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第157話 冒険者ギルドのあれやこれや②

本日二本目です。


注)アイミスの声(〖~〗)は、咲也やイチには聞こえていません。

  ココナだけです。



「さて、それじゃあ川を渡ろうか?」


 そう言ってココナを再び頭の上に乗せ、俺は川岸に立っていた。

 ざっと見たところ、川幅は二百メートルくらいだろうか。水深はそこそこあるみたいだけど、まあ、関係無いかな。


「渡るって、どうやるの? まさか、空を飛べるとか?」


「ははは、まさか。そんなこと、まだ出来ないよ」


「……「まだ」なのね。まあいいけど、それじゃあ、どう……?」


「普通に、()()()さ」


「へっ?」


 落ちないでね、とココナに声をかけ、俺は《水の民スキル》の水上走行を使い、水の上を走って進む。

 我ながら人間離れした動きが出来るようになったものだ。

 鬼神さんに比べればこの程度、まだまだ未熟なんだけどね。


「きゃああああーーッ!?」


「まあ、水上バイクにでも乗ったつもりになって、楽しんでよ!」


「水上、バイクって、何……きゃああああーーッ!」


 あ、ヤベ。こっちにそんなもの無いのか。

 魔法で、水の上を走れるバイクがありそうなものだと思い浮かべたのだが、そもそも車やバイクが存在しないのか。

 まあ、ココナは驚いてそれどころじゃなさそうだし、慌てて訂正する必要も無いだろう。


 そんな悲鳴を聞きながらも、気配察知でモンスターが接近して来ていないことを常に確認しつつ走り続け、残り百メートルほどになったあたりで、見えていた対岸の方向に大きな魚影が姿を現した。



 ▶リバーサイド・キャットフィッシュ


 名前   [なし]

 種族   [モンスター

       〔川辺鯰〕]

 レベル  [21]

 スキル

  丸のみ、遊泳、奇襲、大食い、

  嗅覚強化・中、聴覚強化、威嚇・下、

  水属性魔法耐性・下、

  地属性魔法耐性・下、

  毒耐性・下、麻痺耐性・下、

  水属性魔法の心得


 所属   [鑑定失敗]



 観賞用の熱帯魚みたいな名前だな。

 てゆーか、スキル多っ!?


 そんな巨大鯰が、水上を走る俺に向かって口を開いて上昇してくる。

 水上を走れても、水の上で立ち止まっていられるほどにはまだ達人じゃない。このままだと、俺の体はその口の中におさまることだろう。


「き、きゃああああーーッ!?」


 だが、少し遅かったね。

 あと百メートルも無い今の状況なら、俺には――――




 バクン!




 ……バフッ?




 ――――なんの味もしなかったかい?

 そりゃそうだ。俺は、既に()()()()到着しているのだから。

 《簡易瞬動》を使ってな。


「ぜえ、ぜえ、はあ、はあ……」


「ご、ごめん、ココナ。前もって知らせない方が、楽しめるかなーって思って……」


「知・ら・せ・て!」


「……ごめんなさい」


 少しサプライズが過ぎたようだ。

 そんなココナに頭を下げていると、気配察知に反応があった。


 うわー、しつこいなあ。 


「……何? 急に川の方をじっと見て、どうし……」



 ザバア!



「……いやああああーー!?」



 俺の不意を突くように、水底スレスレから急加速で川岸に跳ね上がって来たのは、さっきの鯰だった。

 またも大口を開き、空中から俺目掛けてダイブし――――たつもりだろうが、こっちには気配察知がある。

 前もって接近に気付いていれば、躱せないものではないさ。


 《技の王スキル》でそれを余裕で躱し、バックステップで距離を取ると、ナマズはその勢いのまま顔から川辺の地面に衝突してしまった。

 だが、そこは種族名に「川辺」を冠している身。川辺で無様な姿は見せられまいと、痛みをやせ我慢しているようで、何事も無かった風にこちらに向き直る。

 あれ、人間なら確実に両方の鼻の穴から鼻血出てるよ。


「はあ、はあ、ビックリした……。今日は、心臓に悪いことばかりだわ……」


 厄日だね。

 てゆーか、今のも教えてあげれば良かったか。


「バフン、バフン!」


 大口を開けたり閉めたりして、こちらを威嚇してるつもりらしい大ナマズ。

 胸ビレを使って器用に立ち上がっているが、陸上では不利だろうに。頑張るなあ。


 そんな鯰相手にも、仲間交渉は一応試みてみる。


(仲間? 俺様の腹の中なら、格安の家賃で貸してやってもいいぞ! ガハハハハッ!)


