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第八章3 ~王位継承権を放棄した料理人・ヴォールド~


 その日の真夜中。

 ルィテ王国に住む者達は、国の滅亡を覚悟した。


 空を飛ぶ魔物に対応するため、国の上空に張り巡らされている大規模な結界。

 王国屈指の魔術師たちが協力して張り巡らせたそれは、仮に質量の大きな巨石が飛来したとしても完璧に凌ぎきるほどの防御力を有する。

 戦略級の魔法兵器でさえ、ヒビを入れるのがせいぜいだろうその結界が――わずか一撃で砕かれたのだから、そう覚悟するのも無理はなかった。

 そんな芸当が出来る存在を、彼らはよく知っている。


 この世の全ての存在に死を告げる龍――死告龍。


 ルィテ王国を護る大結界を一撃で粉砕した漆黒の龍は、大胆不敵にも王城の中庭へと直接降りてきた。

 その圧倒的な威圧感と存在感を前にしては、王宮に勤める騎士や兵士でさえ、まともに応対することが出来ない。

 その場でブレスを吐かれれば、それだけで何百といる城勤めの人間が死ぬだろうと考えれば、下手に動けないのも無理はなかった。

 幸いにして死告龍は問答無用でブレスを吐くことはしなかった。

 ただ、何かを探すように周囲に集まった人間達を睥睨するのみだ。

 そんな死告龍の元に、ルィテ王国の頂点――国王イージェルド・ルィテが進み出る。


「……如何様かな、死告龍殿」


 彼の身を包むのは国宝級の装備品の数々。

 その手に持つ杖は、魔法を補強する物品としては、世界に数えるほどしか存在しない至高の杖だった。

 しかしそれほどの品々で身を固めていても、イージェルドは死告龍に勝てないことを理解していた。

 ゆえに対話を試みる。

 相手の意図を見定めると同時に、少しでも時間を稼ぎ、一人でも多くの国民を逃がす必要があった。こうしてイージェルドが会話している間にも、彼の指示で城下町の民を逃がしているのだ。

