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第26話 孤児院②

本日二回目の投稿です。

よろしくお願いします。



 二人の取調官さんとの町の散策。

 やっぱり中心都市というだけあって、これまで見て来たどの町より広いし、賑わいが桁違いだ。

 商業が盛んなのはキレートレと一緒なのだが、北側の港から運び込まれた物資などを島全体に行き渡らせるための中心になっているからだろう、キレートレと規模が違っていた。

 例えるなら……



 ……いやゴメン、なんも例えが浮かびませんでした。とにかく規模が違っていたんだ。


 俺とシュリは南門から入ってきたのだが、門を入ってすぐ目の前に大きな店が立ち並んでいた。

 異世界人の俺と孤児だったシュリは、二人して「凄い大きいねー」なんて驚いていたのだが、取調官さんのガイドに耳を疑ってしまった。


「南門の前にあるのは大した店じゃねーぞ? あそこは立地があまり良くないから、商会のクラスで言えば二等地か三等地ってとこだ。確実に一等地なのは東の一角だな」


 マジっすか? あれで大したことないって? いやまあ、現代日本を比較に出すとどれもこれも大したことないって言えちゃうんだけど、それは言いっこなしで。

 話は戻るけど、素人にはどう立地が悪いのか分からない。これから島中に荷物を配達するなら、南門が近くて便利だと思うんだが、そう単純な話でもないのだろうか?

 転生したら現代日本の知識で商売成功なんてラノベや漫画を読んだことがあるが、俺には商才とか他人より優位に立てる知識なんぞは無いな。商売失敗のビジョンしか見えない。

 そんなことを考えながらも、ガイドに従って昨日立ち寄った役所の建物まで来ていた。


「あれ? ここに何か用事ですか?」


 俺がそう尋ねると、鹿似の取調官さんは溜息をついて俺の肩をポンと……いや、ガシリと掴んだ。


「あのな、身分証の無いやつが居場所不明になったら騒ぎになるかもしれないだろ? 普通、こういう時は関係各所には報告してから行くもんなんだぜ、お坊ちゃん?」


 誰がお坊ちゃんですか。そうツッコミたいところだが、バーバムで同じようなことで怒られてて正直デジャブだから、言うに言えない。保安官さん、元気カナー?

 そんなことは露も知らない取調官さんは、もう一度溜息をついて、俺の肩をポンポンと叩いた。

 もう分かりましたって。


「あれ? でも、それなら自宅で伝えて来ればよかったんじゃ……」


 その言葉に、もう一人の取調官さんが凍り付いたような気がした。

 それまで普通に歩いていたのに、急にギクシャクした歩き方になったよ?


「ああ、今朝は仕事明けには会わなかったから……って、おい。何の……話だ?」


 急に鹿似の取調官さんの目付きが鋭くなり、俺を睨み付けた。

 え? 何で睨まれてるの?


「あれ? 一緒に暮らしてるわけじゃなかったん……」


『咲也さん!』


 アルル様の声でハッと気付いた。しまった。

 誰から聞いたかを思い出し、それが説明出来ない相手だと気付いた。ヤバい。


「お前、誰から聞いた? 誰も知らないはずなんだが……?」


 取調官さんは、鹿さんとは思えない猛獣のような目付きで俺を見つめていた。鹿じゃなくて虎だったか?

 流石にマイペースのシュリも不穏な気配と恐ろしい目付きに恐怖したのか、サッと俺の背後に隠れた。

 どうしよう、これ。


「え……え、えーと、昨日の二人のやり取りを見てて感付いた……というか、勝手にそう思っちゃっただけなんですけど……。ま、マサカ当タッチャウトハー!」


 虎の瞳は変化することなく、俺を捉え続けていた。

 あ、これ終わった……?


 そう思った俺に、思いもよらぬところから救いの手が差し伸べられたのだった。


「まあ、見たら分かるよな。バレてないと思ってるのは本人たちだけで、周りは結構知ってるし」


 もう一人の取調官さんが、サラリと言った。

 今度は逆に、鹿似の取調官さんが凍り付くのが分かった。

 笑っちゃ駄目だと分かるが、つい笑ってしまいそうだ。我慢、我慢……プッ。


「な、なっ……!? いつから……?」


「あー、すまん。付き合うのが決まって上機嫌に酒場で飲んでた時から」


「最初も最初じゃねーか!? なんで!?」


「いや、お前分かりやす過ぎるから。急に普段着ない正装したと思ったら花束持って緊張してるし」


 ああ、憐れ。こうはなるまいと心に誓いました。まる。

 鹿似の取調官さんは往来で「そ、そんなバカな……」と項垂れた。ご愁傷さまです。


 だがしかし、そこは大人。数分としないうちに「バレてんならしゃーない」とあっさり復活した。

 昨日と同じ感じで役所の彼じょ……もとい担当官さんに話しかけていた。すげえ。


「なんだったの?」


 シュリは分かっていないのか、キョトンとしているみたいだった。

 そう思ったのだが、「コイビトなんでしょ? なんで隠してるの?」と核の部分はしっかり分かっていた。

 女の子って皆こうなのか?


「あんたなあ、いきなりプライベートなトコ弄ってやるなよ。 まだそういう塩梅は分からないのかもしれないが、次から気を付けろよ? 折角の面白いネタが、これでパーじゃないか」


 こっちの取調官さんもいい性格してるー! 鹿似の取調官さんを見守って楽しんでいたのね。

 みんな、大人だナ~。

 うん、でも迂闊過ぎた。ゴメンナサイでした。


 そんなこんなでスタートから躓いた感があったが、役所の件が無事に済み、漸くガイド開始となったのだった。



明日も投稿します。

よろしくお願いします。

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