 想像と違って流暢に喋るなあ。

 しかしながら、口調は見た目通りにガキ大将タイプだ。ありがとう!


 その借家には消化吸収サービスが付いていそうなので丁重にお断りし、さっさと状態異常攻撃を当てる。


 さて、あとはさっさと封印しよう。

 そう思ったのだが――――


【《怪物種(モンスター)封印スキル》を使用しました。〔川辺鯰〕の封印に失敗しました。再試行を行いますか? はい/いいえ】


 ――――はあ!?

 これまでに無い展開に、思わず固まってしまった。

 と、とにかく「はい」だ! もう一度!


 直前と同じように光がモンスターを包むが、今回も姿は消えず、同じメッセージが届けられた。


【《怪物種(モンスター)封印スキル》を使用しました。〔川辺鯰〕の封印に失敗しました。再試行を行いますか? はい/いいえ】


 クッ!? 駄目か!?

 だが、どういうことなんだ?

 確かに麻痺と鈍化を乗せた攻撃は当たったし、耐性があるとは言っても効いている。

 相手のレベルが自分より高いってだけなら、これまでもあった。

 なら、レベル20を超えたモンスターの魂が、俺の手に負えなくなってきたとか、そういうことなの!?


 そんな思考をしている間にも、《麻痺耐性》持ちのナマズの麻痺が切れかかっていた。

 鈍化も付与しているからすぐには襲っては来れないし、追加で麻痺させて凌げるが、このままじゃ決め手に欠けるぞ?

 とりあえず何度も「はい」を選択し、封印スキルをリトライしてみるが、結果は変わらない。


 クッ、駄目だ。分からん。

 ここはアルル様を頼るしかないか。


『それは、相手の力が残り過ぎているからです。あなたの想像通り、レベル20を超えて強い個体が出てきたことで、そのような事案が発生することが今後多くなるでしょうね』


 力?

 ということは、デバフのような弱体化の魔法やスキルを持ってないと駄目ってことですか?


『いえ、そんな手間を掛けなくても、相手を弱らせて力を削げばいいんですよ』


 弱らせる?

 それは、つまり……?


『攻撃してください。ここまでは封印スキルだけとか麻痺状態程度で何とかなっていたのですが、今後はそうは行きません。傷つけるのが嫌だというのは分かりますが、そのままでは埒が明かないのは分かったと思います』


 うっ……。そんな気はしていたけど。

 でも、モンスターと言えど、やっぱりそれはなあ……。


『さっき、ココナさんが攻撃を肩代わりしてくれましたが、もしあれがスライムさんだったら、無事で済んでいたでしょうか? それだって、相手を傷付けないようにという立ち回りだったからこそ、起こったことだと思います。他者を傷付けない、そのこと自体は素晴らしいことですが、現実はそこまで甘くはありません。いつかその拘りで、仲間を失うことにもなりかねませんよ?』


 うう……。確かに……。

 俺の拘りに仲間を巻き込むわけには……。


 その時、ココナが俺の頭の上から飛び降り、ナマズの下へと進んで行った。

 麻痺しているとはいえ、危ないよ?


「えいッ!」


 次の瞬間、ココナが大ナマズのボディをベシベシと叩き始めた。


 え? 何やってんの?


「咲也さんが今何を考えてるか分かるわよ? 優し過ぎて、コイツを攻撃出来ないんでしょ? なら、普段何の役にも立ててない私が、代わりを務めるわ。だから、そこで麻痺させ続けててもらえる?」


 その言葉に続くように、ココナの貝の中からイチも出て来て、彼女を手伝い始めた。


(ボクも、ますたーのためなら何でもするよ。守ってもらってばかりのボクだから、こういう時には力になってあげたいの)


 そう言って二人とも、その小さな体で力いっぱいにナマズを攻撃し続けて行く。

 そんな姿に、自分が情けなくなる。


「……」


 二人は、俺を助けようと俺のことを考えてくれている。

 なのに、俺は自分の拘りのために……?