 自らの命は捨てる覚悟で、死告龍との対話に臨んだイージェルドだったが、死告龍は思いがけないことを口にした。


『りょうりにん?っていうのが欲しい』


 幼い声音で放たれた端的な命令。

 死告龍がドラゴンの中では幼い部類であることを、イージェルドはこのとき改めて実感した。

 死告龍の存在が噂されるようになって、まだそれほど長い年月は経っておらず、死告龍が年齢的には幼いドラゴンであることは簡単に推測がつく。

 それなのに通り名が世界に知れ渡っているのが異常なのだ。それだけ、死告龍の戦闘力がずば抜けて高いことを示している。

 イージェルドはそのことを噛みしめつつ、死告龍の目的を新著云為尋ねた。


「料理人が欲しいのかい? ……理由は聞いても構わないだろうか?」


『必要だから』


 死告龍は端的に返す。

 イージェルドはその時点で詳しく理由を尋ねるのを断念した。

 他国の王族たちとの舌戦に関してならば、イージェルドも負ける気はしなかったが、今回の相手はそういった交渉術が意味を成さないからだ。

 下手に情報を引き出そうとして、死告龍の気分を損ねれば国が滅ぶ。

 ルィテにのみ存在する者を探しに来たのならともかく、料理人であればルィテ王国でなくともいい。

 そう思い至れば、死告龍は攻撃を躊躇することをしないだろう。


「わかった。我が国の誇る料理人を選出しよう。少しだけ時間をもらっていいかな? すぐに連れてくる」


 死告龍はぴくりと顔を引き攣らせたが、渋々と言った様子で頷いた。


『なるべく早く。急ぐ』


 そういってイージェルドから視線を外した死告龍は、中庭の周囲に集まって、イージェルドと死告龍が会話するのを見詰めていた兵士や騎士を見渡す。

 彼らも職務上、決死の覚悟でいたのだが、死告龍が尻尾で地面を打つと、蜘蛛の子を散らすように顔を引っ込めた。


「グルル……」


 不機嫌さを隠そうともしない死告龍は、軽く唸る。

 一瞬、口内に黒い光が滲んだが、思い直したのかその光はすぐに収まっていった。

 いまにもブレスを吐きそうな危うさを感じたイージェルドは、頬を冷や汗が流れるのを感じた。

 死告龍を刺激しないよう、兵士や騎士に見えない場所まで後退するように命じつつ、その場を離れたイージェルドは、頭をフル回転させる。


(どうする? 料理ではなく料理人を求める以上、どこかに連れて行くつもりだと考えるべきだ……だが、死告龍と相対してまともに動ける料理人など……)


 戦いが専門の兵士や騎士でさえ、死告龍の強大な存在感を前に怯えているのだ。

 普通の料理人がそんな死告龍に連れていかれて無事に済むわけがない。

 最悪、死告龍に相対した段階でショック死する可能性もある。

 普通の料理人は死告龍級の魔物と相対することを想定していない。

 そう――『普通』ならば。


「兄……いや、陛下。こちらにいたか」


 一人の候補に思い至っていたイージェルドは、まさにその候補が目の前に現れたことになんとも複雑な表情を浮かべた。

 職人らしい気難しげな相貌に、屹然とした表情を浮かべてその彼はイージェルドに声をかけていた。

 城の厨房に勤める、料理人の一人。

 城に勤める料理人は多く、イージェルドも全ての料理人の名前を把握しているわけではない。しかし、その彼については把握していた。


「ヴォールド」


 彼の名前を呼んだ時のイージェルドの声は、複雑怪奇な声音だった。

 安堵と苦悩と、その他色々な感情が篭もっていて、一言で表すことはとても出来ない。

 一方のヴォールドは普段と全く変わらぬ様子で、進言する。


「俺に行かせてく――ださい」


「……わかっているのかい。相手は死告龍なんだよ」


「だからこそ、だ。俺以上に適任はいないだろ――でしょう」


「いまは言葉使いは気にしなくていいから。不問にする」


 そうイージェルドが告げると、ヴォールドはニヤリと笑った。

 彼との付き合いが長いイージェルドはそれが微笑みの類いであるとわかったが、わからぬ者が見れば不敵すぎる笑みだ。

 ヴォールドは片手で頭を搔く。


「そう言ってくれると正直助かるぞ。兄貴に対して畏まった口調は、どうにも違和感が強くてなぁ」


「こら。そこまで砕けるんじゃない。いまのお前は弟ではあっても、王族ではないんだからな」


 そう窘めつつ、ヴォールドがそういう人間だとよく知っているイージェルドは、諦めていた。

 城の厨房に勤める料理人・ヴォールド。

 彼はその我が道を行く破天荒な性格に育ち、王族に最も必要とされる交渉力を欠如しており、料理という道を究めたいという目標を持ってしまったことから――その王位継承権を放棄し、王族という身分を捨てた存在だった。

 王族であったときの名をヴィグォルドという。

 現国王イージェルドの弟であり、軍事部門の責任者であるオルフィルドの兄だ。

 彼はヴォールドと名前を変え、一介の料理人としてルィテ王国のために働いている。

 ちなみに、後にイージェルドの娘であるテーナルクが料理をしていると告げた際、イージェルドが苦い顔をしたのは、料理に傾倒する余り王位を捨てたヴォールドの存在があったためである。


「で、兄貴。どうする? 早くしないとまずいだろう?」


 ヴォールドはイージェルドの複雑な心境を知ってか知らずか、そう問いかけてきた。

 イージェルドは腕を組んで考え込みながらも、答えはほぼ出ているようなものだった。


「……確かに、死告龍と相対して死なずにいられそうな料理人は、お前くらいなんだよなぁ」


 ヴォールドは王位継承権を捨てたが、捨てるまでは王族としての教育や鍛錬を積んでいた。残念ながら政治的な能力は開花しなかったが、代わりに彼は純粋に強かった。

 魔法に関してはイージェルドの方が高度なものを会得していたが、代わりにヴォールドは体術においてはイージェルドには出来ない水準のものを体得している。

 現国王たるイージェルドは貴重な装備品を身に付けているため、実際の戦闘ではイージェルドに分があるが、素のままの戦闘力でいえば、勝るとも劣らないものをヴォールドは有しているのだ。


