぐ後ろの区画には、簡単な食べ物が作れる設備を備えたVIPルームがある。
部屋の中央に設置された超高級囲炉裏。
少し離れた所に、コタツとミカンも完備されていた。
板間に畳み。
靴を脱ぐのが“コルドバ”流だ。
「凄いっ、ユキメ族の王宮の迎賓館そのものだよ、ここわっ」
監察官は、ユキメ族の文化にも詳しい。
「迎賓館っ?!」
キバだ。
「ただ……コタツにネコがいないのが……」
「……コタツにネコ……」
キバである。
バフッ
「ニャ~~ン」
熱くなったのかコタツからネコが上半身だけ出してきた。
「なっっ」
かっ、完璧だっっ
「フッフ~~~~~ン」
キバが振り返ると、勝ち誇ったユキノとヤマが並んでふんぞり返っていた。
「え~と」
700年前のキバの自宅に、コタツがあったというと、
「キバ様(君)は、王侯貴族の出身なのですか!?(なのかい!?)」
と大変驚かれた。
ネコもいたとは言わないでおこう。