「……二人とも、もういいよ……」


(ぷるっ!?)


「で、でも、それだと……」


「……俺がやる」


 そう言って、二人には離れていてもらうことにした。

 心配そうに二人が見守る中、俺はナマズの傍に立ち、手を合わせて「ゴメン」と伝える。



 スキル? 魔法?


 いや、今回使うのは――――



「痛いと思うけど、少し我慢してね」



 ――――素手だ。



「バフン?」





 ズドンッ!

 その場で強く踏み込んだ俺は、そんな地の底から響くような音と衝撃とともに、双子と鬼神さん直伝の格闘術を披露した。

 つまりは、殴り飛ばした。


 所謂、正拳突きだ。


 まるでゲームのキャラクターのように、そこからコンボを繋げるように、怒涛の連続攻撃を浴びせて行く。

 突き、蹴り、ぶつかり……《気力操作スキル》で気を練って、相手の芯まで届くように一撃一撃大切に。


「ブフォーーッ!?」


 その攻撃に、ナマズも嗚咽を上げてダメージを受けているようであった。

 これで、封印スキルも効くかな?


 頃合いを見計らって、封印の再試行をしてみる。

 すると――



【《怪物種(モンスター)封印スキル》を使用しました。〔川辺鯰〕の封印に成功しました】

【自己領域の残量は99.93%です】



 ――よし!

 ナマズさんには痛い思いをさせてしまったなと、謝罪のために手を合わせていると、横から間の抜けた声が聞こえてくる。


「ええー……?」


「うん? どうしたの?」


「いや、どうしたの?って……そんなに強いのに、何でいつも戦わなかったの? 避けたり麻痺させてばっかりで……」


 別に、そんなに強くないよー?

 俺を鍛えてくれた師匠たちが、桁外れにトンデモなだけさ。


「いやあ、痛い思いはさせたくなかったから。でも、今後はそうも言ってられないみたいだし、最低限のダメージで封印出来るように頑張るよ」


「……もしかして、さっきも庇う必要無かった?」


 ココナが、呆れ気味の顔で聞いてくるが、あれは本当に助かったと言っておいた。

 相手には《混乱攻撃》もあったし、ピンチだったのだ。


(ボクは気付いてたよ。ますたーは、本当は凄く強いって。だって、ますたーだもん♪)


「ごめんイッちゃん。イッちゃんのこと大好きだけど、今はちょっと黙っててくれないかな? この人、自分を襲ってくる相手に手加減して傷つけないようにって頑張ってたんだよ? それが無きゃ、もっと楽に勝ててただろうに……」


「勝ち負けじゃないからね。モンスターの……」


「咲也さんも、ちょっと黙ってて?」


「酷っ!?」


 そんな俺たちの下に、珍しい贈り物が届けられた。

 久々の、ドロップアイテムだ。


 “ナマズの(ヒゲ)


 それを手に取り、もう一度手を合わせた。

 今度は、「ありがとう」の意味を込めて。


〖女神アルルよりメッセージが届きました。『さっきは、急なお願いを聞いてもらえて助かりました。モンスターを殴るなんて怖かったでしょうに、感謝します』……メッセージは以上です〗


「ああ、はいはい。あとで返事するわ」


「え?」


「こっちの話。アイミスよ」


 ああ、ナビゲーションの。



 呆れ顔の取れないココナを宥め、移動を再開する。

 彼女の定位置は俺の頭の上に決まりつつあるので、ブツブツと文句を言いながらも、俺に抱き上げろと催促してくる姿は可愛くてキュンと来る。プライスレス。


 こうして漸く川越えを果たした俺は、そこからまたスピードを上げて移動し、間もなく目的のダイスの町へと入ったのであった。



 --------------------



 現在の保有ポイント:

 843+118=961

 (うち、Pバンク:400)


 累積ポイント:

 60740+118=60858

 (次の特典まで142P)



「ギルドの」と……(ry


次話は9月20日投稿予定となります。

どうぞ、よろしくお願いいたします。


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