(そういう意味では、いまこの瞬間こそ、ヴォールドを最大に活かせるかもしれないな)


 ヴォールドは強い。

 しかし、継承権を放棄したとはいえ、元王族である彼は気安く表に出すことの出来る存在ではなく、国としては『万が一の時のための切り札』という役割しか与えられなかった。

 だが死告龍という国の危機であるならば、その切り札を切る理由になり得る。


「……うん。やはりここはお前に行ってもらうしかなさそうだ」


 イージェルドは総合的に考えてそう判断を下した。

 ヴォールドは野性味溢れる顔で、にやりと笑う。


「ああ、任せておいてくれ。なあに、料理人を求めるってことは殺す気はないんだろう。もしかすると、俺が死告龍の胃袋を掴んで懐かせてしまうかもしれないぜ」


「ははっ。そうなったらいいけどねぇ……まあ、無理はしないでいい。不興を買わないように気をつけてくれ」


「もちろんだ。俺も死にたくはないからな」


 イージェルドとヴォールドは頷き合い、死告龍の待つ中庭へと向かった。

 待たせていたのは短い時間だったが、死告龍にとっては長い時間だったようだ。

 イライラと尻尾を地面に叩きつけていたが、イージェルドの姿を認めるとぴたりと動きを止める。


『やっと来た。おそい』


 ぴりぴりとした苛立ちの波動を受け、イージェルドは内心肝が冷える。

 王族の矜持として表に出すことはしなかったが、普通の人間なら全身から冷や汗が流れて止まらなかっただろう。

 一方、そんなイージェルドの隣に立つヴォールドは、いつもと変わらぬ様子だった。


「お初にお目にかかります、死告龍。私が料理人のヴォールドと――」


 外行きの口調と振る舞いで挨拶をしようとしたヴォールドだったが、死告龍が口を開いて首を伸ばし――端的に言って噛みついて来たため、思わず全力で避けた。

 目の前でガチンと牙と牙が当たる音を聞き、さすがのヴォールドも青ざめる。

 外したことを知った死告龍は、苛立ちを募らせる。


『なんで、避けるの?』


「いやいやいや! 誰だって避けるわ!」


 思わず素のままの言葉遣いで死告龍に抗議したヴォールドに、傍で見ていたイージェルドは青ざめた。

 だが、幸いそれが死告龍の怒りに触れる前に、『あ』と口を開け、死告龍は何か思い出したようだ。


『そうだ。人間はくわえて運んじゃダメなんだった』


 ただ運ぼうとしていたことを知り、一瞬安堵が広がる。

 その安堵を握りつぶすように、死告龍は前脚で器用にヴォールドを掴みにかかった。

 今度は避けられなかったヴォールドは、再度声をあげる。

 とっさに身体強化の魔法などをフル活用して耐えられるヴォールドでなければ、掴まれた時点で重傷だっただろう。


「いででで! だ、からっ、殺す気か!? 力加減を考えてくれ!」


『むー、うるさい。……これでいいの?』


 言うことを聞いたというには渋々だったが、一応力は緩めたようで、ヴォールドは安堵の息を吐く。

 その頬には一筋の冷や汗が流れていた。


「俺じゃなかったら、内蔵飛びだして死んでたぞ……おぉっ!?」


 ヴォールドの台詞が終わるのも待たず、死告龍は翼を広げて空へと舞い上がる。

 イージェルドはそれを呆然と見送るしかなかった。

 文字通り嵐のように去って行ったのを確認すると、深く息を吐く。


(まあ、あいつならなんとかしてくれるか……頼むぞ)


