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劇中劇とエンドロール  作者: 遠禾
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 何故こうなっただとか、原因究明しようとか。そんなことを考えても仕方がないだろうと、山吹は飄々と他人事の゙ように言ってのけた。

「今俺達に必要なんは、現状の把握。それから打開方法の模索。実行じゃねえの?」

「でもさ、どうやったらこの話書いた人がわたし達を脚本の世界にワープさせることが出来るかって気にならない? それに、その人が悪いにしても、何企んでんのかは知っといた方が良いんじゃないの」

 歌乃の素朴な疑問に、口調そのものは淡々としながらも山吹は長々と言い募る。

「だからその考えが不要なんだよ。時間の無駄。労力の無駄。話書いた人って演劇部員じゃないって聞いたぜ。見てみろよここにいるの演劇部員だけじゃん、そいつおらんのにどうやってそいつの企みだの目的だの究明すんだよ」

「それを考えようって言ってんのに」

「ばっかじゃん、頭も身体も使えば疲れんだからよ、確信もねえ動機探しとか無駄なことすんなよ。お前だってなんかの役に立つかもしんねえんだから、要らんことで体力使うな。役に立たずでくたばったら、こっちが困るんよ駒がひとつなくなるだけで大損害なんだって、今は」

「くっそムカつくお前は!!」

「どうどう、落ち着いて歌乃ちゃん!」

 柏山吹という人間はどうしてこうも、他人の神経を逆撫でするようなことばかりするのか。呆れながらも暁は、激昂し拳を振り被った歌乃の両手を慌てて掴んで止めた。歌乃も小柄という程ではないが、暁の方が身長が高い為止めるのは容易である。

「止めないでください先輩! こいつ我慢ならん!」

「落ち着いてって。柏くんも、柏くんの言うことは一部ご尤もだと思うけど、だったらそっちも歌乃ちゃんを怒らせるような物言いは止めなさい。それこそ無駄な諍いを産んで、お互い消耗するだけでしょ」

「ええ……俺が悪いん?」

 子供っぽく唇を尖らせて抗議するが、全くほだされる気になれない。確かに彼の顔立ちは可愛い方だろう、幼い頃子役をやっていたという噂に信憑性がある程度には華やかな外見をしていると思う。しかし、中身がクソ可愛いくないのをこちらはよく知っているのだ。

「言葉が刺々しくなって人のこと怒らせたり口論するのだって、柏くんの言う無駄なことだと思うよ。柏くんはそういうの気にしないかもしれないけど、こうやって揉め続けるのは、嫌じゃない?」

「嫌つーか、こんくらいで怒る方が大人気ないでしょ、普通」  

 納得がいかないらしく、ぶつぶつと山吹は文句を垂れている。先輩の暁にすら突っかかるような態度に、再び歌乃が眉をつり上げたのを暁は再び制止しようと取り押さえた。

「先輩! 先輩一発で良いから殴らせて! こいつ殴らせて!!」

「止めなって。皆疲れてるから怒りやすくなってるんだよ、多分」

 心にもないことを言いつつ、暁は無理矢理今にも喧嘩の火種が再燃しそうな二人の会話を終わらせた。一応、先輩なのだからこの場の人間を纏める責任は自分にある。


 ひとまず梓は無事に戻ってきた。そして、自分達はなんとか腰を落ち着けられた。少し、ほんの少し気を緩めるくらい許されて欲しい。

「あのさ、柏くん」

「なーんでーすーかー」

「拗ねないでよ」

 案外子供っぽいのだな。感情的に怒り出した歌乃だけでなく、自分も一緒に窘められた事実に山吹はむくれているらしい。

「拗ねてませんけどお」

 どう見ても拗ねている。

 妹の佑果も、だらしない態度を注意したらこういう反応よくしてくる。自分には弟はいないが、拗ねた子供の反応は同じようなもんなんだな、とちょっと面白かった。

「先刻から柏くん、この国に生まれたみたいに上手いことやってるけど、何で? この家の人だって、証拠もないのに王様のお使いって言われただけで納得してよく部屋を貸してくれるなって思ったけど、こうなるのわかっていたの?」

 当然だが暁は、この世界の法律も常識も知らない。なんとなく、中世だか何だか古い時代のヨーロッパ……フランスあたりだろうか、を思わせるがその推測が合っているかどうかもわからない。

 当然ながら市井の人々と王様のような特権階級が、どのような形で関わりを持っているかもわからないのに、口先八丁でよくもまあ話を持っていけるなと感心していたのだが、何か確信があってのことか。城を出る時もお金なんか持ってもいないのに、上手いこと誤魔化していたのもあって気になっていたのだ。

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