依頼前
『情報屋』
それは勇者・探偵・便利屋・マフィア・ギャング・政治家・・・・・・・・・・
無数の物語、主人公の裏方であり重要な立ち位置にある職業である。
道を挟んだ高級ホテルの607号室の窓にレンズの方向を向ける。
カシャッカシャカカシャシャシャシャシャ………………
「おー、見てみて!これいいスクープが撮れたのでは!??」
月明り照らす暗闇の中、着衣している黒のパーカーのフードが揺れるほどの風を浴びながら、雑居ビルの屋上にお気に入りのカメラを手に持ち小さめなリュック1つ背負って立つ男。ゼクトが相棒エイナに声をかける。
バチンッ
「いちいち連射機能使って音を立てる馬鹿がどこにいるのよっ!!・・・」
同じく黒のパーカーに身を包み双眼鏡を片手にゼクトの頭をはたいたてをさすりながら呆れた表情でエイナが返事をする。
「痛いなぁ!!久々の仕事で指が力んだだけじゃんかっ!!いや、これはこれで程よい刺激が・・・アッ・・・」
「なに気持ち悪い声出してるのよ・・・エッ」
お互いに撮影した目的の方向に目を向ける。
「おいっ!あそこに居やがるぞ!!人を集めろ!下に車を回せ!逃がすな!」
いかにもボディーガードです。といった風貌のガタイのいい大きな男たちがそろってこちらに向かって走ってくる。
「・・・・・・退散。。はい。いつものでございます。」
ゼクトは薄い緑色の液体の入っている小瓶を△に両手で敬いが見て取れるようにわざとらしく丁重に渡す。
「いつもいつもこの使い方はなんだか違法なやり取りに感じるのが嫌なんだけど。」
エイナは受け取った小瓶の中身を一気に飲み干しながらつぶやく。
「うーん・・・まぁ俺のギフトをは言え毒を使った増強剤だから何とも・・・」
同様にゼクトは自分で調合した小瓶の中身を飲み干しながら返事をした直後お互いに自身の体が軽くなり力が膨れ上がったことを感じる。近くの手すりに体重を預けながら上昇した分の力を確認する。
「今日は2割の上昇。10分の制限ってとこで!」
「わかったわ。私もギフトを使うわ『風の針』」
エイナは下に集まってきた車5台のタイヤすべてにギフトを放つ。
プシュゥ・・・プシュゥ・・・プシュゥ・・・プシュゥ・・・
「おい、やられた!車すべてがパンクしたぞ!」
慌てた様子のボディーガード達を押しのけ、ボディーガードの体格とは裏腹に、スーツに身を包んだスタイルのいい男が一人先頭にでる。
「ギフト『高速化』」
宣言したのちに男は人間の速度とは到底考えられないスピードでエイジ達を追う。
「いいよなぁ・・・エイナのギフト。風を自在に操るなんて主人公待ったなしだよな・・・」
お互いに雑居ビル屋上駆け、ビルビルを跳び越え、手すりをくぐり、また跳ね、梯子を駆け上がりながらなれたように会話をする。エイナの返事が返る前にゼクトは違和感に気付く。
「あれ、今やってること『情報屋』というかただの『パパラッチ』じゃね・・・」