表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
計測不能スキルLv0の特待生 ~底辺バイトの俺、なぜかリアル冒険者学校にトップ入学してしまった件~  作者: タック
第三章 廃部阻止のため、ダンジョンを超速クリアせよ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/41

特待生、部長のスキルに魂を吹き込む

「さて、最後は――」


 三人の視線は、まだスライムを一匹も倒していない大和に向いた。


「あ、あたしか……いいだろう……あたしだな……」


 大和は引きつった笑いを見せていた。

 やる前から結果が見えている。

 きっと、スキルと呼べるか怪しい銀の流線型の物体――通称“銀ちゃん”で殴っても、一発ではスライムも倒せない威力しか出ないだろう。

 レアカラー“ガンメタルシルバー”とは名ばかりだ。


 自分が部長なのに、一番役立たず。

 この先も、昔と同じように足を引っ張り続けるのだろう――と、トラウマがある初心者ダンジョンで色々と考えてしまうのだ。

 内心はかなり複雑といえる。


「あ、部長、待ってください」


「うん? どうした、副部長?」


 明志は、大和のスキルである銀ちゃんに手を当てた。


「【Lv0】魔力調整――」


「こ、これは……!?」


 銀ちゃんが輝き、外装(・・)が弾け飛び、中からなにかが飛び出してきた。

 地面に落下しそうになったのだが、シュタっと華麗に着地。

 その正体は――


「あたしの銀ちゃんから、猫が出てきた!?」


 銀色の美しい毛並みをした、優雅な猫だった。

 大和は混乱した。

 なぜ、自分のスキルである銀の塊から猫が出現したのか。

 それと、自らの頭部になにか違和感がある。

 手で触ってみると、頭頂部に二つの三角パーツが装着されているようだ。


「猫……って、もしかして、あたしにも猫耳が……?」


「部長、お似合いですよ」


「ありがとう。……じゃなくて、いったいこれはどういうこと!?」


「俺の魔力調整で、部長のスキルを少しイジりました。いえ、本来あるべき形に導いたというのが正しいでしょうか」


「……本来のあるべき形……あたしの本当のスキル……」


 大和の脳内に新たなスキル名が浮かんできた。


「【金属Lv8】継続は力なり(シルバーキャット)……?」


「れ、レベル8ですって!? ランカー一歩手前のクラスじゃない! それに鉄柄の【Lv6】殺人鉄拳(デス・メタル)より2も上よ……」


「大和ちゃん、すげぇ……」


 むすびと優友が驚くのも無理はない。

 ダンジョンでボスを倒せば上がっていく冒険者レベルと違って、スキルレベルは先天的な要素が大きいのだ。

 ランカーたちも大体は元からスキルレベルが高く、少しずつ現状最高のLv10に上げていった者が多い。


「……マジか、あたし」


「いえ、当然の結果です。ただの銀色の塊を十数年も、毎日愛情を込めて育てたのですから」


 大和の足元に、命が吹き込まれた猫の銀ちゃんがスリスリとしていた。

 その様子を見て、大和の目頭が熱くなってきてしまう。


「ただ、猫がこうやっているだけで、なんか泣きそうになってしまう……。変だな……アハハ……」


「俺は最初からわかっていました」


「また勘ってやつか?」


「鉄柄に言ってやった『お前より強い金属系を山ほど知っているぞ』――という一人が部長ですよ」


 大和は、今までの明志の態度を思い出していた。

 こんな自分みたいなザコ部長に謙虚な態度であり、天然ボケなのかと思っていたのだが、本質を見抜いて接していただけなのだろうか? と。

 明志のことを改めて、強く信頼すべき相手だと感じ、胸が温かくなってきた。

 なにか感謝の言葉を伝えたい。

 気持ちを巧みな言葉にして、十でも、百でも伝えたい。

 そう心が言っているようだ。


「あー、その……副部長……」


「はい」


「あ、あんがと……」


「どういたしまして」


 赤面して俯いてしまった大和を、明志はポンポンと頭を撫でた。


「わ、忘れるなよ……あたしは年上なんだからな……。けど、たまにはこうすることも許してやる。特別だからな、お前は…………………………副部長だし」


 その後、急に口下手になった大和と、猫そのものな銀ちゃんは『可愛いわ!』『可愛いぜ!』と二人のオモチャにされた。

 一通りじゃれ合ったあと、少しだけ疲れた顔の大和が立ち上がった。


「――って、あたしのスキルの性能を試すんだった!」


「あ、そのことなんですが――」


「いけー! 銀ちゃん! 生まれ変わったパワーを見せてやるんだー!」


 大和はビシッと、前方のスライムを指差して指示を出した。

 銀ちゃんは気乗りしないのか、クァ~とアクビをするだけだった。


「……あれ?」


「そのことなんですが、部長。今日は後ろで見ていてください」


「……え? だって、Lv8のすきりゅ……」


「よし、いくぞ! 火之神院! 優友! 今日は三人でパーティープレイの練度を上げていく!」


「わかったわ!」


「おう!」


 大和は、走り出す三人を見送りながら、呆然としていた。

 その顔は、宇宙の真理を考える猫のような表情だった。


「……Lv8すきりゅ……」


「ニャ~ン」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍情報】
j0jdiq0hi0dkci8b0ekeecm4sga_101e_xc_1df_
『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
ガンガンONLINEで連載中のコミカライズは、単行本一巻が5月12日発売予定です。
よろしくお願いします。

【新作始めました!】
『猫かぶり魔王、聖女のフリをして世界を手中に収める ~いいえ、破滅フラグを回避しながらテイムでモフモフ王国を作りたいだけの転生ゲーマーです~』
聖女(魔王)に転生したゲーマーが、破滅フラグを回避するために仕方なく世界を手中に収めるという勘違い系物語です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