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第31話 カオス

少し遅くなりました。本日二回目です。


今話もよろしくお願いします。


「それで、仮にこの白金貨が本物だとしたら、何故貴族でもないあなたが持っているのかしら?」


 一旦どつかれた後、元の位置に戻った二人が、再び俺に問いかけてきた。


「それは……内緒です。けど、悪いことして手に入れたってわけではありませんから、安心してください」


「まあ、そこまで突っ込んで聞きたいわけじゃないから、そこはいいんだけど。もう一つ、その貴重な白金貨を、会って間もない二人の前に差し出した理由は何ですか? まさか、うちの事情に同情したので全財産をあげますってわけじゃないでしょう?」


「それはさっき言った通り、力になれればと思っただけです。あと、それが全財産ってわけでもないので、安心してください」


「さっきから、全然安心出来ねーよ!」


 何故か、俺は責められているようだぞ?

 シュリにも盗んだから大金持ってるのかと言われたことがあったな。

 状況的にそう疑いたくなるのも無理はないけども。


「はあ……あなたの様子を見るに、これが本物の白金貨だというのは信じましょう。話も進まないし。でも、いくら大金を積まれたところで、シュリちゃんはうちで引き取ることは出来ないの。分かって?」


「あれ? さっきも言いましたけど、シュリはもういいんですよ。他で探すことにして、それとは別に寄付をしようと思っただけですから」


「え? だって、それなら、こんな白金貨なんて出す必要は……」


「もしかして、足りないですか?」


「お前、馬鹿なの!?」

「あなた、馬鹿なの!?」


 おお、ハモった。息ピッタリだ。

 それはいいけど、また馬鹿って言われたんですけど。酷くない?


「いやいや、何の縁も無いこんな孤児院に、ポッと来てポッと大金寄付するやつがどこにいるってんだよ?」


「え……? ここ、ですかね?」


「姉貴、分かったぞ。こいつ、本物の馬鹿でお人好しだ!」


「ええ、間違いないわね!」


 ちょっと、姉弟揃って酷過ぎない? 流石に傷付きますよ?


「も、もう一回確認させてもらうわね。シュリちゃんをここで預かれないのはいいのよね? それで、あなたはうちの院には恩も義理も無いわけだけど、金貨でも大金貨でもなく、白金貨を寄付したい、と。この内容におかしなところはないかしら……?」


「はい、ありませんけど?」


「あるって言ってよ!」

「あるって言えよ!」


 おお、またハモった。すごーい。


「なんだか頭が痛くなってきたわ……。私は疲れて白昼夢でも見ているのかしら? それとも、新手の詐欺師に引っ掛かっているの?」


「姉貴、大丈夫だ。これは夢じゃないし、目の前のお人好しは確かに存在してる。俺の目から見ても間違いなく詐欺師じゃないし、こいつは恐らく本気で言ってるだけの阿呆だ」


「もー、さっきから酷いですよ。馬鹿とか阿呆とか詐欺師とか」


「ああ、ごめんなさい。あまりに現実離れしたことが起きてて、処理しきれないのよ。状況的にこの白金貨は作り物のはずなんだけど、あなたを見てるとどうも本物に思えるのよね……」


「さっき、話が進まないから本物と信じるって……」


「これが本物ならとんでもないことだから、必死に作り物だと思うことで心を落ち着けているのよ。現実を受け入れるまで、少し時間を貰えるかしら?」


 ああ、確かに元の世界でも急に目の前に札束置かれたら現実逃避しちゃいそうだ。

 何かごめんなさいと言った方がいいだろうか?


 そもそも院長さんが言った通り、何故大金貨などではなく白金貨なのかというと、単に持て余していたからなのだ。

 金貨、大金貨は日本円なら十万、百万円なので使いようはあるかもしれない。両替できれば、尚更。

 だが、白金貨はそれ以上の価値だと思われる。なので、安易に人前に出すのも憚られる。

 今? 今は別ですが何か?


 それ故に、寄付をするなら死蔵品の処分を兼ねてこの白金貨が最適だと思えたのだ。

 この上には天金貨とかいう硬貨の形ですらないラスボスが待ち構えてはいるが、それはマジ死蔵で構わないと思う。人前に出しても今以上に作り物と思われて終わりそうだし。


「でも、この孤児院には恩も義理も無いって言いましたけど、取調官さんと院長さん個人には恩も義理もありますし、それで……」


「白金貨貰えるほどのことした覚えはねえぜ? お前を命がけで助けた上に、超高級な宿で全力でもてなしたんならまだ分かる。けど、適当な部屋でほったらかしにしたくらいだぜ? 釣り合わねえだろが」


「いえいえ、牢屋に比べたら本当にありがたかったです。院長さんに助けてもらえなかったらシュリの本音なんて聞かずにさよならだったかもしれませんし、釣り合うどころかお釣りが……」


「俺は分かったぞ、姉貴。こいつは馬鹿なんかじゃねえ。頭がおかしいんだ」


「はあ、そのようね」


 もう、何言われてもいいよ。馬鹿でも阿保でも狂人でも。


「因みに、なんだけど。金貨の価値って知ってる? 銀貨何枚分だと思う?」


「え? 銀貨だと百枚分じゃないですか? 小金貨だと十枚分ですよね?」


「じゃあ、大金貨って金貨だと何枚分だと思う?」


「金貨十枚分ですよね?」


「それじゃあ白金貨の価値は御存知?」


「うーん、実は知らないんですよね。お恥ずかしい」


「そう! なら納得がいくわ! 価値を知らないからこんなにポンッと出せたのね? じゃあ、よく聞いて! 白金貨っていうのは、金貨で言うと……」


「多分、大金貨十枚分だとは予想していたんですけどねー」


「もー嫌! 何なのこの子! しっかり分かってるんじゃない! 私、おうち帰る!」


「落ち着け姉貴! ここがおうちだろうが!」


 お、合ってたみたいだ。白金貨は一千万円の価値なのか。

 良かったー。これで、実は十円でしたなんてなったらこれまでで一番の恥になるところだったよ。

 まあ、二人の反応からして、それはなかっただろうけど。


「お前、何をホッとした顔してやがる! この状況の元凶だって自覚ねえのかよ!?」


 さっきまでシュリを交えて和気藹々としていたこの場所は、いつの間にか阿鼻叫喚の混沌カオスへと変貌していたのだった。




好き放題に書いていたら、マジでカオスな状況に……(笑)

そろそろ収拾つかせて次に進めますので、どうか温かく見守っていただけると助かります。

それでは、明日の投稿もよろしくお願いします。


明日は時間未定で、二回投稿の予定です。


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