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第56話 スキル発生……せず

本日もよろしくお願いします。


「えっと……どういう……?」


 二人の言葉の意味がよく分からず、首を傾げる。

 二人はこれまでに見たことのないような苦笑いで、お互い無言で意思疎通をしていた。

 双子ゆえに相手の考えが読めるのだろうが、独り置いてけぼりの俺には、さっぱり分からない。


 才能無い? まだ、三十秒ぐらいしか動いてなかったと思うけど?

 それじゃあ、また冗談か?


 だが、二人の雰囲気から察するに、そんな感じではない。


 ということは、まさか……?


「もしかして、そのままの意味で……?」


「あ、うん。あれだ、その……」


「鍛冶職人とか、商人とか、航行士とか、可能性はまだまだあるから……」


「気を遣わないで! 優しさが痛い!」


 ショックだった。

 これから強くなろうと思ってたのに、出端を挫かれた形だ。

 一気にトーンダウンだよ。


 これから宿題やろうと思ってたのに、宿題やりなさいって言われて逆にやる気を無くした子供と一緒だ。

 いや、違うか?


 だが、解せぬ。まだそれほど時間も経ってないのに、何故だ?

 二人がいくら強いとは言っても、そんな一瞬で見抜けるはずが無いじゃないか。

 これはやっぱり、冗談なのか?


「納得いかないって顔だな」


「だけどな、サクヤ?」


 二人は、冗談などではないと一目で分かる、真剣な眼差しだった。


「お前の年頃で、その動きは……」


「……お粗末過ぎるんだよ」


「少なくとも、戦う術を身に付けるということでは……」


「……才能は感じられないな。諦めてくれ」


「ちょっ、待って! だって、まだほんの少ししか経ってないじゃないか! この先、伸びる可能性とかは……?」


 必死に訴えてみたものの、二人が何か根拠があって言っているのは薄々感付いていた。

 この短時間で見抜けた、何かが。


「サクヤ、お前……」


「……スキルは使っていたか?」


「え? いや、使うって、何を?」


「「やっぱり」」


 その話の流れが何を意味しているのかすら分からず、頭に疑問符を浮かべていた。

 そして双子から、衝撃の事実を告げられる。


「サクヤ、落ち着いて聞けよ?」


「普通、その歳まで生きてきてたら、何かしらの身体強化系スキルが生えるもんなんだ。戦いに身を置く、置かない、関係無くな」


「そして、少しでも才能があれば、さっきお前にやらせた動作とか武術の型、あれで何かしらの初期(・・)スキルも生えるはずなんだ」


「だけど、俺らにそれっぽい動きで攻撃してきたにも関わらず……」


「……なんの芽生えも感じられなかったんだわ。つまり……」


 ……つまり?


「「才能が皆無」」


「さっきより酷い!?」


 皆無、て。

 俺は異世界人だったから、来て間もないのが原因なのでは? 

 だが、何もスキルが発生していないのは、本当に才能が無いからなのかもしれない。


 未だ現実を呑み込めずにいる俺に、二人が気を遣ってくれる。


「いっそ、そこまで才能が無いなら、スッパリ諦められていいじゃねえか、逆に」


「そうそう。無駄に鍛錬とかに時間を割かなくても、その分を他のことに回せるから、得だぜ? 逆に」


「だから、優しさが辛いって! 逆って何だ!?」


 俺の心のHPは、ガンガン減っている。

 スキルの存在するこの世界って、分かりやすくていいと思っていたが、こんな残酷な場合もあるんだね。


 そこで、ハッと気付いた。

 そうだよ、俺にはポイントカードがあったんだった。

 もしかしたら、そこで戦闘職系のスキルが得られるんじゃないか?


『止めておきなさい』


 希望が見えたと思ったのだが、急に神様からのストップが掛かってしまった。

 何故?


『さっきまでスキルの気配が無かったのに、突然取得して使えたら、確実に不審がられます。自然に覚えないなら、今は()()、止めておきなさい』


 そ、そんなー。

 それじゃあやっぱり、俺には才能が無いのか?

 落ち込む俺に、今度はアルル様からフォローが入れられた。


『ですが、例え自然に取得出来なかったとしても、鍛錬や経験は必ずあなたの力になります。どうか、続けてみてください。あなたは転生者ですから、その辺は常識に囚われ過ぎなくてもいいかと』


 その言葉は、救いだった。

 他でもない神様からの助言だからというだけでなく、モチベーションを失いかけていた俺を前向きにさせてくれるちょうどいい言葉でもあったのだ。

 この世界に来て間もないのだから、今は諦めずに努力を続けて、いつかは……。


「ごめん、二人とも。俺に才能が無いのは分かったんだけど、それでも、俺を鍛えてくれないだろうか?」


「は? マジで?」


「時間の無駄かもしれないぞ?」


「うん。それでも、諦めたくはないんだ。例えスキルが取得出来なくても、何も得られないってわけじゃないだろ?」


「ああ、経験は力になるからな」


「まあ、お前がそれでいいなら、俺らは構わないぜ?」


 良かった。

 迷惑は掛けるだろうけど、二人から吸収出来るものは大きいだろうし。


「無能を鍛えるなんて初めてだし、俺らも何か得られるかもしれないな……」


「何の進歩も見られなかったら、死なない程度に扱いてみるって手もアリかもな……」


 おおい? 今、ボソッととんでもないこと言ったな?

 無能って、これまでで一番酷くね?

 死なない程度にってのはアリじゃない。ナシだろ?

 ねえ、二人とも、目がマジなんだけど、冗談だよね?

 わ、笑いながら、にじり寄って来ないでほしいんだけど……?


 背筋に寒気を覚え、命の危機すら感じたので、振り返って全力で走り出した。

 モンスター以来となる、全力の逃げだった。



 だが、二人の方が足が速い。


 ▷回り込まれた。咲也は逃げられなかった。



 またしても二人に無理矢理連れ戻され、俺の修行は再開された。

 最早、俺の意思は関係無くなっちゃった。

 二人によるスパルタ特訓が幕を開けたのだった。



 アッーー!



最後の一文は、作者がふざけただけです。

ただのスパルタに対する悲鳴です。深い意味はありません。


次話の投稿は、6月5日の18時頃の予定です。

よろしくお願いします。

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