 気持ちを切り替えたイージェルドは即座に周りの者に命じ、退去命令の撤回と結界魔法の張り直しなどの指示を出していく。

 後始末にかかる苦労は甚大だった。

 そんな負担をルィテ王国にかけた気などさらさらない死告龍は、ヴォールドを掴んだまま高空を高速で移動する。

 魔法を使って環境に適応したヴォールドは、死告龍に尋ねてみることにした。


「なあ、どこに向かってるんだ?」


『お婆ちゃんのところ』


「……まさか始祖龍のことか?」


『なにそれ?』


「……あー、山のように巨大なドラゴンのことなんだが」


『そう呼ばれてるの? お婆ちゃんは確かに山みたいにおっきいけど』


 ヴォールドは人間の間で最大最強のドラゴンと呼ばれているドラゴンの元に連れていかれようとしていると知り、思わず遠い目になった。

 死告龍にも怯まないヴォールドではあるが、恐怖心がないわけではない。


(冗談じゃないな……俺でも震えが来るってのに……料理長のじいさんを行かせなくて本当に良かった)


「そこで何をさせたいんだ?」


『餌を……いや、りょうりっていうんだっけ? それを作って』


「食べたいのか?」


『違う。食べさせたいの』


「……始祖龍に?」


 話の流れ上、仕方なかったがヴォールドはそう尋ねた。

 だが、死告龍は話がうまく伝わらないことに苛立ってしまう。


『ちーがーうー! 行けばわかる!』


 ヴォールドはこれ以上聞き出そうとすると無闇な刺激になってしまうと判断し、質問を止めることにした。


(行けばわかるっていうなら、いますぐ聞き出すこともないか)


