第97話 旅の再開
はい、どーもー。咲也でーす。
異世界生活、飛びに飛んで、二百八十五日目……だよな?
三か月に及ぶ修業も終わりを迎え、俺はマジで逞しくなった。ラ〇ザップも真っ青だ。
引き締まっても太ってもいなかった俺の体は、細マッチョとでも言おうか、人前で脱いでも恥ずかしくない体へと変化していた。
技や戦いの技術、それと師匠の気分次第でたまに豆知識を教えてもらい、体が疲れたら回復、心が疲れても回復と、どういう術なのか分からないが、ゾンビのように不滅な日々を送って来た。
鬼神さんが言っていたように、大型犬サイズのモンスター相手に勝てるレベルにはまだ遠いようだ。
だが、中型犬サイズならやり合って逃げ切れるかもしれないし、小型犬サイズとならマトモにやり合える自信が付いた。
今ならフレイとフレイヤとだって、ある程度本気の組手が出来るかもしれない。
まあ、あの二人の底力が分からないから、それは言い過ぎか。
そんなわけで、このわけの分からない鬼神との、わけの分からない日々も……
「今、何か失礼なこと考えなかった? もう一世、延長する?」
この素晴らしい日々も、終わりかー。名残惜しいなー。
てゆーか、何故考えてることが分かるんだ?
「だって、咲也君、単純だから」
誰が単細胞やねん。てゆーかアルル様みたいに心の声で会話してないか、これ?
「そこまで万能じゃないよ。今はよく分からなかった。それより、今後の予定は?」
ええと、先ずはこのジンブルム連邦を……
「いや、それは読めないって。ちゃんと喋りなさい」
「ああ、すみません。つい。このジンブルム連邦を出て、北の“キルトナキア”へ向かいます」
「ああ、それは可哀想に……。あそこは今、一年で最も寒い時期のはずだから……」
マジすか!? 今いる辺りは熱帯~温帯の地域だから分からなかったけど、日本で言うと真冬の時期なのか?
てゆーか、そんな時期に重なったのは修業のせいでもあるのだけれど。
「それはごめんよ? まあ、いくら寒くても死にはしないから、大丈夫さ」
この人の大丈夫って口癖も、すっかり慣れてしまった。
てゆーか、また心の声と会話してるし。
ただまあ、この修業の乗り越えられた後となっては、何が来ても怖くはないな。
……いや待て、寒過ぎたら死ぬよね? 何が来ても、ではなかった。
「君の場合、てゆーか、が口癖かもね?」
「あなた実は、読心のスキル持ってるでしょう?」
「はっはっはっ、まさか。それより咲也君、修業はこれで終わりだけど、修行はずっと続けなさいね? 武の道に終わりは無いのだから」
「分かってます。身に付いた技を失うことの無いよう、精一杯励みますので。ご指導、ありがとうございました!」
「いえいえ、どういたしまして」
なんだかんだ言って、こんな達人から教われる機会なんてもう二度と無いだろう。
アルル様の考えた通り、この選択肢は良かったのかもしれないな。
そんなことを考えながら、帰りの船へ乗り込み、元いたエクサバーン島へと戻ることが出来た。
因みに、修業中の食料などは鬼神さんが用意してくれていた。
どこから持って来ているのかと思っていたら、彼一人だけなら海の上を走って渡れるらしく、他の島で調達してきていたらしい。
双子の言っていた通り、もう人間ではないよね、この人。
そんなわけで、前以って船を予約して来てもらったらしく、その船で戻りついた俺は、およそ三か月ぶりに元通りの生活を始めたのだった。
……
……久しぶり過ぎて、船の乗り方の手順を忘れていたことは、秘密だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
なんだか懐かしさすら覚える町を楽しみながら進み、一つ島を経由して、この国の中心となるチバイ島という大きな島へと上陸した。
今更ながら、まだジンブルム連邦にいるんだよな、俺。
確かこの国に入ったのって百五十日目くらいだったと思うから、修業含めると五か月近くも居たことになるのか? 凄いなあ。
流石世界一広い国、とも思ったのだが、よくよく考えたら、この旅を総括しているのはアルル様だ。
神様には未来も見えるらしいのだから、この修業の日程も織り込み済みだったんじゃないだろうか?
『はい。だから言ったじゃないですか、「私を信じてください」って』
それならそうと説明してくれても良かったのに。
『先に説明したら、咲也さん、確実に逃げ出していたでしょ?』
はい、もちろん。
『だからです』
まあ、いいか。なんとか死なずにここまで強くなれたんだし、ラッキーぐらいに思っておこう。
不思議と双子の時のように二度と御免だ、みたいなことにはならなかったから、鬼神さんは人への教え方もまた、達人級ということなのかもしれないな。
『人の心を操るのが上手いとも言いますが』
さあ、あまり深く考えずに、次だ次!
『おっと、次に向かう前に、お伝えすることがあります』
うん? 改めてどうしました?
『今回のことで、スキルの熟練度もたっぷりと貯まったようですよ。あとでチェックしてみてください』
ああ、そういえば。
修業に明け暮れていたせいで、ほとんどチェックしてこなかったからなあ。
せいぜい、所持ポイント数を確認するくらいだったし、ちょっと楽しみだ。
そういうわけで、さっさと宿屋へと泊まり、カードのチェックをしてみる。
すると……
《疲労回復促進・中》
《体力強化・中》
《脚力強化・中》
《免疫力上昇・中》
《睡眠促進・中》
《睡眠回復効果上昇・中》
魅了耐性以外の所持スキル全てに、上位互換である“中位”が出現していた。
しかも熟練度が貯まり切っているのか、どれも必要ポイントは一桁で済むというオマケ付きだ。
速攻で上書きを行う。
【《疲労回復促進・中》を取得しました。《疲労回復促進・下》に上書きされました】
【《体力強化・中》を取得しました。《体力強化・下》に上書きされました】
【《脚力強化・中》を取得しました。《脚力強化・下》に上書きされました】
【《免疫力上昇・中》を取得しました。《免疫力上昇・下》に上書きされました】
【《睡眠促進・中》を取得しました。《睡眠促進・下》に上書きされました】
【《睡眠回復効果上昇・中》を取得しました。《睡眠回復効果上昇・下》に上書きされました】
更に、リストの必要ポイントの低い範囲には、新たなスキルも追加されていた。
今回頑張った自分へのご褒美と言わんばかりに、取れそうなものは取っておく。
【《精神力強化・最下》を取得しました】
【《狂化耐性・最下》を取得しました】
【《混乱耐性・最下》を取得しました】
【《薬物耐性・最下》を取得しました】
【《消化吸収促進・最下》を取得しました】
【《消化吸収力上昇・最下》を取得しました】
【《精力強化・最下》を取得しました】
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【《取得経験値+・最下》を取得しました】
なんか、精力強化とかも混じってしまったけど、まあいいや。
三か月も経過した割に、取得ポイントは前回ほど増えてはいなかった。人と触れ合わなかった分、善行もしてなかったってことかもしれない。
今回の大量取得で、珍しく二百ポイント以上を使ってしまったし、暫くはまた貯蓄かな?
そうして、このチバイ島でゆっくりと休息を取りつつ、旅を本格的に再開させていく。
異世界生活三百三日目に、俺はとうとう長く滞在したこの国を出て、十番目となる“キルトナキア”へと入って行ったのだった。
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現在の保有ポイント:
991+51-27-196=819
(うち、Pバンク:800)
累積ポイント:
51575+51=51626
(次の特典まで374P)
スキルの取得関係については、あまり気にしないでください。
投稿はまだ続きます。




