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第188話 ココナの新たな機能

本日もよろしくお願いします。



「……よく分かりました。確かに使っていない空き室だけれども、私に相談も無しに……ブツブツ……」


「コ、ココナ……さん……?」


「こっちの話よ。チッ!」


「ヒエッ……」


 ココナが、ちょっと怖い。


 アイミスさんから改めて詳しい話を聞いたココナは、一気に機嫌が悪くなっていた。

 その理由は、説明を聞いたら俺にも納得出来るものであった。

 新機能が、ココナの意思を無視したものだったからだ。


「どういうつもりなの……? え、メッセージ?」


〖女神アルルよりメッセージが届きました。『そういえば、故郷の料理で「スプメイロ」ってありましたよね? 大好物だったと思いますが、それがこの星でも、いつでも好きな時に食べられたら幸せだと思いませんか……?』……メッセージは以上です〗


「咲也さん、無問題よ! バンバン活用してちょうだい! クフフッ、久々にアレが食べられるだなんてッ♪」


 今のメッセージ、どんな内容だったの!? さっきまでと別人なんだけど!?

 そっちもすごく気にはなるが、とにかく新機能については納得してくれたってことで良い……のかな?



 さて、本題のココナのスキル《ナビ》の新機能だが、正式には「個別管理空間への外部からのダイレクトリンク機能及び、生態ごとの適正環境調整機能」と言うらしい。なげーわ。

 長過ぎるので、簡略化して「個室機能(マイルーム)」と呼ぶことにする。


 つまりは、ココナの巻貝の中の空き空間に、外部から自由に出入り出来るチート機能らしい。

 しかも、その名の通り「適正環境」を自動調整してくれるのだとか。


「ココナ、俺にも一部屋お願いします!」


「咲也さんは駄目!」


「なんでだよ!? オロク一家とかイチ、モモには与えるんでしょ!?」


〖女神アルルよりメッセージが届きました。『咲也さんと一つ屋根の下だなんて、ドキドキして眠れなくなりますもんね~?』……メッセージは以上です〗


「アイミス、うっさい! そこまで乙女じゃないわよ!」


「俺も適正環境に住みたいー!」


「咲也さんも駄々こねないの! これはあくまで咲也さんの仲間、モンスターとかのための機能よ。オロクさんたちにも、モモさんにだって一応与えるけど、宿なんかでは基本的には今まで通り。人目に付く時だけよ。じゃないと、万が一誰か入って来た時に大変でしょ?」


「なんの話ッスか?」


 若干カオスなニオイがして来たので、改めて仲間たちにもその機能を説明する。

 こんなチートな機能、ココナの立場が怪しまれなきゃいいけど……?


「それは素晴らしい! 感謝しますぞ、ココナ殿!」


「ありがとうございます、ココナ様」


「「わーい! ヤドカリのお姉ちゃん、ありがとー!」」


「なんですんなり受け入れられるの!? 疑問とか、いっぱいあるでしょ!?」


「いや、殿ですから」


「主様の前では、些細なことですわ」


「「上様、すごーい!」」


「なんで俺!? 今、ココナにお礼言ってたよね!?」


「咲也さん、慣れて。あなたは規格外なのよ。このパーティに起こることは普通じゃないのが普通って、皆はもう慣れて来たのよ」


「オロクたち、今日加入したばっかなのに!? 俺が一番戸惑ってるって、どういうことだよーう!?」


 そんな俺の叫びも無視され、続々と皆、自分の与えられた個別空間へと入ってみている。

 ココナ、実は俺のこと嫌いなの?


「ご主人様! 凄いッス! 是非、遊びに来てほしいッス!」


「殿! 我らの方も快適ですぞ!? 是非!」


(ボクも~。でも、ボクは今まで通りココナちゃんと一緒の部屋が一番好き~)


