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「ちょっと、ちょっと待ってえー!私もあの子に用があるのよっ」

一年の女子二人の進路に回り込み、何とか英麻は彼女たちの動きを止めた。女の子たちはわずかにきょとんとしたものの、すぐ「邪魔しないでよ」と言い返してきた。二人ともすでに英麻よりも背が高く、気が強そうだ。

「みなみ先輩はすごいのよ?超スポーツ万能でクールでカッコよくて。あの子なんて失礼じゃないのっ。あなたも私たちも、もう小学生じゃなくって中学一年生なのよ?もっと先輩への礼儀をわきまえなさいよっ」

「あなたも北小山の一年なら先輩のこと少しは知ってるでしょ?もう一年生の間でも有名なんだから!」

英麻はカチンときた。明らかに同じ一年生に間違われている。それも今までよりかなり露骨に。英麻は制服の胸ポケットごと校章バッジを引っつかみ、そこに記されたⅡーAという面を二人に突きつけた。

「私は二年生なのですッ!」

荒々しい鼻息と共に英麻は宣言した。

「え…」

女の子たちは目が点になり、次いであたふたし始めた。気まずい空気が流れる。英麻はそれには構わず、再び走りだす。

「みなみーっ!」

すでに自転車に乗って漕ぎ出そうとしていたみなみの動きが止まった。

切れ長の瞳が英麻を振り返る。

薄茶のショートカット。すらりと背の高い立ち姿。やはり外国の、それも男の子を思わせる顔立ち。白地に紺のアクセントが入ったバスケットボール部専用ジャージの上下がばっちり決まっている。

英麻はここへ来てやっと、服部みなみを至近距離からまともに見た気がした。急いでみなみのすぐ前に走り寄る。

「何だ、英麻じゃん。どうしたの?」

みなみは斜めがけしたスポーツバッグをよっと背負い直した。

「あのねっ、みなみ。ちょっと大事な話があるのっ」

「大事な話?」

息を切らしつつ、英麻はみなみの手首にはめられた紫のベルトのスカイジュエルウォッチを指した。

「その腕時計のことでっ。空から降ってきた所をみなみがキャッチした」

「えっ?…何で英麻、これのこと知ってるの?」

「あの時、私もその場にいたから。よく聞いてね、みなみ。その腕時計、スカイジュエルウォッチをキャッチできた人はタイムアテンダントっていう」

「何してるの、二人とも」

すぐ後ろで声がした。

そこにいたのは、あのつかみどころなしの通信担当、ミサキだった。やや赤みがかった茶色の長髪。みなみ以上に切れ長の鋭い目。スクリーンでの通信時にはわからなかったが、思っていたよりもはるかに背が高い。シバ隊長と同じく、英麻にとってはうんと見上げるほどの高さだ。その顔はスクリーンで見るよりもさらに無表情だった。

えっ、うそ。何でミサキさん。サノさんじゃないの!?

英麻は妙な顔のまま、立ちすくんでしまう。これまで二度の回収任務の流れからてっきり今回のサポート役もハザマとサノのコンビだと思い込んでいたのだ。みなみは不思議そうな顔で二人を見比べている。

「もう指定時刻の五分前になる。二人とも早くシリウスに乗って」

ミサキはそれだけ言うと、さっさとシリウス328が停めてある空き地の方へ歩いていってしまった。

「…あのお、ミサキさん。その…実はですねえー、まだみなみに何の説明もできてなくって」

「わっ、何だこれ。ロケット…?何でこんなもんが縁田川近くの空き地に」

自転車を押しながら何となく二人についてきたみなみがシリウス328の機体を見て驚きの声を上げる。そこへハザマが猛ダッシュで戻ってきた。顔じゅう汗だく、髪や肩は木の葉や小枝、草のかけらだらけだ。土で汚れた右手にはあの黄色い手帳が握られていた。どうにか警護手帳は無事だったみたいだ。

英麻は「どうしよう」という目でハザマを見た。まだみなみにまったく事情を説明できていないとハザマは悟ったらしい。英麻に向かってこう叫んだ。

「こうなったらもう説明は後だっ。指定時刻の午後四時を逃すわけにはいかない。未来側が定めた指定時刻に遅れたら、円滑なタイムスリップができなくなっちまう。とにかく服部みなみを連れていくぞ!」

英麻はうなずき、みなみの豪快に袖をまくった腕を引っ張った。

「ごめんっ。とにかく一緒に来て、みなみ」

「は?何で?意味わかんないんだけど」

「いいから、ほら!」

「やだよッ。いきなり何のつもりさ、ふざけるなよ!」

当然、みなみは抵抗してきた。その力は恐ろしく強く、英麻は吹っ飛ばされそうになる。ハザマが反対側からも腕をつかんで加勢した。そんな中、あの時計の音が聞こえてきた。

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