 ほどなくして、死告龍に連れられたヴォールドはとある山の一角にたどり着いた。

 そこは相当数のドラゴンの気配がそこかしこから漂ってくる、魔境も魔境だった。

 ヴォールドは人間であるがゆえに気配だけではそこまで影響は出なかったが、気配に敏感な魔物などにしてみれば恐怖の対象でしかないだろう。

 まだマシなヴォールドでさえ、全身を走る悪寒に気が遠くなったほどだ。

 その山の一角。死告龍が入れる大きさの洞窟の前に降り立った死告龍は、ヴォールドを無造作にその場に放り捨てる。

 周りの気配に気を取られていたヴォールドは、受け身も上手く取れずに地面に投げ出された。


「どわっ! おまえな……! 乱暴に扱うのもいい加減に……」


 一言文句を言ってやろうと口を開き賭けたヴォールドだったが、その前に視線を観じて残りの言葉を飲み込んだ。

 視線を感じた方向――洞窟の入り口付近に、目を引く二人の女性の姿があったから。

 こうして彼は出会ったのだ。

 背中から薄い羽根の生えた妖精と思わしき者と、もうひとり。


 白い布を腰に巻き付けた、ただの人間にしか見えない――清澄聖羅に。





 上空から八つ首の竜に斬りかかったヴォールドがその手に握っていたのは、彼が愛用する包丁だった。

 その包丁自体は立派なものだったが、巨大なドラゴンの首を切るにはとても長さが足りない。

 とはいえ、それはあくまで物理的な話で、魔力を乗せた一撃の攻撃範囲は刃渡りの長さだけに留まらない。

 斬撃の勢いに合わせ、八つ首の竜の首に深い傷が刻まれる。


『ぬグゥッ!?』


 突然走った激痛に八つ首の竜が唸り、攻撃してきた者を迎撃しようとしたが、その前にヴォールドは次の攻撃に移っている。

 長い首を伝って移動し、回転しながら、八つの首を高速かつ連続で切りつけていく。

 瞬く間に無数の傷を作った八つ首の竜の全身から、血が噴き出した。

 首の切断までは至らない傷ばかりだったが、浅くもない。

 ヴォールドの猛攻に、その巨体がぐらりと揺らいだ。気付けば、八つ首の竜の翼にも裂傷が走っている。


『糞がッ!』


 八つ首の竜の全身から黒い霧が滲み出した。

 即死の力を全身に纏っているのだ。全身に分散している分、低い確率ではあるが、触れた者は即死させられる可能性が生じてしまう。

 ゆえに、ヴォールドは即座に八つ首の竜の身体から離れた。優位な位置取りを躊躇無く捨てることが出来るのは、戦い慣れている証拠だ。

 高空から体勢を崩すこともなく、地面に降り立ったかと思うと、素早くオルフィルドの側に移動する。


「やっぱ硬いな。一本に集中した方がよかったか?」


 包丁を振るってこびり付いた血を払いつつ、ヴォールドがぼやく。


「どっちにしろ切断までには至らなかっただろう。十分だ」


 軽い調子で言葉を交わしつつ、オルフィルドは中空に魔方陣を描き出していた。

 そこから放たれた光が、空中に捕らえられていた聖羅とヨウへと放たれる。

 その光は、彼女たちを捕らえている結界に干渉すると、その結界にヒビが入った。


『解除魔法か……! おのれ、人間如きがッ!』


 怒り狂う八つ首の竜が、再び魔法とブレスを放とうとする。

 だがそんな彼を牽制するように、ヨウの眷族達が一斉に攻撃に動いた。

 八つ首の竜はそちらの対処に追われ、オルフィルドの魔法を止められない。

 程なくして聖羅とヨウを包み込んでいた結界が完全に砕ける。

 聖羅を抱き抱えながら空を飛ぶヨウは、全身から憤りを滲ませていた。


『散々好き勝手にやってくれたわね――お返し、するわ』


 聖羅を片手で抱えながら、ヨウが空いた片手を振るうと、周囲の森の木々が一斉に動き、その枝の先からレーザーのような魔法攻撃が八つ首の竜へと殺到する。

 それらを魔法で防御する八つ首の竜だったが、劣勢なのは明らかだった。


『ぐぅぅ……! おのれおのれおのれ!』


 八つ首の竜が吼えたかと思うと、その巨体が陽炎のように揺らぐ。

 誰もが逃げる気かと思い、追撃の構えを取った。

 だが、八つ首の竜は人型に転じると、まっすぐ聖羅とヨウに向かって飛ぶ。


『ッ! しまった!』


 咄嗟にヨウは魔法障壁を張って突撃を防ごうとしたが、八つ首の竜が即死属性を纏わせた拳を振るってその障壁を打ち消し、さらにヨウの胸部に蹴りを入れて地面に向けて吹き飛ばす。

 その衝撃に、ヨウは抱えていた聖羅から手を離してしまっていた。


「ヨウさん……!」


 フリーになった聖羅が自由落下する寸前、人型の八つ首の竜がその身体をつかみ取る。

 追撃しようとしていた他の者達は、聖羅がいるために一瞬攻撃を躊躇してしまった。

 その隙を逃す八つ首の竜ではなく、聖羅を抱えたまま再び高空へと飛び上がる。

 遙か上空に達したところで、聖羅ごと忽然とその姿を消してしまった。


「セイラさんが、攫われた……!」


「てーなるん! 周囲を警戒するにゃ!」


 呆然としかけたテーナルクを、ルレンティアが叱咤する。

 それと同時に、周囲から迫ってきていた死告龍の眷族達が現れた。

 気付いていたのはルレンティアだけではなく、イージェルドたちもだった。すでに戦闘態勢を整えている。


「やれやれ、一難去ってまた一難、か」


「イージェルド、援護頼むぜ。こいつらさっさと倒して、あいつのあとを追わねえと」


 八つ首の竜の支配下にあると思われる眷族たちは、一斉に彼らに向かって襲いかかって来た。

 激しい戦いが繰り広げられる中、事態はさらに深刻な方向へと向かっていた。


つづく

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