 そんなことを言ったイチは、当然ココナに抱き締められて攫われて行ったのだが、自分のは与えられずとも是非入ってみたいのは、こちらもだ。

 早速、モモの部屋へと入らせてもらうことにする。


「おお、素朴だけど素敵だね」


「待っててください、すぐにお茶を入れ……いえ、服を脱ぎますので!」


「オロクたちもいるから止めなさい。いや、いなくても止めなさい」


 一緒に付いて来ていたオロク一家とともに見回すが、古風な民家の一室といった佇まいだ。

 個別に調整と言っていたが、もしかしたら本人の希望通りに空間を変化させてくれるってことなのかもな。たぶん神の力で。

 恐らく、この部屋はモモの故郷のイメージから出来ているんだろう。


「ほほう、これもなかなか良いですな。では、次は儂らの部屋をご案内いたしましょう」


「うん、ありがとう」


 この機能の素晴らしい点は、(ココナ)の許可が無くても自由に出入りが出来るところだ。

 ココナの巻貝とは言えど、彼女が寝ていようが何をしていようが自由。

 ただし、この空間からはココナのいる側へは移動出来ないという制約もある。

 イチなどがココナと会うには、一度外を経由しなければならないのだ。


「どうです? 儂らの城は?」


「……素晴らしいね。俺も住んでみたいよ」


「そうでしょう! ガッハッハッ!」


 そんなお世辞を言ったものの、コレ、広大な牧場じゃない?

 機能をフル活用して空間を広げているらしいが、彼らが走り回れる広さがある以外、寝床のワラが積んであって飲み水用なのか池がある他は、何も無い。

 室内だから屋根があるのを考えると、牧場と言うより超巨大犬小屋では?


「……ミルーガたちも、これでいいの? 何も無いようだけど……」


「はい。ウチらが昔、雨露を凌ぐために入った馬小屋に似てますね。あの時の寝心地の良さは格別だったので、これで大満足です」


「「わーい! 広ーい!」」


 うん、まあいいか。当人たちが満足してるから。

 そんなこんなで再び外に出た俺は、ココナに声をかけて更なる詳細を確認した。


 この機能の部屋数は、最大で二十。

 その前に、ココナがいつものように口を滑らせて「百……いや、今の無し」と言っていたので、条件次第ではもっと増やせると考えておこう。

 個別空間を割り振れる条件は、(ココナ)が許可を出すこと。

 つまり、俺は駄目。


 さらに、(ココナ)の一存で全室に声を届けたり、出入りを一時中止にすることなども可能なのだとか。ココナというより、アイミスさんの力らしいのだが。


「チートだねえ……」


「ホントよねぇ……」


 あれ? ココナ、今の「チート」の意味分かったの?

 てゆーか、いちモンスターのこんな小さな貝殻の中に拡張空間とか、色々と大丈夫なの?


 ……まあいいや、ツッコむとまた混乱しそうだし。

 俺のスルースキルも、日々進化しているのだ。


「殿! ココナ殿! 感謝いたします! この素晴らしい空間なら、ミルーガのやつも回復しやすくなることでしょう!」


「そういえば、奥さん出産のダメージが残ってるって言ってたっけ?」


「ええ、本人はあまり言いたがらないのですが、儂から見ればそのように思えます」


「愛の力だねえ。どれ、ちょっとミルーガのとこに行ってみようか?」


 そう言って再びオロク一家のマイルームへ入ると、俺は魔法鞄から“女神印の魔法薬”を取り出し、そこで休んでいたミルーガの体に一滴垂らしてみる。

 すると眩い光が広がり、後には全快したミルーガの姿があった。


「まあ! まるで以前のように、体が軽いですわ!」


「なんと! 殿、このような恩恵、恐悦至極にございます! どう恩返ししていいものか……」


「うん、たまにその毛並みを撫でさせてくれたらそれでいいよ。あと、肉球を触ったり?」


「そ、そのようなことで良いのですか!? まあ、殿がそう仰られるのであれば……」


 なお、お疲れ気味のオロクと、私も僕もとねだって来た子供たちにも一滴ずつ垂らしてあげたのだが、後から知ったココナとモモに酷く怒られることとなった。

 奇跡の薬を何だと思ってるんだ、と。


 オロクたちも、手足まで再生する奇跡の薬と知ったら目玉が飛び出してしまっていた。

 まだまだあるから、少しぐらいいいのに。

 消費期限があるか分からないが、使ってこその薬でしょ?



