迷宮1
昔々、俺は人並みの夢を持って平穏に暮らしていたと思う。
静かな村に穏やかな隣人に囲まれ、退屈だけど手離したくない生活だった。
今はどうだ?
ゴツゴツとした岩肌に身を寄せ、震える身体を両手に抱える情けない男が居るだけだ。
何故こうなってしまったんだ、何が悪かった。
考えても迫り来る死からは脱がれることはできもしない。
なんと呆気ない、なんと無意味な、俺はこんな筈じゃなかったんだ!!!
迷宮に魅了されてしまった。
いつだったか、旅人が語ってくれた迷宮の話
見たこともない動物や稀少な鉱石が眠る、迷宮を見つけさえすれば
全てを手に入れられる。そんな話を聞いて興味を抱かないなんてありえない。
あいつさえいなければこんな事にはならなかった。。。。
動物だと・・・・?これが・・・・???
こちらをニタニタと見下ろしている。一言で表現するならば化け物。
黒い肌に子供の背丈ぐらいしか無い、細い腕の先には鋭い爪を携えてる化け物だ。
ご自慢の爪を俺に振り下ろす、回避する術もなくただ見守ることしかできなかった。