 そんなわけで無事に町にも宿にも入れた俺たちは、いつものように日課を熟すことになった。

 とは言っても、流石にオロク一家までドタバタやったら宿にもバレかねないし、迷惑がかかる。

 ので、オロク一家にはマイルームで励んでもらうことにする。

 何日かに一回、俺やイチが出向いて技術交流でもしてみようか。


「この機能、例えば全員がオロク家に行っちゃうと、私だけボッチになるのは難点よね。私は自由に行けないし……」


「そういえばそうだね。でも、そうならないようにすればいいだけだし、もしそうなりそうだったら俺だけでも残るからさ?」


「……そ、それって、ふ、二人っきり!? ……ふふふッ、素晴らしい機能を得たものだわ……!」


 例えだってば。

 でも、どうやらココナに嫌われてるわけじゃなさそうで良かった。



 さて、こちらはこちらで以前の約束通りに、イチから“中位ランクの魔法”のコツを習うために彼女と向き合う。

 ついでだし、ココナとモモ、それにオロク一家にも参加してもらった。俺だけ習うのも全員で教わるのも大差無いのだし。


「そういえば、ミルーガは魔法が得意なんだっけ? どのランクまで使えるの?」


「ウチは水のアクアショットと、光のライトまでですわ。他の属性だと、プチウインドなら出せますが実戦で通用するレベルではありませんし、適正は水と光だと自負しております」


「儂は火のファイアボールと地のストーンバレットですな。他はてんで駄目でした。その二つも、彼女とは比べものにならぬ程度でして……」


「うち、プチライトを練習中~」


「僕、この前、プチファイア出せたよー!」


「あれはたまたまでしょー? ボルのくせに生意気ー」


「なんだと!? ガルル……」


「はい、喧嘩しないのー?」


 オロク一家は、オロクが火と土、ミルーガが水と光、ロルとボルが親から継承したのか、今のところ光と火が得意のようだな。


「ウチも、ウォール系の練習はしているのですが、とてもまだ……」


「ウォール系?」


「は、はい。火、水、土、風の四属性の次ランクの魔法は、ウォール系と呼ばれております。確か、ファイアウォール、アクアウォール、ストーンウォール、ウインドウォール……だったかと。光と闇の属性は、フラッシュとブラインドネス……だったと記憶しております」


「へえ、凄いよミルーガ! 詳しいんだね?」


 ということは、イチが発動したのは「アクアウォール」って魔法だな?

 それが分かっただけでも大収穫だ。


「お褒めいただき、恐悦至極にございます。ですが、ウチもそれ以上のことは……」


「いや、充分だよ! ありがとう!」


「わぅーん……♪」


 ブンブンと尻尾を振るミルーガ。感謝されて嬉しかったのか?

 ともかく、次の目標が決まったところで、改めてイチの教えを受けてみる。


(えっと……マナを練ってるとね、途中に“魔法陣”だっけ? それが浮かんでくる段階があるんだ。ミルーガさんも、それで合ってる?)


「はい。確かに、そのような気配がありますね。ですが、そこから調整するのが至難の業で……」


(うん、ボクもそうだった。でも、今日使ってみた感じだと、無理に調整しようとするよりも、流れに身を任せてその“魔法陣”とかいうのに身を委ねるのが正解みたい。吸い込まれそうになったら、その地点から先は向こうに任せるって言うか……)


「……そうか、なるほど! つまり、その段階まで行ったら後は発動段階というわけでございますね?」


(そう! そうなの! もし待機させたい時は、その付近が限界みたいでさ。それ以上行ってから制御しようとすると、暴走するみたいで……)


 わー、盛り上がってるナー。

 駄目だ、今の俺にはさっぱり分からん。

 ココナも、オロクもロルもキョトンとしているぞ。

 モモは分かってるんだかいないんだか、やたらウンウン頷きまくってるし。

 ボルは自分の尻尾を追いかけ回して遊んでる。


 どうやらこのパーティの魔法担当は、イチとミルーガに決まりだな。

 まあいいさ。俺も、自分のペースで頑張ろう。


 それからは、各自で魔法の練習や技の鍛錬に入る。俺は先にポイントカードでモンスターから得られたスキルを取得し、モモのマイルームで棒術の鍛錬に付き合ったり、オロク一家のところでオロクと手合わせしたりした。

 イチはココナに付いて魔法の特訓中のようだし、その後はロルとボルと追いかけっこして遊んだ。


 俺は魔法の鍛錬しなくていいのかって?

 いや、俺の場合は成功したら大惨事になるからな。

 イチに教わったコツは、明日外で試してみようと思う。


 だって、万が一出たりしたら、「火の壁、水の壁、土の壁、風の壁」だもの。

 光と闇の属性に関しては、未知数。


 そんなの室内で出来るかっ!



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 現在の保有ポイント:

 1685+80-410=1355

 (うち、Pバンク:1300)


 累積ポイント:

 70526+80=70606

 (次の特典まで394P)



次話は、本日午後から投稿予定です。

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